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早期リタイアとは?必要な資金とその準備方法を解説

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アフターコロナや働き方改革の影響によって、テレワークなど従来とは違った働き方がより身近になってきました。働き方への意識が変化することによって、これまでのような仕事重視のライフスタイルからの脱却を考える人も増えてきています。定年前に退職する「早期リタイア」も広がりつつあるライフスタイルのひとつですが、どれくらいの資金があれば実現できるか分からず、一歩を踏み出す勇気が持てない人もいるでしょう。そこでこの記事では、早期リタイアを検討している人に向けて、その定義や種類、早期リタイアのために必要な資金の準備方法などを紹介していきます。

01早期リタイアとは?

早期リタイアとは簡単に言うと、「定年を迎える前に退職して引退生活を送ること」です。これまでの一般的なサラリーマンは、60歳などの定年を機に仕事を辞め、そのときにもらえる退職金やそれまでに蓄えていた貯蓄などを元手にして老後生活を送っていました。

しかし働き方が多様化している現代では、今までのように新卒から定年まで勤め上げるという価値観が崩れつつあります。サラリーマンであっても若いうちから早期リタイアを目指して蓄財に励み、30~50代で退職した後は貯蓄や資産運用などで生活するケースも増加傾向にあります。

早期リタイアの火付け役となった「FIRE」

そもそも早期リタイアの火付け役は欧米で、いわゆる「FIRE(ファイヤー)」という略語からブームが広がっていきました。ここでいうFIREとは「Financial Independence Retire Early」のことで、日本語では「経済的自立と早期リタイア」という意味になります。企業に雇用されて得られる給与所得に頼るのではなく、基本的に貯蓄や投資などで得られる不労所得をもとに生活することを目指したライフスタイルです。欧米ではFIREブームによってさまざまな書籍が発行されただけでなく、FIREをテーマにしたドキュメンタリー映画まで制作されるほど話題になっています。

日本では、まだ昔ながらの終身雇用制が社会に根強く残っている部分があり、早期リタイアを実践している人はそれほど多くありません。しかし、2020(令和2)年8月27日にはトヨタ自動車が定期昇給を一律型から成果型に変えることを発表したように、日本独自の終身雇用制や年功序列は変革の時代に向かっています。実際にできるかどうかは別として、数あるライフスタイルの中のひとつである早期リタイアという生き方を知っておいて損はないでしょう。

早期リタイアの種類は?

一口に早期リタイアといっても、「完全リタイア」「セミリタイア」「ミニリタイア」「ハッピーリタイアメント」という4つの種類があります。

完全リタイア

完全リタイアとは、生活費に充当するのは貯蓄のみで、それ以外では資金調達をしない方法です。年金収入は得られますが、基本的に退職した後は貯蓄を取り崩しながら生活していくライフスタイルで、自由に使える時間が最も多いリタイア方法になります。これまでの一般的な老後生活をイメージすると分かりやすいでしょう。

セミリタイア

セミリタイアとは、フルタイムでの仕事はせず、アルバイトやパートなどで最低限の収入を得ながら生活する方法です。基本的には、貯蓄を取り崩したり資産運用を行ったりして生活費を捻出しますが、それだけでは足りない部分をアルバイトやパートで補います。完全リタイアに比べると自由な時間は少なくなりますが、それでもフルタイムで働くわけではないので趣味などに費やす時間は増えるでしょう。また働くといっても、責任の重いポジションに就くことは基本的にはないので、それまでよりも精神的に楽な生活を送れます。

ミニリタイア

ミニリタイアは、早期リタイアの種類の中でも少し特殊なケースです。一般的には期間限定で働き、残りの期間で余暇を満喫する方法になります。例えば「1年のうち半年だけ働いて、残りの半年は働かずに過ごす」という具合です。貯蓄状況によって、その都度短期の派遣などで働くかどうかを決めている人もいて、1年間トータルでみると仕事に拘束される時間は完全リタイアやセミリタイアに比べると長くなりがちです。その分完全リタイアやセミリタイアよりも、得られる収入が多い点はメリットになります。

