早期リタイアとは?必要な資金とその準備方法を解説

2020.10.06 16

新型コロナウイルスや働き方改革の影響によって、テレワークなど従来とは違った働き方がより身近になってきました。働き方への意識が変化することによって、これまでのような仕事重視のライフスタイルからの脱却を考える人も増えてきています。定年前に退職する「早期リタイア」も広がりつつあるライフスタイルのひとつですが、どれくらいの資金があれば実現できるか分からず、一歩を踏み出す勇気が持てない人もいるでしょう。そこでこの記事では、早期リタイアを検討している人に向けて、その定義や種類、早期リタイアのために必要な資金の準備方法などを紹介していきます。

01早期リタイアとは?

早期リタイアとは簡単に言うと、「定年を迎える前に退職して引退生活を送ること」です。これまでの一般的なサラリーマンは、60歳などの定年を機に仕事を辞め、そのときにもらえる退職金やそれまでに蓄えていた貯蓄などを元手にして老後生活を送っていました。しかし、働き方が多様化している現代では、今までのように新卒から定年まで勤め上げるという価値観が崩れつつあります。サラリーマンであっても若いうちから早期リタイアを目指して蓄財に励み、30~50代で退職した後は貯蓄や資産運用などで生活するケースも増える可能性があります。

そもそも早期リタイアの火付け役は欧米で、いわゆる「FIRE(ファイヤー)」という略語からブームが広がっていきました。ここでいうFIREとは「Financial Independence Retire Early」のことで、日本語では「経済的自立と早期リタイア」という意味になります。企業に雇用されて得られる給与所得に頼るのではなく、基本的に貯蓄や投資などで得られる不労所得をもとに生活することを目指したライフスタイルです。欧米ではFIREブームによってさまざまな書籍が発行されただけでなく、FIREをテーマにしたドキュメンタリー映画まで制作されるほど話題になっています。

日本では、まだ昔ながらの終身雇用制が社会に根強く残っている部分があり、早期リタイアを実践している人はそれほど多くありません。しかし、2020(令和2)年8月27日にはトヨタ自動車が定期昇給を一律型から成果型に変えることを発表したように、日本独自の終身雇用制や年功序列は変革の時代に向かっています。実際にできるかどうかは別として、数あるライフスタイルの中のひとつである早期リタイアという生き方を知っておいて損はないでしょう。

早期リタイアの種類は?

一口に早期リタイアといっても、「完全リタイア」「セミリタイア」「ミニリタイア」「ハッピーリタイアメント」という4つの種類があります。まず完全リタイアとは、生活費に充当するのは貯蓄のみで、それ以外では資金調達をしない方法です。年金収入は得られますが、基本的に退職した後は貯蓄を取り崩しながら生活していくライフスタイルで、自由に使える時間が最も多いリタイア方法になります。これまでの一般的な老後生活をイメージすると分かりやすいでしょう。

セミリタイアは、フルタイムでの仕事はせず、アルバイトやパートなどで最低限の収入を得ながら生活する方法です。基本的には、貯蓄を取り崩したり資産運用を行ったりして生活費を捻出しますが、それだけでは足りない部分をアルバイトやパートで補います。完全リタイアに比べると自由な時間は少なくなりますが、それでもフルタイムで働くわけではないので趣味などに費やす時間は増えるでしょう。また働くといっても、責任の重いポジションに就くことは基本的にはないので、それまでよりも精神的に楽な生活を送れます。

ミニリタイアは、早期リタイアの種類の中でも少し特殊なケースです。一般的には期間限定で働き、残りの期間で余暇を満喫する方法になります。例えば「1年のうち半年だけ働いて、残りの半年は働かずに過ごす」という具合です。貯蓄状況によって、その都度短期の派遣などで働くかどうかを決めている人もいて、1年間トータルでみると仕事に拘束される時間は完全リタイアやセミリタイアに比べると長くなりがちです。その分完全リタイアやセミリタイアよりも、得られる収入が多い点はメリットになります。

ハッピーリタイアメントは、企業の経営者限定の早期リタイア方法です。簡単に言うと、企業の経営権を譲渡して、その売却金を元手に老後生活を送る方法になります。特に中小企業などの後継者不足に悩んでいる経営者が選ぶケースが多く、M&Aを仲介する企業の力を借りて実現することも珍しくありません。ただし、完全リタイアしても生活できるだけの資金を売却で得られるかどうかには注意が必要です。それなりの規模の会社でないと売却金だけでは老後資金に足りない可能性もあるので、ハッピーリタイアメントを選ぶ場合は、自分が手掛けた事業がある程度成功していて譲渡益が得られることが条件になります。

02早期リタイアのメリット

早期リタイアのメリットとしてまず挙げられるのは、「時間に余裕のある生活が送れること」です。雇用されている従業員は給与をもらう代わりに、その企業の就業規則にのっとって働かなければいけません。つまり、収入を得るために自分の時間を提供しているとも言えます。早期リタイアを実現すれば自分の好きなように時間が使えるので、趣味やボランティアに精を出したり家族と過ごす時間を増やしたりしてプライベートが充実するでしょう。持病がある場合でも、会社や同僚に気兼ねなく治療に専念できる点もメリットです。

