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母子家庭で医療費を抑えるには?ひとり親家庭等医療費助成制度を解説

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国や自治体では、ひとり親家庭を支援するさまざまな制度を準備しています。ところが、どのような制度があるのかについて、母子世帯および父子世帯の方にもまだまだ伝わっていないのが現状です。そこで今回は、数ある支援制度のうちでもとりわけ重要な制度である医療費助成を中心に解説します。ぜひ参考にしてください。

01子供の養育に利用できる国や自治体の助成制度一覧

ひとり親家庭を支援する制度は、「児童手当」や「児童扶養手当」などが代表的です。まずはこうした基礎的な助成制度とは、どのようなものか押さえておきましょう。

児童手当

児童手当は、内閣府の「子ども・子育て支援新制度」のもとに行われている助成制度です。子育て世帯を支援する制度として、よく知られたものの1つになります。

【対象者】

中学校卒業までの児童を養育している方が対象です。必ずしもひとり親世帯だけが対象というわけではありません。養育者が両親である場合だけでなく、離婚協議中や離婚後にひとり親として養育しているケースでも制度対象です。具体的な条件として押さえておきたい点は次の4点です。

  • 児童が日本国内にいること
  • 両親が別居中の場合は児童と同居中の人に優先的に支給
  • 親が海外にいる、あるいは児童が施設に入所しているなどの場合は代理人(父母指定者)、もしくは施設の設置者に支給
  • 「中学卒業までの児童」とは、具体的には15歳の誕生日後、最初の3月31日までの児童のこと

また児童手当は、子どもの人数や年齢によって支給額が変わるのが特徴です。

【支給額】

  • 3歳未満…1万5000円
  • 3歳以上から小学校修了前…1万円(第3子以降は1万5000円)
  • 中学生…1万円

子ども1人当たりの支給額は第1子、第2子では同じですが、注意すべきは第3子からです。この制度においての「第3子」の定義は、「高校卒業(18歳の誕生日後の最初の3月31日)まで養育している子どものうち3番目以降」ということになっています。つまり申請時点で、高校生以下の子どもは何人いるのか、という数え方になるので注意しておきましょう。

【所得制限限度額】

支給にあたっては、各世帯での生計の中心者(世帯主というよりは各世帯で最も所得のある人のこと)の所得や、扶養人数に応じた「所得制限限度額」(下記表の①)が定められています。所得制限限度額未満の場合は支給額で紹介した金額になりますが、所得制限限度額(下記表の①)以上で所得上限限度額(下記表の②)未満の場合は、特別給付として子ども一人当たり月額5000円が支給されます。

ただし令和4年10月支給分からは、各世帯の生計中心者の所得が②以上の場合、児童手当等は支給されません。なお扶養人数のカウント方法は、その年の12月31日時点での扶養人数です。

扶養人数 所得制限限度額
0人 622万円(収入の目安は833万3000円)
1人 660万円(収入の目安は875万6000円)
2人 698万円(収入の目安は917万8000円)
3人 736万円(収入の目安は960万円)

なお扶養人数のカウント方法は、その年の12月31日時点での扶養人数です。

【支給時期・期間】

支給時期は年3回。6月(2~5月分)、10月(6~9月分)、2月(10~1月分)に前月分までの手当が支給されます。

【申請方法】

申請手続き先は、申請者の住民票がある自治体に「認定請求書」を提出します。申請書類は自治体によって異なる点があるので、申請時によく確認してください。主に必要となる書類は次の6つです。

  1. 児童手当認定請求書
  2. 申請者の健康保険証のコピー
  3. 申請者名義の振込先口座がわかるもの(キャッシュカード、通帳など)
  4. 申請者の印鑑
  5. 申請者とその配偶者のマイナンバー(マイナンバーカードなどで証明)
  6. 本人確認書類(運転免許証など)

