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老後生活を充実させるために!今からできる貯蓄方法

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人生100年時代、定年後の長い老後生活を充実させるためには経済的な余裕が必要です。では、具体的にはどのくらいの貯蓄が必要なのでしょうか?余裕ある老後生活を送るために必要な貯蓄の目安と効率的に老後資金を貯蓄する方法をご紹介します。

01老後生活のために貯蓄は必要?

老後の生活資金として、まず頭に浮かぶのは公的年金(国民年金、厚生年金)です。年金には20歳以上60歳未満の国民全員が加入を義務付けられている「国民年金」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」があります。

それぞれの公的年金には、老齢年金、障害年金、遺族年金の3種類がありますが、ここでは原則として65歳になった時から受け取ることができる老齢年金について説明します。老齢年金の受給額は年金保険料を納めた期間に応じて決まり、満額を受給できるのは原則として20歳から60歳までの40年間、1度も欠かさず納めた場合のみです。

受け取る国民年金の額は毎年改訂されますが、2024’(令和6)年4月分からの国民年金(老齢基礎年金)の満額の受給額(月額)は、6万6800円です。老齢基礎年金の受給額に個人差はありません。

厚生年金に加入する会社員や公務員の老齢厚生年金は、保険料の納付月数と加入期間中の収入によって決まり、収入が高いほど受給額が多くなります。

日本年金機構によると2024年6月分からの厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は月額23万483円となっています。平均的な収入(賞与を含む月額換算で43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金=満額)の給付水準です。

令和6年度(月額)

国民年金(老齢基礎年金(満額))           6万6800円

厚生年金※(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)       23万483円

出典:日本年金機構ホームページ「令和6年4月分からの年金額等について」

一方、総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2023年」によると、65歳以上の単身無職世帯の平均消費支出は月額14万5430円、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の平均消費支出は月額25万959円となっており、公的年金だけで平均消費支出を賄うことは容易ではありません。

出典:家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)II 総世帯及び単身世帯の家計収支 P17

例えば、自営業で国民年金の納付を続けた単身者が老齢基礎年金を満額(6万6800円)受給できたとしても、平均支出額(14万5430円)には毎月7万7430円足りません。年額にすると92万9160円不足することになります。2022年の日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳。仮に60歳で定年退職して仕事を辞め、公的年金だけで20年間生活すると、計算上は約1900万円が不足してしまうことになります。

こうした数字が大きく報道されたこともあり、近年、「年金だけでは生活できないのではないか」という不安が広がっています。2022年に公益財団法人生命保険文化センターが行った調査では、老後の生活に対して82.2%が「不安感あり」と回答しており、具体的な不安内容で最も多いのは、「公的年金だけでは不十分」の79.4%でした。

出典:生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」

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02老後に必要な生活費はいくらくらい?

では具体的に、老後はどのくらいお金が必要で、どのくらいの金額を準備すればよいのでしょうか?総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2023年」によると、65歳以上の単身無職世帯、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の支出の内訳は、それぞれ以下のようになっています。

65歳以上の単身無職世帯】

支出項目 平均支出額/月
食費 4万103円
住居 1万2564円
光熱・水道 1万4436円
家具・家事用品 5929円
被服及び履物 3241円
保健医療 7981円
交通・通信 1万5086円
教育 0円
教養娯楽 1万5277円
その他 3万821円
14万5430円

【65歳以上の夫婦のみの無職世帯】

支出項目 平均支出額/月
食費 7万2930円
住居 1万6827円
光熱・水道 2万2422円
家具・家事用品 1万477円
被服及び履物 5159円
保健医療 1万6879円
交通・通信 3万729円
教育 5円
教養娯楽 2万4690円
その他 5万839円
25万959円