また、「自己都合による退職よりも退職金が割り増しされるケースが多いこと」も早期リタイアするメリットになります。すべてに当てはまるわけではありませんが、一般的に早期退職を募る企業では応募者を増やすために、退職金の割り増しを実施するケースが多くあります。割り増しされた退職金は、早期リタイア生活を送る上で心強い資金となるでしょう。

早期リタイアはそのほかにも、「若いうちにしかできないことができる」というメリットがあります。一般的に「リタイア生活」というと、老後をイメージする人が多いでしょう。現代の日本では、企業で働く人は希望すれば全員65歳まで雇用が確保されることになっています。少子高齢化による労働力不足と年金受給額の減少がささやかれている日本では、将来的に70歳まで雇用が延びる可能性があります。

実際に2020(令和2)年3月には高年齢者雇用安定法が改正され、希望者は70歳まで働けるような環境を整備する努力義務が企業に課されています(施行は2021[令和3]年4月)。人生100年時代がうたわれる現代では健康寿命も延びつつありますが、それでも70代になるとほとんどの人は体力の低下が否めないでしょう。30~50代という若い年齢で早期リタイアするからこそ、自分のやりたいことができる可能性は高いと言えます。

03早期リタイアするために資金はいくら必要?

自由な時間が増える早期リタイアの生き方に魅力を感じても、実際に生活していくには資金が足りなくなるのではないかと不安を抱く人もいるでしょう。もし早期リタイア後に資金が足りなくなると、再就職などの収入を増やす方法を考えなければなりません。それでは再び仕事に自分の時間がとられるようになってしまうので、早期リタイアした意味がありません。そのような事態にならないためには、事前に「早期リタイアするためにはどれくらいの資金が必要か」を把握しておくことが重要です。実際に行動を移す前に、早期リタイア後の支出をシミュレーションしておきましょう。

いつ早期リタイアするかは人によって異なりますが、今回は夫婦2人が40歳で早期リタイアすることを想定し、日本人の平均寿命である85歳まで生きるために必要な資金額を計算していきます。まず1カ月に必要な生活費の算出にあたっては、総務省統計局「2019年 家計調査報告(家計収支編)」を参考にします。

それによると、世帯人数2人の場合における毎月の生活費は25万6,632円です。つまり、1年間に必要な生活費は「307万9,584円=25万6,632円×12カ月」で、リタイア生活を送る45年間トータルでは「1億3,858万1,280円=307万9,584円×45年」になります。

保険料をきちんと納めていれば、一般的に65歳から年金を受け取れます。企業に勤めていた人は厚生年金も支給される人もいますが、ここではあえて最低限の年金として国民年金のみで計算します。年金制度に加入している人は、毎年誕生月(1日生まれの人は前月)に送られてくる「ねんきん定期便」でこれまでの加入実績に応じた年金額が分かります。また「ねんきんネット」に登録すれば、65歳からもらえる年金見込額の試算もできます。

国民年金受給額の満額は、2020(令和2)年度で年間78万1,700円です。仮にこの金額を夫婦2人で65歳から85歳まで受給すると、「3,126万8,000円=78万1,700円×2人×20年間」になります。

ただし、国民年金を満額受給するためには、早期リタイア後も国民年金保険料を60歳まで払い続けなければなりません。2020(令和2)年度に支払う1年分の保険料は、1人19万4,320円です。20年間同額の保険料を支払うと仮定すると、合計で「777万2,800円=19万4,320円×20年×2人」が必要になります。

つまり夫婦2人で40歳から早期リタイアした場合、85歳までに必要な資金は生活費と国民年金保険料の合計金額から年金収入を除いた「1億1,508万6,080円=1億3,858万1,280円+777万2,800円-3,126万8,000円」となる計算です。

さらに注意すべきポイントとして、「住居費の支払いがある」「子どもが生まれた場合」は、必要となる資金がより増える点が挙げられます。今回紹介した総務省統計局「2019年 家計調査報告(家計収支編)」の2人世帯における支出内訳では、毎月の住居費は1万6,611円しかかかっていません。これは持ち家率が85.9%であるため、支出額が抑えられていることが考えられます。

賃貸住宅に住んでいたり、住宅ローンの支払いが残っていたりする場合には、さらに毎月の支出が増える可能性は高いでしょう。同様に2人世帯の支出内訳における教育費は398円しかありませんでした。それに対して子どものいる家庭が一定数以上含まれると考えられる3人以上の世帯では、教育費が毎月1万円以上(3人世帯で1万434円、4人世帯で2万8,739円)になっています。

毎月の生活費はそれぞれのライフスタイルによって大きく変わるため、この計算結果はあくまでも目安にすぎません。しかし40代前半で早期リタイアする場合には、1億円程度の資金が必要になる可能性が高い点も理解しておきましょう。

04早期リタイアに必要な1億円の準備方法とは?

