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将来の年金いくらもらえる?受給額をシミュレーション

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かつての日本では、子どもが同居して親の老後をみる形態が一般的でした。それが戦後の高度経済成長に伴い、大都市への人口集中等により核家族化が進み、子どもたちが親の老後をみることが難しくなりました。親世代が自分たちだけでも、老後の生活を送れるための仕組みとして国が充実させたのが「年金制度」です。この記事を読んでいる人のなかには、自分の老後のことを考えてどれくらい年金が受給できるか気になっている人もいるでしょう。そこで、日本の公的年金制度についておさらいしながら、老齢年金の受給額の計算方法や受給できる年金額の目安について紹介していきます。

01日本の公的年金制度のおさらい

まず、日本の公的年金制度の特徴として押さえておきたいポイントは「賦課方式」を採用している点です。賦課方式とは、現役世代が支払った保険料を、その時々に支給する年金の原資に充てる方式です。日本の公的年金制度は、自らが現役時代に支払った保険料を年金の原資として受け取る「積立方式」ではありません。

なぜ賦課方式が採用されているかというと、「インフレなど経済変動の影響を受けにくい」というメリットがあるからです。積立方式は公平感があるのがメリットですが、インフレに弱いのが欠点です。例えば1960年代のいわゆる高度成長期時代、日本の平均的な世帯実収入は3万円に満たないものでした。積立方式を採用していたら、その当時に支払っていた保険料は現代に比べると少なく、受給できる年金ももっと少なくなっていたでしょう。そのため「保険料納付時と年金受け取り時の実質的価値を維持する」ために、日本では賦課方式が採用されています。

日本の公的年金制度は「2階建て」

日本の公的年金の特徴として「2階建て」になっている点も挙げられます。1階部分に該当するのは国民年金(基礎年金)で、「日本に住んでいる20歳以上、60歳未満のすべての人」は原則加入しなければいけません。国民年金の保険料は一律に設定されているのが特徴で、2024(令和6)年4月からは月額1万6800円です。

一方、2階部分に該当するのは厚生年金で、こちらは会社員や公務員などが加入対象となっています。自営業者やフリーランスの人などは国民年金のみに加入し、厚生年金には加入できません。厚生年金の保険料は「加入者の報酬に比例する」「事業主と折半して支払う」ことの2つが特徴です。厚生年金は国民年金と異なり、加入者が得ている毎月の給与や賞与などの報酬が多ければ多いほど、支払う保険料(上限あり)と受給できる年金額の両方が増える仕組みです。ただし加入者は、本来の保険料率である18.3%のうち半分の9.15%だけを支払い、残り半分は勤務する会社が支払います。

このように日本では20歳以降の個々の働き方によって加入する年金制度が異なり、それによって納める保険料や受け取る年金額も変わります。なお日本の年金制度には、原則として65歳から受け取れる老齢年金以外にも障害年金や遺族年金も用意されています。前者は「加入者が病気やケガを負って生活や仕事が制限された場合」、後者は「加入者が亡くなり、その方に生計を維持されていた遺族がいる場合」に支給対象になることがあります。

障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金が、遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金がそれぞれあり、国民年金と厚生年金の加入状況に応じて老齢年金と同じく2階建ての制度になっています。

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02年金受給額の計算方法

日本の公的年金制度のポイントを押さえたところで、年金受給額のシミュレーションを紹介します。

一般的には、厚生労働省「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳以上の老齢厚生年金(老齢基礎年金分も含む)受給者の平均受給月額は14万59円(男性17万1305円、女性10万8813円の単純平均)です。また同概況によると、老齢基礎年金の平均受給月額は5万6000円です。

日本の公的年金制度のポイントを押さえたところで、年金受給額のシミュレーションを紹介します。

一般的には、厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳以上の老齢厚生年金(老齢基礎年金分も含む)受給者の平均受給月額は14万3973

