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シングルマザーの生活費の平均は?国の制度や各種手当を賢く利用しよう

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今回はシングルマザーが生活していく上で、どれくらいの生活費がかかるのか、豊かな老後を過ごすためにはどれくらいの貯蓄が必要になるのかといった疑問について、ズバリ解説していきます。シングルマザーの生活実態を紹介しつつ、活用できる支援制度や各種手当、必要な老後資金の目安なども説明するので、生活設計の参考にしていただければ幸いです。

01シングルマザー世帯の平均収入はいくら?

シングルマザー世帯の経済状況について、データをもとにその実態を見てみましょう。参考にするのは、厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」という調査データです。

シングルマザー世帯(母子世帯)の経済状況

母子世帯の母親自身の平均年間収入 272万円(前回調査243万円)
母親自身の平均年間就労収入 236万円(前回調査200万円)
母子世帯の平均年間収入(平均世帯人員3.20人) 373万円(前回調査348万円)

平均年間収入と平均年間就労収入に差が出ているのは、シングルマザー自身の収入以外に、各種手当てや養育費などが含まれるためです(親からの仕送り等の援助、あるいは家賃・地代収入などがある人も含む)。ちなみにシングルマザー世帯のための代表的な手当は、「児童手当」「児童扶養手当」などが挙げられます。3つ目の「母子世帯の平均年間収入」とは、シングルマザー世帯と同居している家族、例えば親や兄弟の収入も含めた世帯収入のことです。

この平均年間収入373万円には所得の高い世帯も含まれているので、より実態に近い数値としては、人数分布などを考慮した「中央値」という指標を使います。シングルマザー世帯の年間収入の中央値は300万円で、この金額がより実態に近いシングルマザーの収入額になります。

シングルマザーの雇用形態

同じ厚生労働省の調査を元に、シングルマザーの雇用形態についても見てみましょう。

シングルマザーの雇用形態の割合

正規の職員・従業員 48.8%(前回調査44.2%)
パート・アルバイト等 38.8%(前回調査43.8%)

このデータは令和3年度のものですが、前回の調査(平成28年度)と比べると正規の職員・従業員は前回44.2%から4.6%増加、パート・アルバイトは前回43.8%から5%減となっており、正社員や非正規社員での雇用は増加傾向でした。そのため全体的に、シングルマザーの年間就労収入は若干アップしつつある状況です。次に雇用形態別のデータです。

シングルマザーの雇用形態別・平均収入

正規の職員・従業員 344万円
パート・アルバイト等 150万円

シングルマザーの職種別・平均収入

専門的・技術的職業種 359万円
事務業務 271万円
販売業務 183万円
サ-ビス業務 199万円

この結果はきわめて妥当と言えるものですが、やはり専門スキルの有無は収入面での大きな差となって現れる傾向が分かります。正社員であっても、専門性が高いと平均100万円近い年収差が出る点をよく理解しておく必要があるでしょう。

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02シングルマザー世帯の生活費の平均はいくら?

シングルマザー世帯の生活費の平均は、どれくらいになるのでしょうか。総務省統計局「2019年 全国家計構造調査」によると、次のようになっています。

シングルマザー世帯の生活支出と収入の平均

1カ月平均消費支出(生活費) 19万7263円
1カ月平均の可処分所得 20万3083円
※母親と未婚の子どもの世帯のうち子どもが18歳未満の世帯

可処分所得とは収入から税金や社会保険料などを引いた、実質の手取り収入です。このデータで注目すべきは、平均値で収入と支出バランスです。月5820円(=可処分所得20万3083円-消費支出19万7263円)の黒字とはいえ、これは極めて厳しい、シングルマザー世帯の経済状況を示すものと言えるでしょう。

ちなみに2人以上の世帯のうちの勤労世帯、つまりごく一般的な家族世帯の可処分所得の平均額は47万1416円です。それと比べると、シングルマザー世帯の可処分所得はほぼ2分の1以下となっていることが分かります。

収入が低いことから、一般的な家族世帯と比べて支出全体における「水道・光熱費」「食費」「住居費」といった生活を支えるライフラインに関わる費用割合が高くなります。そのため教育費や娯楽費などの支出を抑えざるを得ないという、厳しい経済状況があるのもシングルマザー世帯の実態です。

シングルマザーがかける子どもの教育費の月平均はいくら?