出典:総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年

高齢単身無職の方の場合は、月々の支出が14万5430円なので年間支出は174万5160円です。

高齢夫婦無職世帯の場合は、月々の支出が25万959円なので年間支出は301万1508円となります。

何歳まで生きられるかの年数から定年時の年齢を引いた年数(=寿命までの残りの年数)を掛けたものが必要な老後資金であり、それぞれ受給する年金との差額がマイナスであればその部分を収入増と支出減で埋め合わせる必要があります。

もっとも、上記の消費支出の内訳はあくまでも平均値であり、実際に必要な生活費の金額は、持ち家や扶養家族の有無、家族の健康状態などによって異なるので一概には言えません。特に高齢になるにつれて「保険医療」にかかわる支出が増える可能性が高いこと、また場合によっては「介護」など、上の表にはない項目の支出が発生するおそれがあることにも注意が必要です。まずは上の表で示した消費支出の内訳を参考に、自分の老後の収支を予測して必要な資金の目安を算出し、それに応じた貯蓄目標を立てましょう。

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03生活費以外に必要な老後資金は?

老後で必要なお金は、生活費以外にもあります。

  • 住宅のリフォームや建替えなどの修繕費
  • 交際費やお祝い金などの慶弔費用
  • 車や家電の買い替え費用
  • 医療・介護費用
  • 葬儀費用 など

特に介護費用は、介護付き老人ホームなどの施設に入居せず、在宅介護でも費用がかかります。生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、月々の費用は1カ月あたり平均で8万3000円、一時費用は74万円でした。介護期間は平均で61.1カ月だったことから、トータルで約580万円ほどかかる計算になります。しかも要介護度が高くなるほど一時費用が高くなる傾向があるため、いざという時に慌てないためにも介護費用を別途用意をしておくと安心です。

出典:生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」

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04老後の収支を改善する方法

では、どうすれば効率的に貯蓄を増やすことができるのでしょうか?貯蓄を増やすには、収入を増やすことと、支出を減らすことが基本です。それぞれどのような方法があるのかを見ていきましょう。

収入を増やす

収入を増やす方法としては、主に以下の方法が考えられます。

副業をする

最近では社員に副業を許可する企業も増えています。勤務先の就業規程に違反しないのであれば、週末や就業時間後に副業をして副収入を得ることが可能です。副業である程度の収入が得られる状態をキープしておくと、定年後の貴重な収入源にもなります。

資格を取得する

職務に役立つ資格を取得することで、その資格保有者しかできない仕事を任せられる可能性がありますし、人事考課での評価が上がって収入が増える可能性があります。ビジネスの場で需要の高い資格を取得しておけば、転職する場合に役立つだけでなく、定年後の再就職や起業にも役立てることができるかもしれません。

転職する

現在の勤務先で昇給が見込めない場合は、より待遇の良い職場への転職を視野に入れるのもよいでしょう。転職する際は、目先の給与だけでなく賞与や退職金制度の有無、福利厚生などの確認を怠らないようにすることが大切です。

支出を減らす

収入を増やすのと同時に、支出を見直し、無駄な支出を減らすことも大切です。どの支出をカットすべきなのかはケース・バイ・ケースですが、ここでは特に大きな見直し効果が期待できる支出を紹介します。

キャッシュレスでの支出

スマートフォンやクレジットカードなどのキャッシュレスの支払いは便利ですが、手元のお金が減っていく実感がないため、つい使いすぎてしまうことが多いようです。利用明細には必ず目を通し、使いすぎていないかどうか確認しましょう。使い過ぎを防ぐためには、キャッシュレスでの支払いの場合も必ずレシートをもらい、家計簿をつけること。使ったお金を「見える化」すると、無駄遣いにブレーキをかけやすくなります。

マイカー関係の支出

マイカーを所有すると購入費用はもちろん、ガソリン代や駐車場代、車検代や税金などさまざまな支出が発生します。

マイカーを所有している人は、その必要性を一度見直してみましょう。毎日の通勤や仕事に欠かせない場合は別として、たまにしか利用しない場合は、売却してカーシェアリングやレンタカーへの利用に切り替えると、支出を大きく抑えることができるでしょう。