なお、継続的に受給する場合には、毎年6月1日時点の状況を報告する「現況届」という書類が自治体から送られてくるので、この書類を忘れずに提出しましょう。

児童扶養手当

児童扶養手当は、ひとり親家庭の支援を目的とする助成制度です。「児童手当」と名称が似ていますが別の制度で、「児童扶養手当法」という特別法によって実施されています。

【対象者】

高校3年生を卒業する前までの子どもを養育している母または父、あるいは養育者となっている祖父母が対象です。基本的に離婚などによって、ひとり親家庭となった世帯が対象。2010(平成22)年以降は父子世帯も支給対象になり、制度の拡充が行われました。なお子どもに障がいがある場合は、20歳未満の子どもを養育している場合も対象です。

【支給額】

支給額は子どもを育てている人の所得をベースに、全部支給か一部支給かが決定されます。2020(令和2)年度からは所得の算定方法が変わりましたが、ベースとなる支給額は次の通りとなります。2人以降は、1人目の支給額に対して加算されます。

児童扶養手当の月額※2024(令和6)年4月から

子どもの人数 全部支給 一部支給
1人 4万4140円 1万410~4万4130円
2人 1万750円を加算 5380~1万740円を加算
3人以降(1人につき) 6450円を加算 3230~6440円を加算

【所得制限限度額】

児童福祉手当も、所得制限限度額が決まっています。所得制限以上の収入があれば、全部手当、一部支給がそれぞれ停止となります。所得額の計算式は以下の通りです。

  • 児童福祉手当での所得額の計算式
    • 収入金額-諸経費(給与所得控除額)+養育費×80%-諸控除額

養育費の80%が所得に含まれる点に注意しましょう。その上で、所得制限限度額は以下のようになっています。

所得制限限度額

 扶養人数 全部支給 一部支給
0人 所得49万円未満 所得192万円未満
1人 所得87万円未満 所得230万円未満
2人 所得125万円未満 所得268万円未満
3人 所得163万円未満 所得306万円未満

なお、児童扶養手当では受給者だけでなく、生活を共にしている人(扶養義務者)がいる場合は、その人の収入ベースもチェックして支給の可否を判断します。扶養義務者の所得制限限度額は以下の通りです。

扶養義務者の所得制限限度額

扶養人数 所得
0人 236万円未満
1人 274万円未満
2人 312万円未満
3人 350万円未満

扶養義務者は民法877条第1項で定められていて、具体的には受給者の配偶者、兄弟姉妹、父母、祖父母、曾祖父母、子、孫、ひ孫です。さらに受給者と同じ住所内で生活をしていて所得が38万円以上という要件を満たす必要があります。扶養義務者の所得が所得制限限度額を上回っている場合は、基本的に児童扶養手当の対象外となります。

【支給時期・期間】

以前は年3回払いでしたが、法改正によって2019(平成31・令和元)年11月からは奇数月に合計年6回のペースで支払われることになりました。前月までの2カ月分を1月、3月、5月、7月、9月、11月に支払われます。

【申請方法】

児童扶養手当は請求者の居住している各市区町村が窓口となります。申請手続きについては、それぞれの自治体で違いがあるので、申請前にはホームページや窓口で確認しましょう。申請に必要な基本書類は次の通りです。

  1. 児童扶養手当認定請求書
  2. 年金手帳
  3. 請求者・受給対象児童の戸籍謄本
  4. 申請者名義の振込先口座がわかるもの(キャッシュカード、通帳など)
  5. 申請者の印鑑
  6. 世帯全員のマイナンバー(マイナンバーカードなどで証明)