円(男性16万7388円、女性10万9165円の単純平均)です。また同概況によると、老齢基礎年金の平均受給月額は5万6316円です。

前述したように、20歳以降の働き方によって加入する年金は変わり、特に老齢厚生年金は報酬比例部分があることから、受給額は人それぞれ異なるのが特徴です。そのため、より正確に受給する金額を知りたい人は、日本年金機構の「ねんきんネット」に登録後、受給額の確認をおすすめします。

今回のシミュレーションでは、以下を前提としています。

国民年金(基礎年金)

  • 国民年金を受給する際の老齢年金のことを「老齢基礎年金」と呼ぶ
  • 保険料の納付期間:最長の40年間「完納」
  • 受給額の計算方法(保険料の納付月数で算出):満額(2024[令和6]年4月分から81万6000円)×保険料納付月数÷480カ月(40年)」

厚生年金

  • 厚生年金(老齢年金)の受給時は「老齢厚生年金」と呼ぶ
  • 受給額の計算方法:「平均標準報酬額×5.481÷1000×勤続年数×12カ月」
  • 現役時代の報酬に応じて変動し、正確には保険料納付期間が2003(平成15)年3月以前と同年4月以降で計算式は異なる。しかし、今回のシミュレーションでは保険料納付期間にかかわらず、2003(平成15)年4月以降の乗率を適用して計算

上記を理解した上で、あくまでも目安として次段落のシミュレーションを参考にしてください。

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03年金受給額のシミュレーション

国民年金加入者が「老齢基礎年金のみ受給する場合」と、厚生年金加入者が「老齢基礎年金+老齢厚生年金を受給する場合」の2通りを掲載しています。それぞれの年金受給額が世帯構成や働き方によって、どれくらい異なるのか見てみましょう。

モデルケース1:自営業の単身者

最初に紹介するのは、単身者で自営業を営んでいる場合です。自営業者は国民年金に加入し、加入者本人は第1号被保険者と呼ばれます。仮に40年間にわたって国民年金保険料を納めた場合、受け取れる年金額の目安は以下のとおりです。

40年間保険料を納め続けた国民年金加入者(単身者)の受給額の目安

81万6000円=老齢基礎年金81万6000円×1人

81万6000円という金額は、2024(令和6)年4月分からの満額です。老齢基礎年金の受給額は単純に納付期間に比例するため、完納すれば満額受け取れます。ただし月額にすると6万6250円にしかなりません。また、物価や賃金の変動率で調整されるため、満額も毎年度変動します。実際にはこれだけで老後を生活することは難しく、特に自営業者は会社員のように退職金もないので、老後の備えが別途必要になります。

モデルケース2:自営業の夫婦

次に夫婦ともに自営業者で、第1号被保険者である場合をシミュレーションします。この事例で考えられるのは、夫婦それぞれが個人事業主のケースです。また、個人事業主で生計を立てている夫の事業を、妻が手伝っているときもこのケースに該当する可能性があります。個人事業主が加入する国民年金には扶養家族という概念はないので、夫と妻それぞれが国民年金加入者(第1号被保険者)とみなされるからです。妻が厚生年金のある会社のパートなどで働いていない限り、このケースに該当します。このケースで40年間保険料を納め続けた場合に受給できる年金額の目安は以下のとおりです。

夫婦2人ともに40年間保険料を納め続けた国民年金加入者の受給額の目安

163万2000円=老齢基礎年金81万6000円×2人

上記のように、満額の国民年金が2人分支給されます。国民年金はあくまでも一人一人の保険料納付月数に応じて支払われる仕組みです。そのため、同じ条件の受給者が2人いる場合は、単純に受給できる金額が2倍になります。月額にすると、およそ13万円受給できる計算になりますが、やはりこれだけで老後を生活していくのは難しいケースが多いでしょう。受け取れる年金が少なくなりがちな自営業者は個人型確定拠出年金(iDeCo)や小規模企業共済、国民年金基金などに加入し、老後資金対策を早めに実行することが大切です。

モデルケース3:会社員の単身者

ここからは、厚生年金加入者が受給できる年金額を紹介します。まずは、40年間会社員として働き、厚生年金保険料を納め続けてきた単身者です。厚生年金加入者は第2号被保険者と呼ばれ、第1号被保険者の国民年金加入者と区別されています。受給できる年金額の目安は以下のとおりです。