保険料

何年間も同じ保険に入っている人は、保険内容が本当に必要なものかどうか、また、保障内容が今の自分に合っているのかどうかを見直してみることをおすすめします。

特に注意したいのが、死亡保障です。死亡保障があると、自分の死後に家族や子どもの生活費や教育費を確保できるので安心ですが、子どもの独立後にも必要かなどを検討してみましょう。見直しの過程で、「同じような保険に複数入っていた」「不要な保障のついた保険に入っていた」などの気付きがあるかもしれません。

効率よくお金を増やすには

収入増が実現し、支出の見直しで節約に成功しても、その分を使ってしまっては意味がありません。増えた収入や節約して浮いた生活費は無駄遣いせず、専用口座に移すなどして老後資金を貯めましょう。ただし、今のような低金利時代において、ただ普通口座にお金を預けておくだけでは効率が良いとは言えません。少しリスクをとっても効率よくお金を増やしたい場合は、以下の方法で投資を検討してみるのも良いでしょう。

個人向け国債

国債とは国が発行している債券のことで、個人向け国債は個人が購入しやすい形にした国債のことです。国債には、変動金利型1種類と固定金利型2種類の計3種類があり、いずれも銀行や証券会社で購入できます。変動金利型・固定金利型に関わらず、年率0.05%の最低金利が保証されている上、満期時には投資したお金が目減りせずに手元に戻ってくる元本保証があるので、リスクなしに着実にお金を増やしたい人に向いています。ただし、購入後1年間は換金できないこと、投資商品としては金利が低く、投資効率が悪いことなどのデメリットもあります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

公的年金とは別に、確定拠出年金法に基づき企業が掛金を毎月積み立て(拠出)し、従業員(加入者)が自ら年金資産の運用を行う確定拠出年金制度(企業型確定拠出年金)という私的年金制度があります。導入する企業が増えていますが、企業型確定拠出年金を導入していない企業に勤務している人や、個人事業主の方などに向けた「iDeCo」(個人型確定拠出年金)という制度があります。

iDeCoは、利用する金融機関で、自分が決めた額を毎月積み立てつつ、その掛金を運用することによって、老後のための資産形成を目指すものです。掛金が全額所得控除の対象で、運用益も非課税です。受け取り方は「一時金(一括)」と「年金(分割)」の2通りあり、一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除を受けることができるという税制上のメリットがあります。
掛金の最低額は月額 5000円と資金に余裕のない人でも利用がしやすいことも特長の一つです。

もちろん運用の結果は自己責任なので、運用の結果によって、将来受け取れる年金の額が変動することには留意しておきましょう。

iDeCoについての詳細は、公式ホームページで確認してください。

新NISA

新NISAは、長期の積立・分散投資を通じた資産形成を後押しすることを目的に創設された税制優遇制度です。新しい制度が2024年からスタートしました。

原則として、満18歳以上の人なら誰でも利用が可能です。「NISA」の取り扱いがある金融機関で専用口座を開設し、その口座に自分で決めた金額を月々積み立てていけば、無期限で毎年360万円までの非課税枠で投資することができます。

月々の最低積立額は金融機関によって異なりますが、中には月額100円から積み立てられる金融機関もあるので、「投資がしたいが、まとまった資金がない」という人にも始めやすい投資方法だといえるでしょう。「NISA」は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つが用意され、特に「つみたて投資枠」の投資対象は金融庁の審査をクリアした比較的リスクの低い投資信託のみに限定されています。

ただし、運用対象が投資信託なので、元本割れのリスクはゼロではありません。詳しくは金融庁のホームページで確認してください。新NISAについて詳しく知りたい方は、「新NISAではじめる資産形成」のページをぜひ読んでみてください。

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相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。


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