なお、受給を更新する場合には、毎年8月に「現況届」という書類が役場から送られてくるので、8月中に書類を提出することを忘れないようにしましょう。

児童育成手当

ひとり親家庭を対象とした助成制度で、東京都をはじめとした一部の市区町村で実施されており、各自治体が主体となっています。

【児童扶養手当との違い】

ひとり親家庭を支援する制度としては、先ほど説明した「児童扶養手当」があります。「児童育成手当」と違う点について説明しましょう。

まず「児童扶養手当」では、支給額が全部支給か一部支給かの判断は、受給者の所得額が所得制限限度額を越えているかどうかで判断されます。養育費などを受け取っている場合は、その80%を所得として算入する点も数式で説明した通りです。さらに所得制限限度額については、扶養義務者の所得にもありました。

一方の「児童育成手当」は、所得制限限度額が設けられているのは受給者のみ。扶養義務者については考慮されません。その上、限度額は「児童扶養手当」よりも高く設定されていて、養育費の所得算入もありません。児童扶養手当よりも、受給のハードルは低いといえます。

【対象者】

児童扶養手当と同じく、高校3年生を卒業する前までの子どもを養育している人が対象です。

【支給額】

子ども1人につき月額1万3,500円です。

【所得制限限度額】※東京都の場合

扶養人数 所得
0人 3,684,000円
1人 4,046,000円
2人 4,444,000円
3人 4,824,000円
4人 5,204,000円
5人 5,584,000円
※出典:江戸川区「児童育成手当」

児童扶養手当よりも相当高く設定されているだけでなく、養育費などは所得算入されないため、受給対象の範囲が広い制度設計となっています。

【支給時期・期間】

各自治体によって違いがあります。東京都の場合は年3回(6月、10月、2月)という自治体がほとんどです。

【申請方法】

こちらも「児童扶養手当」とほぼ同じですが、自治体によって細かな点で違いがあることが多いので、必ず自治体の窓口に問い合わせしましょう。

ひとり親控除

「ひとり親控除」は助成金制度ではなく、所得税の減税措置によってひとり親家庭を支援する制度です。令和元年度までは「寡婦控除」がありましたが、「ひとり親控除」の創設に伴い、「寡婦控除」は廃止されまました。ひとり親である場合は、一定の条件を満たすことで所得控除が受けられます。

【対象者】

「ひとり親」の要件を満たす人が控除の対象となります。以下の3つの要件すべてを満たす必要があります。確認しておきましょう。

  • 事実上の婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
  • 生計を1つにする子どもがいること。
  • 合計所得金額が500万円以下であること

なお、この場合は「子ども」については、さらに要件があります。「子どもの当該年分の総所得金額等が48万円以下であること」「他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこと」、この2つです。

【控除額】

ひとり親控除 控除額35万円

なおこの控除額は、2020(令和2)年分以降となります。詳細は国税庁のホームページをご確認ください。

他にも各自治体では「ひとり親家庭の子育て支援」を名目に、さまざまな制度があります。その内容も自治体によってバラエティー豊かで、例えば住宅手当が支給されるところやJR定期乗車券の割引、水道料金の一部減免、学習塾などの習い事に通うためのクーポン助成などを実施しているところもあります。なかでも出産、子育てにかかる各費用を助成する制度は全国の多くの自治体で実施されているので、お住まいの自治体でそのような助成制度があるかホームページで確認しましょう。

とりわけ重要なのが「医療費」に対する助成制度です。その代表格である「ひとり親家庭等医療費助成制度」について、次に説明します。

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02ひとり親家庭等医療費助成制度とは?

「ひとり親家庭等医療費助成制度」とは、ひとり親やその子ども、あるいは両親がいない子どもを養育している人が病院などで診察を受けた際に、健康保険の自己負担分の一部をお住まいの自治体が助成するという制度です。

ひとり親家庭において18歳に到達して最初の3月31日までの間の年齢の子どもがいる場合が支給対象です。自己負担分のどれくらい助成されるかは入院、通院によって変わりますが、基本的に保険診療の範囲内での治療であれば自己負担額の全額を助成されます(入院時の食事療養費負担額も対象)。ただし差額ベッド代、健康診査、予防接種などの保険診療適用外のものは助成対象外です。