ハッピーリタイアメント

ハッピーリタイアメントは、企業の経営者限定の早期リタイア方法です。簡単に言うと、企業の経営権を譲渡して、その売却金を元手に老後生活を送る方法になります。特に中小企業などの後継者不足に悩んでいる経営者が選ぶケースが多く、M&Aを仲介する企業の力を借りて実現することも珍しくありません。ただし、完全リタイアしても生活できるだけの資金を売却で得られるかどうかには注意が必要です。それなりの規模の会社でないと売却金だけでは老後資金に足りない可能性もあるので、ハッピーリタイアメントを選ぶ場合は、自分が手掛けた事業がある程度成功していて譲渡益が得られることが条件になります。

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02早期リタイアのメリット

早期リタイアすることでどんな人生が送れるのでしょうか?メリットを3つ紹介します。

時間に余裕のある生活が送れる

雇用されている従業員は給与をもらう代わりに、その企業の就業規則にのっとって働かなければいけません。つまり、収入を得るために自分の時間を提供しているとも言えます。早期リタイアを実現すれば自分の好きなように時間が使えるので、趣味やボランティアに精を出したり家族と過ごす時間を増やしたりしてプライベートが充実するでしょう。持病がある場合でも、会社や同僚に気兼ねなく治療に専念できる点もメリットです。

自己都合による退職よりも退職金が割り増しされるケースが多い

すべてに当てはまるわけではありませんが、一般的に早期退職を募る企業では応募者を増やすために、退職金の割り増しを実施するケースが多くあります。割り増しされた退職金は、早期リタイア生活を送る上で心強い資金となるでしょう。

若いうちにしかできないことができる

一般的に「リタイア生活」というと、老後をイメージする人が多いでしょう。現代の日本では、企業で働く人は希望すれば全員65歳まで雇用が確保されることになっています。少子高齢化による労働力不足と年金受給額の減少がささやかれている日本では、将来的に70歳まで雇用が延びる可能性があります。

2021(令和3)年4月には高年齢者雇用安定法が施行され、希望者は70歳まで働けるような環境を整備する努力義務が企業に課されています。人生100年時代がうたわれる現代では健康寿命も延びつつありますが、それでも70代になるとほとんどの人は体力の低下が否めないでしょう。30~50代という若い年齢で早期リタイアするからこそ、自分のやりたいことができる可能性は高いと言えます。

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03早期リタイアのデメリット

自分の時間が増えて豊かな人生を送れるとはいえ、早期リタイアにはデメリットもあります。

貯金や退職金を切り崩して生活しなければならない

早期リタイアに必要な資金を確保していても、貯金や退職金を切り崩しての生活は金銭面での不安や焦りに襲われる可能性があります。仕事をして収入があるときの金銭感覚でいると、すぐに資金が底を尽きることになるため、早期リタイアをしたらシビアな生活への切り替えが必要です。

社会的な信用が下がる

早期リタイアすると無職状態となり、クレジットカードの審査が通らなかったり住宅ローンの借り入れができなかったりすることも。早期リタイア後にアルバイトをして収入を得ても、場合によっては審査が通らないケースもあります。

再就職先が見つからない可能性が高い

早期リタイアしたものの、やはり正社員で働こうと思ってもなかなか再就職ができない可能性があります。特に年齢が上がるほど、再就職が難しくなります。

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04早期リタイアするために資金はいくら必要?

自由な時間が増える早期リタイアの生き方に魅力を感じても、実際に生活していくには資金が足りなくなるのではないかと不安を抱く人もいるでしょう。もし早期リタイア後に資金が足りなくなると、再就職などの収入を増やす方法を考えなければなりません。それでは再び仕事に自分の時間がとられるようになってしまうので、早期リタイアした意味がありません。そのような事態にならないためには、事前に「早期リタイアするためにはどれくらいの資金が必要か」を把握しておくことが重要です。実際に行動を移す前に、早期リタイア後の支出をシミュレーションしておきましょう。

【モデルケース】40歳・夫婦2人に必要な資金

いつ早期リタイアするかは人によって異なりますが、今回は夫婦2人が40歳で早期リタイアすることを想定し、日本人の平均寿命である85歳まで生きるために必要な資金額を計算していきます。まず1カ月に必要な生活費の算出にあたっては、総務省統計局「2023年 家計調査報告(家計収支編)」を参考にします。