夫婦2人で40代から早期リタイアするためには、1億円程度の資金が必要であることが分かりました。必要な金額は世帯人数や目標とするライフスタイルによって変わりますが、自分の目指す理想の早期リタイア像に向けて資金の準備(貯蓄)に励まなければいけない点に変わりはありません。資金の準備方法は、基本的には「貯蓄額を上げる」「生活費を下げる」の2つに大別されます。ここからは、それぞれのポイントについて解説していきます。

貯蓄額を上げる

貯蓄を増やすと聞いて多くの人が思い浮かべるのが、資産運用ではないでしょうか。一口に資産運用といっても株やFXのように比較的ハイリスクハイリターンのものから、債券や定期預金といったローリスクローリターンのものまでさまざまです。大切なことは自分が目指す資金まで、どれくらいの利率で運用していけば目標に届くのかを逆算して把握することだと言えます。

例えば毎月10万円の積み立てを年利3%で20年間運用した場合、元金は2,400万円ですが運用益によって最終的に3,283万200円まで増える計算です。年利5%で運用できた場合には、最終的に4,110万3,367円となり、年利3%の場合と比べてトータルの合計金額が1,000万円近くも増えているのが分かるでしょう。現代の日本は超低金利時代で、メガバンクの1カ月定期預金金利では0.002%程度のところが多く、利息収入はほとんど得られません。

毎月10万円を年利0.002%の定期積立で20年間運用しても、最終的に2,400万4,781円にしかなりません。比較的利率の高いネット銀行の中には、預入期間を長くすれば年利0.3%程度のところもありますが、それでも20年間のトータルで2,473万1,434円です。加えて利息には20.315%の税金がかかるため、実際はさらに少なくなります。

目標金額は人それぞれですが、ローリスクの商品だけで資産運用をすると目標を達成するのは難しいケースも多いでしょう。状況によってはハイリスクの商品もポートフォリオに組み入れて、ローリスクな商品とのバランスをとりながら投資をすることが重要になります。投資信託などで運用するには、つみたてNISAやiDeCoといった税金が優遇される制度を上手く活用していくことがポイントです。

生活費を下げる

現状の生活費を見直して節約すれば、貯蓄と同じ経済効果が期待できます。例えば毎月の支出を5万円削減して、それを元手に資産運用を20年間続ければ年利3%で1,641万5,100円、年利5%では2,055万1,683円になります。資産運用が上手くいくことが前提ですが、早期リタイア後の生活費の不足を大きく埋めてくれるでしょう。

また、生活費を下げるメリットは貯蓄の面だけではありません。早期リタイア後の生活費も下がるため、準備するべき資金も少なくて済みます。総務省統計局「2019年 家計調査報告(家計収支編)」の世帯人数2人の場合、毎月25万6,632円の生活費が必要でした。

仮に毎月の生活費が20万円※で済む場合、40年間の合計では「1億800万円=20万円×12カ月×45年間」になります。その後も支払う国民年金保険料を加えると「1億1,577万2,800円=1億800万円+777万2,800円」になります。ここから国民年金の受給額(3,126万8,000円)を差し引くと、8,450万円程度の資産があれば早期リタイアできる計算になり、1億円を下回ることになります。

※毎月の生活費20万円への節約例

  • 食費6万7,000円→4万円(2万7,000円節約)
  • 教養娯楽費2万6,000円→1万6,000円(1万円節約)
  • 交際費2万4,000円→1万4,000円(1万円節約)
  • 雑費2万2,000円→1万2,000円(1万円節約)

生活費を減らすポイントは、まず固定費を見直すことです。固定費の中には住居費や水道光熱費(基本料金部分)、通信費、民間保険会社の保険料など、家計に占める割合が比較的大きな支出もあり、一度見直せばその後も継続して削減できるからです。特に住宅ローンがある人は、低金利の住宅ローンに借り換えをすることで住居費を大きく節約できる可能性があるので、これを機に見直しを検討してみましょう。

05早期リタイア後の生活費をチェックしてみよう

早期リタイアをすれば自由時間が増え、自分の好きな生き方ができます。実行に移すにはそれなりの資金の準備が必要ですが、必要な資金は目指すライフスタイルや退職時期によって異なるので、どれくらい資金があればよいかは一概には言えません。まずは自分の目指す理想的なライフプランを立てて、シミュレーションするところから始めましょう。早期リタイアを失敗しないようにより綿密な計画を立てたい人は、「老後のお金シミュレーション」で早期リタイア後にかかる生活費を詳しくチェックしてみてはいかがでしょうか。

岩永真理

監修:岩永真理

IFPコンフォート代表、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、住宅ローンアドバイザー

プロフィール

大手金融機関にて10年以上勤務。海外赴任経験も有す。夫の転勤に伴い退職後は、欧米アジアなどにも在住。2011年にファイナンシャル・プランナー資格(CFP®)を取得後は、金融機関時代の知識と経験も活かしながら個別相談・セミナー講師・執筆(監修)などを行っている。幅広い世代のライフプランに基づく資産運用や住宅購入、リタイアメントプランなどの相談多数。

関連キーワード

ご利用上の注意

  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただいたものとします。

0