厚生労働省の調査では、シングルマザー世帯の可処分所得に占める教育費の割合は4.8%となっており、これは月平均で9613円です。シングルマザー世帯といっても子ども1人とは限らないので、きわめて低い数字と言えます。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「第5回(2018)子育て世帯全国調査」によれば、第1子が小中高生の場合、塾代・習い事代に2万円以上かけているシングルマザー世帯も多くいます。つまり中高生1人を塾へ通わせるだけで、月2万円以上かかるケースが多いのです。

しかもこの2万円は学費を除いた金額ですから、シングルマザー世帯が十分な教育費を捻出することが、きわめて難しい状況にあることが分かりますね。事実この調査報告では、「子どもの習い事・塾代に対する出費がない」と回答しているシングルマザー世帯もいて、ふたり親世帯の子どもに生じる「教育格差」は今や深刻な問題となっています。

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03シングルマザーが受け取れる手当

平均値のシングルマザー世帯では、収入に対する支出が多く赤字になるという点を厚生労働省のデータを元に説明しました。そこで収入の一部として、重視されるのは各種の手当です。シングルマザーを支援するためのさまざまな制度のうち、特に活用機会の多い手当を中心に解説します。

児童手当

「児童手当」は中学生までの子どもを養育している、すべての家庭が対象となる制度です。次の項目で説明する「児童扶養手当」と混同されがちですが、これとは別の制度です。以前は「児童手当」は「子ども手当」、「児童扶養手当」は「母子手当」と呼んでいました。この2つの制度は、要件を満たせば両方受給することも可能です。

「児童手当」の内容をまとめると次のようになります。

0歳から3歳未満 月額1万5,000円
3歳から小学生の第1子、第2子 月額1万円
3歳から小学生の第3子以降 月額1万5,000円
中学生 月額1万円
所得制限限度額以上 一人あたり月額5,000円(特例給付)

所得制限限度額は扶養家族ごとに決まっていて、母子世帯であれば所得額660万円(子ども1人)が限度額となります。これ以上の所得があると、支給額が月額5,000円に抑えられます。手当の支給は年3回、6月、10月、2月にそれぞれの前月分までの4カ月分を支給されます。

児童扶養手当

児童扶養手当は、かつて「母子手当」と呼ばれていた制度です。父と母が婚姻を解消した家庭、父または母が死亡、あるいは一定程度の障害の状態にある家庭に子どもがいる場合を支給対象としています。2010(平成22)年からはシングルファーザー世帯も支給対象になったので、より「ひとり親の家庭」を支援する制度として活用されるようになりました。

手当額は所得や子どもの人数に応じて、異なります。例えば子ども1人の場合、全額支給と一部支給の2つのパターンに分かれ、全額支給なら月額4万5580円、一部支給なら月額4万5570円~1万760円(令和6年4月分~)です。一部支給については、計算式が少し複雑です。

【児童扶養手当の一部支給の計算式】

4万5570円-[(受給資格者の年間所得額-所得制限限度額〈全部支給所得ベース〉)× 0.0230559 +2人目加算額+3人目加算額]

なおここで示す「所得制限限度額」は、全額支給となるケースでの所得ベース。詳しくは厚生労働省のホームページを参照していただきたいのですが、例えば扶養する子どもが1人であれば所得制限限度額は87万円です。なおこの所得ベースは、2018(平成30)年8月から引き上げられました。制度変更が多い手当なので、こまめに最新情報をチェックしておくことをおすすめします。ちなみに手当の支給は年6回、奇数月に前月までの2カ月分がまとめて支給されます。

児童育成制度(東京都のみ)

自治体で、児童扶養手当によく似た制度を独自に実施しているところがあります。特に東京都が実施している制度として有名なのが「児童育成制度」です。基本的に父母の死亡や離婚によって、両親のいない子どもを養育している人を対象としています。支給額は子ども1人につき1万3500円、毎年6月、10月、2月に4カ月分をまとめて支給します。東京都が条例を根拠に実施している制度ですから、あくまでも東京都内に住んでいる人が対象です。