なおこの制度では「児童手当」などと同じく、所得制限限度額が以下の通りに設定されています。ただし各自治体によって、金額は異なります(※以下の金額は千葉市の場合)。

扶養親族等の数 母・父・孤児等以外の養育者 孤児等の養育者、配偶者、扶養義務者
0人 192万円 236万円
1人 230万円 274万円
2人 268万円 312万円
3人 306万円 350万円
4人以上 1人あたり38万円ずつ加算 1人あたり38万円ずつ加算

所得金額から各種の控除を差し引いた金額がこの範囲内で収まっていれば、助成対象となります。

ひとり親家庭等医療費助成制度の申請と手続きの流れ

この制度では、各自治体の規定に沿った申請をした上で交付される「助成資格証明書(医療証)」を、「健康保険証」と一緒に医療機関で提示することで受給できます。各自治体によって対象者の範囲や自己負担の有無、所得制限の内容などが異なるので、事前によく確認しておきましょう。

申請は各自治体の窓口で行います。自治体ごとに細かな違いはありますが、基本的な手続きの流れはだいたい同じです。

【申請のおおまかな流れ】

  1. 申請窓口で「助成資格証明書(医療証)」の交付を受ける
  2. 医療機関で健康保険証とともに助成資格証明書(医療証)を提示して受診
  3. この制度を利用できない医療機関で受診した場合は、翌月以降に医療機関から発行された領収書を添えて自治体の窓口に申請
  4. 助成金は指定した口座に振り込みされる。ちなみに助成申請できる権利は、5年で消滅するので注意
  5. 助成資格証明書(医療証)の更新のため、毎年10~11月に「現況届」の提出が必要な自治体もある。ただし現況届の要求が必要ない場合でも、毎年、助成資格証明書(医療証)の更新手続きは必要

なお、申請や更新手続きでの必要書類については、各自治体のホームページで確認してください。自治体によっては、家庭の状況を説明するための書類規定が違うケースがあります。

ひとり親家庭等医療費助成制度の注意点

この制度で注意すべき点は、適用対象外となる要件が細かく設定されている点です。各自治体によって異なるので、この点は事前によく確認しておく必要があります。基本的に以下のような条件に当てはまる場合は制度を利用することができません。

【制度対象外となるケースの代表例】

  • 生活保護を受けているとき
  • 申請者および児童が健康保険に加入していないとき
  • 児童が児童福祉施設等(ただし通園施設などは除く)に入所している
  • 里親に預けられたとき
  • 児童が父または母の配偶者(事実上の配偶者を含む)に養育されているとき
  • 申請者または扶養義務者の所得が、制度で定める所得制限額を超過しているとき

特に生活保護受給者と扶養義務者に、所得制限限度額以上の収入があるときは注意してください。

助成制度の対象外の場合は、「小児医療費助成制度」を使いましょう。「小児医療費助成制度」とは、健康保険等に加入している0歳から中学卒業までの子どもに対し、保険医療費の自己負担額(食事療養標準負担額を除く) を助成する制度です。ただし住んでいる自治体によって助成内容が異なるので、こちらも各自治体のホームページや窓口で確認しましょう。

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03ひとり親家庭を支援する制度を大いに活用しよう

ひとり親家庭を支援する制度について、代表的なものを紹介しました。適用要件に当てはまる方は、ぜひ積極的に活用しましょう。こうした制度を活用することは、憲法25条に定められている国民の「権利」に他なりません。特にひとり親家庭の家計を圧迫する傾向にある「医療費」に対する助成制度は、非常に重要です。対象となる方は、家庭の健康を守るためにも受給の手続きを済ませましょう。ぜひこの記事を参考に、助成制度について理解を深めてください。

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新井智美

監修:新井智美

CFP(R)認定者・一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)・DC(確定拠出年金)プランナー・住宅ローンアドバイザー・証券外務員

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。


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