夫婦2人暮らしの生活費はいくらに抑えるべき?将来いくら貯蓄すべきか合わせて解説
油断するとついつい使いすぎてしまう生活費。夫婦2人暮らしの場合は、どのくらいに抑えるのが適切なのでしょうか?上手に家計をやりくりする方法や、老後に備えて貯めておくべき貯蓄についても解説します。
01夫婦2人暮らしの生活費の内訳
まずは、夫婦2人暮らしの生活費の平均とその内訳について見ていきましょう。
総務省統計局が公表している「家計調査年報 家計収支編 (2023年)」によると、2人暮らし世帯の消費支出の平均は26万4238円でした。その内訳は以下のとおりです。一口に夫婦2人暮らしといっても、年齢や収入、住んでいる地域などによって異なるため一概には言えませんが、1カ月あたりの支出が26万円を大きく上回っている場合は、一度生活費の見直しをしてみると良いでしょう。
支出項目 | 平均消費支出額 |
食料 | 7万2399円 |
住居 | 1万9038円 |
光熱・水道 | 2万619円 |
家具・家事用品 | 1万1187円 |
被服及び履物 | 7190円 |
保健医療 | 1万5641円 |
交通通信 | 3万6472円 |
教育 | 368円 |
教養娯楽 | 2万6250円 |
その他(理美容、小遣いなど) | 5万4074円 |
出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編(2023年)」表番号4
02共働きと片働きでの収入の差額と生活費の違い
次に夫婦2人暮らし世帯の収入について見ていきましょう。同じく2023年の家計調査によると、夫婦のうち共働き世帯(世帯人員は夫婦2人のみ)の実収入の平均月額は69万2943円だったのに対し、夫のみが働いている片働きの世帯(世帯人員は夫婦2人のみ)は52万9445円でした。共働きの家庭の収入は片働きの家庭よりも平均して毎月16万3498円も多いことになります。では、共働きと片働きの夫婦では、毎月の生活費にどのような違いがあるのでしょうか。2023年の家計調査によると、共働きで夫婦2人のみの世帯では1カ月あたりの消費支出は33万9799円、夫のみが働いている片働きの世帯では30万4796円。その内訳はそれぞれ次の表のとおりです。
共働き夫婦の平均消費支出額 | 片働き夫婦の平均消費支出額 | |
食料 | 8万8050円 | 8万2647円 |
住居 | 1万7755円 | 2万19円 |
光熱・水道 | 2万3891円 | 2万2959円 |
家具・家事用品 | 1万3135円 | 1万3857円 |
被服及び履物 | 1万2727円 | 1万343円 |
保健医療 | 1万3588円 | 1万4040円 |
交通・通信 | 5万6169円 | 4万6431円 |
教育 | 2万552円 | 1万4119円 |
教養娯楽 | 3万3892円 | 3万276円 |
その他(理美容、小遣いなど) | 6万40円 | 5万105円 |
計 | 33万9799円 | 30万4796円 |
共働き夫婦と片働き夫婦とでは、収入に16万3498円もの差があるのにも関わらず、支出の差は約3万5003円しかありません。つまり、共働き夫婦は片働き夫婦よりも、効率的にお金を貯めやすいということ。夫婦別々に厚生年金に加入すれば将来受け取れる年金の額も片働きの夫婦より多くなります。
また、片働きの場合、唯一の働き手である夫(または妻)がリストラされたときや、病気などで働けなくなったときに収入がゼロになってしまうリスクもあります。共働きと片働きのどちらが良いかは人それぞれの価値観によりますが、資産形成や家計の安定という観点から見ると、共働きのほうが良いと言うことができます。
出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編(2023年)」表番号3-11
03生活費を上手く抑えて家計をやりくりするには?