それによると、世帯人数2人以上の場合における毎月の生活費は29万3997円です。つまり、1年間に必要な生活費は「352万7964円=29万865円×12カ月」で、リタイア生活を送る45年間トータルでは「1億5875万8380円=349万380円×45年」になります。

保険料をきちんと納めていれば、一般的に67歳から年金を受け取れます。企業に勤めていた人は厚生年金も支給される人もいますが、ここではあえて最低限の年金として国民年金のみで計算します。年金制度に加入している人は、毎年誕生月(1日生まれの人は前月)に送られてくる「ねんきん定期便」でこれまでの加入実績に応じた年金額が分かります。また「ねんきんネット」に登録すれば、67歳からもらえる年金見込額の試算もできます。

国民年金受給額の満額は、2024(令和6)年度で年間81万6000円です。仮にこの金額を夫婦2人で67歳から87歳まで受給すると、「3264万円=81万6000円×2人×20年間」になります。

ただし、国民年金を満額受給するためには、早期リタイア後も国民年金保険料を60歳まで払い続けなければなりません。2024(令和6)年度に支払う1年分の保険料は、1人20万3076円です。20年間同額の保険料を支払うと仮定すると、合計で「815万400円=20万3076円×20年×2人」が必要になります。

つまり夫婦2人で40歳から早期リタイアした場合、87歳までに必要な資金は生活費と国民年金保険料の合計金額から年金収入を除いた「1億3426万8780円=1億5875万8380円+815万400円-3264万円」となる計算です。

さらに注意すべきポイントとして、「住居費の支払いがある」「子どもが生まれた場合」は、必要となる資金がより増える点が挙げられます。今回紹介した総務省統計局「2023年 家計調査報告(家計収支編)」の2人世帯以上における支出内訳では、毎月の住居費は1万8013円しかかかっていません。これは持ち家率が86.7%であるため、支出額が抑えられていることが理由です。

賃貸住宅に住んでいたり、住宅ローンの支払いが残っていたりする場合には、さらに毎月の支出が増える可能性は高いでしょう。ちなみに2人世帯以上の支出内訳における教育費は、1万448円でした。

毎月の生活費はそれぞれのライフスタイルによって大きく変わるため、この計算結果はあくまでも目安にすぎません。しかし40代前半で早期リタイアする場合には、1億円程度の資金が必要になる可能性が高い点も理解しておきましょう。

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05早期リタイアに必要な1億円の準備方法とは?

夫婦2人で40代から早期リタイアするためには、1億円程度の資金が必要であることが分かりました。必要な金額は世帯人数や目標とするライフスタイルによって変わりますが、自分の目指す理想の早期リタイア像に向けて資金の準備(貯蓄)に励まなければいけない点に変わりはありません。資金の準備方法は、基本的には「貯蓄額を上げる」「生活費を下げる」の2つに大別されます。ここからは、それぞれのポイントについて解説していきます。

貯蓄額を上げる

貯蓄を増やすと聞いて多くの人が思い浮かべるのが、資産運用ではないでしょうか。一口に資産運用といっても株やFXのように比較的ハイリスクハイリターンのものから、債券や定期預金といったローリスクローリターンのものまでさまざまです。大切なことは自分が目指す資金まで、どれくらいの利率で運用していけば目標に届くのかを逆算して把握することだと言えます。

例えば毎月10万円の積み立てを年利3%で20年間運用した場合、元金は2400万円ですが運用益によって最終的に3283万200円まで増える計算です。年利5%で運用できた場合には、最終的に4110万3367円となり、年利3%の場合と比べてトータルの合計金額が1000万円近くも増えているのが分かるでしょう。日銀がマイナス金利を解除したとはいえ、現代の日本は超低金利時代です。また、緩和の姿勢は引き続き行われるといわれており、急激な金利の上昇は期待できないでしょう。実際にメガバンクの1カ月定期預金金利では0.02%程度のところが多く、利息収入はほとんど得られません。