40年間保険料を納め続けた厚生年金加入者(単身者)の受給額の目安一覧

平均月収(平均標準報酬額) 受給できる年金額(年額)
20万円 134万2176円(老齢基礎年金81万6000円+老齢厚生年金52万6176円)
30万円 160万5264円(老齢基礎年金81万6000円+老齢厚生年金78万9264円)
40万円 186万8352円(老齢基礎年金81万6000円+老齢厚生年金105万2352円)
50万円 213万1440円(老齢基礎年金81万6000円+老齢厚生年金131万5440円)
60万円 239万4528円(老齢基礎年金81万6000円+老齢厚生年金157万8528円)

上述したように、厚生年金は報酬比例となっていることから、受給者の加入期間の平均月収によって受給できる年金額の目安も変わります。また、厚生年金加入者は加入する年金組合等が国民年金保険料を負担する仕組みなので、老齢厚生年金だけでなく老齢基礎年金も支払われるのが特徴です。そのため、一般的には国民年金加入者より受給できる年金額が多くなります。

モデルケース4:共働き夫婦

続いて、夫婦ともに40年間会社員(第2号被保険者)で、厚生年金保険料を納め続けた場合を紹介します。平均月収(平均標準報酬額)に応じた年金受給額の目安は以下のとおりです。

40年間保険料を納め続けた厚生年金加入者(夫婦)の受給額の目安一覧

夫婦各々の平均月収(平均標準報酬額) 受給できる年金額(年額)
20万円 268万1352円(老齢基礎年金81万6000円×2人+老齢厚生年金52万6176円×2人)
30万円 321万0528円(老齢基礎年金81万6000円×2人+老齢厚生年金78万9264円×2人)
40万円 373万6704円(老齢基礎年金81万6000円×2人+老齢厚生年金105万2352円×2人)
50万円 426万3880円(老齢基礎年金81万6000円×2人+老齢厚生年金131万5440円×2人)
60万円 478万9056円(老齢基礎年金81万6000円×2人+老齢厚生年金157万8528円×2人)

ご覧のように、平均月収に応じて受給できる一人当たりの年金額は単身者のときと変わりません。夫婦ともに同じ条件で受給できる場合は、単身者が受給できる金額を2倍すればよい計算です。厚生労働省「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の平均値では、女性の月平均受給額が男性に比べると低くなっていますが、それは加入期間や報酬によるものです。同じ加入期間、同じ報酬だった場合、老齢厚生年金の受給額に男女差はありません。もし夫婦間で平均月収が異なる場合には、単身者(40年間、会社員・第2号被保険者)の平均月収を参考に、それぞれの年金受給額を加算して計算することができます。

モデルケース5:会社員の世帯主、扶養に入っている配偶者

最後に世帯主が会社員、配偶者が世帯主の扶養に入っているケースを紹介します。このケースとして多いのは、妻が専業主婦、またはパートなどで夫の扶養として認められる範囲内で収入を得ている場合です。厚生年金加入者「第2号被保険者」の扶養に入っている配偶者は「第3号被保険者」と呼ばれ、国民年金加入者であるとみなされます。ただし、保険料は世帯主が加入している厚生年金組合等が負担するため、第3号被保険者本人が保険料を支払う必要はありません。このケースにおいて受給できる年金額の目安は以下のとおりです。

40年間世帯主が厚生年金保険料を納め続け、配偶者が扶養だった世帯の受給額の目安一覧

世帯主の平均月収(平均標準報酬額) 受給できる年金額(年額)
20万円 215万8176円(老齢基礎年金81万6000円×2人+老齢厚生年金52万6176円)
30万円 242万1264円(老齢基礎年金81万6000円2人+老齢厚生年金78万9264円)
40万円 268万4352円(老齢基礎年金81万6000円×2人+老齢厚生年金105万2352円)
50万円 294万7440円(老齢基礎年金81万6000円×2人+老齢厚生年金131万5440円)
60万円 321万528円(老齢基礎年金81万6000円×2人+老齢厚生年金157万8528円)

このケースでは、世帯主が厚生年金、配偶者が国民年金の加入者に該当します。厚生年金加入者は老齢基礎年金と老齢厚生年金両方が受給できますが、国民年金加入者は老齢基礎年金のみ受給します。そのため、基本的には「老齢基礎年金×2人分」と「老齢厚生年金×1人分」が受給額の目安になります。

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04公的年金のみで老後の生活はまかなえる?