夫婦2人暮らしの世帯は、一般的に子供がいる世帯よりも支出が少なく、経済的にゆとりがある傾向にあります。将来的に子供を持つことを考えているのであれば、子供が生まれるまでの間に2人で協力して、できる限り貯蓄を増やしておくと良いでしょう。貯蓄の基本は、支出を抑えること。毎月の生活費を見直して浮いた分を貯蓄に回しましょう。生活費を抑えて貯蓄を増やすために、まず見直したいポイントは以下のとおりです。
- 生活リズム
夫婦2人の生活リズムがずれていると、光熱・水道費が高くなってしまいます。温め直さなくても良いようにお風呂に入る時間帯を揃える、一緒に食事を食べる、就寝・起床時間を揃えることで電気やガス、水道の使用量を抑えましょう。
- 外食の回数
外食の回数が増えると、どうしても食費がかさんでしまいます。夫婦共働きの場合は特にまったく外食をしないことは難しいですが、回数を減らす、リーズナブルな店を選ぶなどして外食にかかる支出を減らしましょう。
- 家賃
家賃は駅までの距離などの利便性や広さなど少し妥協するだけで、数万円以上節約することも不可能ではありません。リモートワーク中心の働き方をしているなど、毎日通勤で公共交通機関を使わない人は郊外への転居を検討しても良いでしょう。
- マイカー
自家用車を所有していると、駐車場代、ガソリン代、車検代、洗車代、税金等の維持費がかさみ、合計するとかなりの金額になってしまいます。仕事や通勤で毎日のように使う場合は別として、月に数回程度しか利用しないのであればレンタカーやカーシェアリングへの切り替えを検討しましょう。
- キャッシュレス決済
スマートフォンやクレジットカードを使ったキャッシュレス決済は非常に便利ですが、お金を使ったという実感が少ないため、使い過ぎてしまいやすい面を持っています。使い過ぎてしまう人は、キャッシュレス決済の方法をチャージ形式のプリペイドカードに切り替えるなどして、予め決めた金額しか使えないようにしておきましょう。
- 余暇の過ごし方
支出を抑えるのと同時に収入を増やすことも、効率的な貯蓄につながります。勤務先で禁止されていない場合は、平日の夜や休日などの余暇を使って、副業をして収入を増やすのも一案です。もしくは余暇に勉強をして仕事に関連する資格を取得し、昇給を目指すのも良いでしょう。
節約や貯蓄は「辛い」「苦しい」という印象があるかもしれませんが、少しずつでも目に見えてお金が貯まってくると貯められる自信がつき、貯める楽しみも味わえるようになります。「今後生まれてくる子供に十分な教育を受けさせてあげるため」「ゆとりある老後を送るため」など、目標別に口座を作って貯蓄するとモチベーションもUPします。では、具体的にどのくらいの金額を貯蓄の目標にすると良いのでしょうか?教育費と老後資金、それぞれの目安を確認しておきましょう。
- 教育資金の目安
子供にかかる教育費は、公立の学校に行かせるか私立の学校に行かせるかによって大きく異なります。文部科学省が公表している「令和3度子供の学習費調査」の結果では、幼稚園から高校まですべて私立に行かせた場合の学習費の総額は1人あたり1838万円、すべて公立に行かせた場合は574万円となっており、約3.4倍もの差があることがわかっています。
幼稚園3歳から高校3年までの学習費総額
すべて公立 | 574万円 |
幼稚園だけ私立 | 620万円 |
高校だけ私立 | 736万円 |
幼稚園及び高校が私立 | 781万円 |
小学校だけ公立 | 1050万円 |
すべて私立 | 1838万円 |
公立と私立の学習費の比較
公立 | 私立 | |
幼稚園 | 47万2746円 | 92万4636円 |
小学校 | 211万2022円 | 999万9660円 |
中学校 | 161万6317円 | 430万3805円 |
高校 | 154万3116円 | 315万6401円 |
出典:文部科学省「令和3年度 子供の学習費調査」調査結果の概要
高校卒業後に大学に進学した場合は、さらに費用がかかります。就学前に子供の教育をどのように考えるかをきちんと考え、ある程度の資金を貯めておきたいものです。
- 老後の生活資金の目安
続いて老後の生活資金には、どのぐらいかかるのかを確認しましょう。総務省統計局の「家計調査」によると、65歳~69歳の2人以上の無職世帯の1カ月あたりの消費支出の平均は29万6122円でした。70歳以降からは次第に減って75歳以上では20万9882円となっていますが、毎月20万円から30万円までの消費支出を覚悟しておく必要があります。
出典:総務省統計局「家計調査年報 家計収支編(2023年)」
一方、公的年金の1カ月あたりの受給額(令和2年度)の目安は以下のとおりです。国民年金、厚生年金ともに以下の金額をもらえたとしても、平均消費支出を賄うことは容易ではありません。
国民年金(老齢基礎年金、満額) | 6万8000円 |
厚生年金※(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) | 23万483円 |
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準。
たとえば夫婦2人共に国民年金の加入者だった場合、たとえ2人ともに満額がもらえたとしても1カ月あたりの受給額は2人合わせて約13万円で、平均支出を賄うには足りず、将来的に収入がなくなる場合は、この不足分は貯蓄で補っていくしかありません。しかも、高齢になると保険医療費や介護費用が生じる可能性が高くなります。また、予想外の出費が生じるおそれもあります。元気なうちに自分の老後の生活に必要な資金の目安を算出し、それに応じた貯蓄目標を立てて1日も早く貯蓄を始めましょう。
貯蓄を貯めるならiDeCoやNISAといった税金優遇のある制度を利用すると、節税対策が期待できます。例えばiDeCoは、毎月の掛金や運用益、年金の受取時に税制優遇が受けられるものの、60歳まで引き出せない、会社員や公務員は毎月の拠出額に上限があるといった注意点もあります。一方のNISAは掛金の控除はないものの、いつでも払い出しが可能で、非課税になる無期限といったメリットも多数あるため、老後資金以外での資産形成にも使いやすいでしょう。NISAについて詳しく知りたい方は、「新NISAではじめる資産形成」をご覧ください。
出典:日本年金機構ホームページ「令和6年4月分からの年金額等について」
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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