各都道府県や市区町村によって、独自の支援制度がある

東京都以外での自治体でも、さまざまな子育て支援制度を実施している自治体はあります。地方での制度は単なるシングルマザー世帯の支援だけでなく、人口減対策としての移住支援なども目的としている場合が多いため、子育てのしやすい「生活支援」としてのかたちを取るケースも多いです。

有名なのは愛知県の「遺児手当」などがあります。千葉県千葉市の場合はJR定期乗車券の割引制度、市営住宅入居の優遇措置、水道料金の一部減免制度、そして塾や習い事などに通うためのクーポン助成制度(千葉市学校外教育バウチャー事業)などが実施されています。

他にも秋田県にかほ市では、子どもの医療費は高校生以下が全額無料、不妊治療費を市が助成する、第2子以降の出産での出産祝い金を支給するといった、バラエティーに富んだ制度が実施されています。自治体側の「子育て世代をしっかりと呼び込みたい」という意図を感じられる制度ですね。

このような地方独自の「子育て支援制度」は年々増加傾向にあるので、お住いの地域や気になる地域について、一度調べておくことをおすすめします。

ひとり親家庭医療費助成制度

全国の各市区町村が実施している、シングルマザー世帯の支援制度に「ひとり親家庭医療費助成制度」があります。この制度は医療機関等を受診したとき、保険診察の自己負担分の一部を市区町村が助成するという内容です。

ひとり親家庭の父と母または養育者と、その家庭の子どもを対象としていますが、給付要件や申請方法は各市区町村で違いがあります。支給額も自治体によって違うので、お住まいの自治体のホームページや窓口でよく調べておきましょう。

申請後は毎年11月に「現況届」が届きますので、所得状況や家族状況などを記載して届け出を提出し、「医療証」を発行、または更新します。この「医療証」を提示することで、自己負担額だけを支払うという仕組みです。

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04老後を安心して暮らすためにシングルマザーができる対策とは?

日本の将来予測に対する厳しさが増すなか、シングルマザーが老後を安心して暮らすためには何が必要でしょうか。貯蓄額やライフプランなどを含めて、いくつかのポイントを説明していきましょう。

シングルマザーは老後いくら貯蓄があればいい?

総務省統計局「2023年 家計調査(家計収支編)」によると、65歳以上の単身者の支出は平均で月14万5430円となっています。国民年金をきちんと納付していた場合、2024(令和6)年4月時点で一人あたり月額6万8000円が上限受給額です(年間受給額は81万6000円)。仮にこの金額の受給があったとしても、国民年金だけの受給の場合は月7万7430円の赤字、年間だと92万9160円の赤字になります。平均寿命85歳として老後を20年間と仮定すると、総額で1858万3200円の貯蓄が必要というわけですね。

ちなみに厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、被用者年金に加入している母子世帯は全体の58.4%。ほぼ6割の人は、厚生年金などに加入していることになります。ただし厚生年金を加算したとしても、現時点の予測で年間100万円前後、今後の日本経済の落ち込みと年金制度の状況によっては70万円を切るという予測もあるので、年金だけを頼りにするのは全く予断を許さない状況です。

国の就業支援を活用して正規雇用を目指そう

老後の暮らしのために2000万円以上の貯蓄をするには、現役のうちに収入を上げる努力をするしかありません。上記でお見せしたデータでも分かる通り、正規雇用の人の平均収入額は344万円、パート・アルバイトに人は150万円と大きな差が生じています。従ってシングルマザーは、まず正規雇用を目指すことが重要です。そのためには、国の就業支援制度を活用しましょう。

1つ目に紹介する支援制度は、「ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業」です。この制度では、就職に有利となる資格などの取得を目指すひとり親家庭の親に対し、入学準備金と就職準備金の貸し付けをしてくれます。貸付額は入学準備金として最大50万円、資格試験などに合格を取得した場合、さらに就職準備金として最大20万円の貸し付けをしてくれます。貸付金は5年間その職に従事したときは、申請を行うことで返還を免除されるので、しっかりとキャリアプランを立てましょう。正規雇用を目指したい方にとっては、心強い制度です。