シミュレーションを参考に、将来どれくらいの年金を受給できるか把握できたでしょうか。思っていたより多かった人もいれば少なかった人もいるでしょう。ただし、大切なことは「年金だけで老後の生活がまかなえるか」をよく考えることです。人それぞれライフスタイルは違うので、毎月支出する金額も異なります。そのため、自らの老後の生活の支出額を把握し、それをカバーできない場合は年金以外の方法による老後資金の準備も検討しなければいけません。

具体的に老後の生活にどれくらいの資金が必要かイメージできない場合は、総務省統計局「2023年 家計調査(家計収支編)」を参考にするとよいでしょう。こちらは2019(平成31・令和元)年に話題となった、金融庁の「老後資金2000万円問題」の算出根拠となった資料の最新版です。

同調査では、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の毎月の平均支出は25万959円(年額301万1508円)です。上記のシミュレーションから判断すると、夫婦ともに厚生年金加入者なら平均30万円以上の平均月収があれば、公的年金だけでも老後の生活費をまかなえる計算になりますが、それ以下の世帯だと厳しいことが分かります。

仮に夫が会社員(平均月収40万円)、妻が夫の扶養範囲内の世帯では、年金受給額が268万4352円となり、年間で32万7156円(301万1508円-268万4352円)不足する計算です。老齢年金を受給し始める65歳から平均寿命の85歳までの20年にわたって年間32万7156円が不足すると仮定すると、トータルでは654万3120円の老後資金が年金以外で必要になります。

また同調査によると、高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の毎月の平均支出は14万5430円(年額174万5160円)です。つまり、厚生年金加入者は単身者の場合でも平均月収40万円をキープしていれば、年金収入だけでそれなりの生活ができる可能性があります。ただし、家計調査における毎月の平均支出はあくまでも平均なので、余裕のある生活を送りたい場合は、さらに老後資金を貯めておく必要がある点には注意しましょう。

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05シミュレーションをきっかけに、より具体的な老後の生活をイメージしてみよう

今回は将来受給できる年金額について、世帯構成別にシミュレーションしてみました。これまで漠然としか年金受給額を理解していなかった人にとっては、より具体的に老後の生活をイメージするきっかけになったのではないでしょうか。ただし、今回紹介したシミュレーションや毎月の平均支出は目安でしかありません。本当に必要な老後資金は人それぞれの働き方や暮らし方によって異なるので、もっと詳しい情報を得たい人は、サイト内の「老後のお金シミュレーション」を試してみてください。

資産運用で老後資金を準備するのもおすすめです。最近は、個人型確定拠出年金「iDeCo」や少額投資非課税制度「NISA」に注目が集まっています。特にNISAは2024年から新制度となり、非課税が無期限化されました。iDeCoだけでなく、NISAも老後資金づくりに活用できるため、興味がある方は「新NISAではじめる資産形成」のページにも、ぜひ目を通してください。

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岩永真理

監修:岩永真理

IFPコンフォート代表、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、住宅ローンアドバイザー

プロフィール

大手金融機関にて10年以上勤務。海外赴任経験も有す。夫の転勤に伴い退職後は、欧米アジアなどにも在住。2011年にファイナンシャル・プランナー資格(CFP®)を取得後は、金融機関時代の知識と経験も活かしながら個別相談・セミナー講師・執筆(監修)などを行っている。幅広い世代のライフプランに基づく資産運用や住宅購入、リタイアメントプランなどの相談多数。


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