毎月10万円を年利0.02%の定期積立で20年間運用しても、最終的に2404万7863円にしかなりません。比較的利率の高いネット銀行の中には、預入期間を長くすれば年利0.3%程度のところもありますが、それでも20年間のトータルで2473万1434円です。加えて利息には20.315%の税金がかかるため、実際はさらに少なくなります。 目標金額は人それぞれですが、ローリスクの商品だけで資産運用をすると目標を達成するのは難しいケースも多いでしょう。状況によってはハイリスクの商品もポートフォリオに組み入れて、ローリスクな商品とのバランスをとりながら投資をすることが重要になります。投資信託などで運用するには、新NISAやiDeCoといった税金が優遇される制度を上手く活用していくことがポイントです。

生活費を下げる

現状の生活費を見直して節約すれば、貯蓄と同じ経済効果が期待できます。例えば毎月の支出を5万円削減して、それを元手に資産運用を20年間続ければ年利3%で1641万5100円、年利5%では2055万1683円になります。資産運用が上手くいくことが前提ですが、早期リタイア後の生活費の不足を大きく埋めてくれるでしょう。

また、生活費を下げるメリットは貯蓄の面だけではありません。早期リタイア後の生活費も下がるため、準備するべき資金も少なくて済みます。総務省統計局「2023年 家計調査報告(家計収支編)」の世帯人数2人以上の場合、毎月29万3997円の生活費が必要でした。

仮に毎月の生活費が25万円※で済む場合、40年間の合計では「1億2000万円=25万円×12カ月×40年間」になります。その後も支払う国民年金保険料を加えると「1億2815万400円=1億2000万円+815万400円」になります。ここから国民年金の受給額(3264万円)を差し引くと、9550万円程度の資産があれば早期リタイアできる計算になり、1億円を下回ることになります。

※毎月の生活費25万円への節約例

食費8万8000円→6万8000円(2万円節約)

教養娯楽費2万7000円→1万7000円(1万円節約)

交通・通信4万2000円→3万2000円(1万円節約)

雑費2万5000円→1万5000円(1万円節約)

生活費を減らすポイントは、まず固定費を見直すことです。固定費の中には住居費や水道光熱費(基本料金部分)、通信費、民間保険会社の保険料など、家計に占める割合が比較的大きな支出もあり、一度見直せばその後も継続して削減できるからです。特に住宅ローンがある人は、低金利の住宅ローンに借り換えをすることで住居費を大きく節約できる可能性があるので、これを機に見直しを検討してみましょう。

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06早期リタイア後の生活費をチェックしてみよう

早期リタイアをすれば自由時間が増え、自分の好きな生き方ができます。実行に移すには1億円近くの資金の準備が必要です。しかし必要な資金はどんなライフスタイルを過ごしたいのかや、いつ退職するかによって異なるため、どれくらい資金があればよいかは一概には言えません。まずは自分の目指す理想的なライフプランを計画し、資金のシミュレーションをするところから始めましょう。早期リタイアを失敗しないようにより綿密な計画を立てたい人は、「老後のお金シミュレーション」で早期リタイア後にかかる生活費を詳しくチェックしてみてはいかがでしょうか。

また2024年から始まった新NISA口座を活用すれば、金融商品から生じる売却益や配当金が非課税となり、手元により多くの利益を残すことができます。しかもNISA口座の非課税保有期間は無期限!一度使いはじめてしまえば、生涯にわたって非課税で保有できる点も魅力です。新NISAの詳しい制度について知りたい方は、「新NISAではじめる資産形成」をぜひ読んでみてください。

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岩永真理

監修:岩永真理

IFPコンフォート代表、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、住宅ローンアドバイザー

プロフィール

大手金融機関にて10年以上勤務。海外赴任経験も有す。夫の転勤に伴い退職後は、欧米アジアなどにも在住。2011年にファイナンシャル・プランナー資格(CFP®)を取得後は、金融機関時代の知識と経験も活かしながら個別相談・セミナー講師・執筆(監修)などを行っている。幅広い世代のライフプランに基づく資産運用や住宅購入、リタイアメントプランなどの相談多数。


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