もう1つは、各自治体が実施している「母子家庭等自立支援給付金事業」という制度です。この制度では各自治体が指定する教育訓練を受講したひとり親に対し、修了後に受講料の一部が支給されます。職に結びつく所定の「教育訓練講座」を受けた場合には、受講費用の6割(下限は1万2001円、上限は修学年数×20万円、最大80万円)を支援してくれる手厚さです。

最大の利点は看護師、介護福祉士、保育士といった資格取得に、時間と費用がかかる職業訓練に関しても生活支援があるところです。1年以上養成機関で修業する場合、受講期間中、市民税非課税世帯は月額10万円、市民税課税世帯は月額7万500円(養成機関の課程の修了までの期間の最後の12カ月は月額4万円増額)が支給されるので、勉強と訓練に集中できますね。

子どもの教育資金は給付型奨学金を活用

子どもの教育資金が足りない場合は、給付型奨学金を活用してください。ひとり親の家庭がもらえる奨学金として代表的なものは、「公益財団法人みずほ農場教育財団」(月1万5000円~月3万円)、「公益財団法人古岡奨学会」の高校入学時の奨学金(月額1万6000円)などがあります。できれば貸付型ではなく給付型を選びたいところですが、それだけでは不足する場合は、「日本学生支援機構」の無利子貸付型奨学金である「第一種奨学金」の利用も検討しましょう。

また2020年4月からは、国の高等教育の修学支援新制度がスタートしています。授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)に加えて、給付型奨学金が支給されます。支援対象となるのは、大学・短期大学・高等専門学校(4年・5年)・専門学校で一定の要件を満たした学校です。また利用できる学生は、世帯収入や資産の要件を満たしていること、進学先で学ぶ意欲がある学生であることの2つのみ。どのくらいの世帯年収が対象なのか、どのくらいの給付型奨学金が受けられるのかは日本学生支援機構のHPでシミュレーションができます。まずは試してみましょう。

養育費の取り決めをきちんと行う

厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、養育費をきちんと取

り決めしている世帯は全体の46.7%(前回調査42.9%)と低い水準です。「相手(別れた夫)と関わりたくない」「相手に支払う能力がないと思った」という理由で、交渉に及び腰になってしまっている事情が垣間見えます。

しかしこの養育費問題は、シングルマザー世帯の経済状況を大きく左右するものです。同じ調査結果によれば、養育費の平均相場はシングルマザー世帯で5万485円。これをいくらかでも負担してもらうことは、生活設計上とても重要な問題でしょう。生活が楽になるだけでなく、将来に向けて貯蓄するなどのプランを練ることも可能になるので、しっかりと交渉を行うことが大切です。

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05「老後のお金シミュレーション」で具体的な老後資金を算出してみよう

シングルマザーは収入よりも支出が上回ることが多く、経済的に苦しい方が多いでしょう。ただししっかりとキャリアプランを練り、活用できる支援制度を利用していけば、老後にも備えられます。そのためにはまず「どんな支援制度があるのか」、そして「老後にどれくらいお金がかかりそうか」を知っておくことが重要です。当サイトの「老後のお金シミュレーション」でも具体的な数字を調べることができるので、ぜひ参考にしてください。

また、具体的な数字が把握できたら、その金額を貯める方法について検討してみましょう。家計が苦しく、なかなか貯蓄に回すお金がないというシングルマザーも多いかもしれません。しかし毎月少額でも積み立てることで、将来に向けた資産形成ができます。投資などの運用も視野に入れると、目標額に到達する可能性が高くなります。

例えば、投資信託で毎月1万円を20年間、想定利回り年3%で運用すると、最終積立金額330万円ほどになります(※金融庁「資産運用シミュレーション」で試算)。運用なので元本割れするリスクはありますが、「長期・分散・積み立て」で運用することで価格の変動が小さくなり、リスクの軽減が期待できます。

リスクをできるだけ取らずに投資をはじめてみたいという方は、「NISA」がおすすめです。投資で発生した運用益が無期限で非課税になるなど、メリットも多数あります。詳しく知りたい方は「新NISAではじめる資産形成」の記事をご覧ください。新しくなったNISAの制度について解説しています。

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新井智美

監修:新井智美

CFP(R)認定者・一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)・DC(確定拠出年金)プランナー・住宅ローンアドバイザー・証券外務員

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。


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