将来が漠然と不安な方必見、年代別の悩みと解決策を紹介
今の生活に特に不満はないものの、将来に漠然とした不安を抱いている人は多いものです。今回は将来にどんな不安を感じている人が多いのかを年代別に解説し、その不安を解消するためのヒントもあわせてご紹介します。
01日本人は日常生活でどんな悩みや不安を抱えているのか?
まずは、日本人は一般的にどんな悩みや不安を抱えやすいのか、幅広い年代で抱えやすい問題を公的な調査結果を用いて解説します。
内閣府の「国民生活に関する世論調査」(令和4年10月調査)で、日頃の生活の中で悩みや不安を「感じている」、「どちらかといえば感じている」と答えた方1473人に、悩みや不安を感じているのはどのようなことか聞いたところ、上位5位は「老後の生活設計について」(63.5%)「自分の健康について」(59.1%)「今後の収入や資産の見通しについて」(57.1%)「家族の健康について」(51.5%)「現在の収入や資産について」(43.8%)といった結果になりました。
自分と家族の健康不安以外は、全般的にお金に関する悩みや不安を抱えていることがわかります。特に「今後の収入や資産の見通しについて」を挙げた方の割合は30歳代から50歳代が多いです。
では、具体的にどんな悩みを抱えがちなのか、年代別に見ていきましょう。
0220代、30代が将来不安に感じていることは?
次に20代、30代が抱く将来への不安について見ていきましょう。20代はまだ社会に出て間もない世代、30代は仕事にも慣れて社会的責任も重くなり始める世代。就職や結婚、出産といった大きなライフイベントを迎える人も多く、仕事だけでなくプライベートでも、期待される、あるいは果たすべき役割を自覚し始める時期でもあります。そんな20代、30代が将来について不安を感じることには次のようなものがあります。
(1)仕事
就職をしてはみたものの、「このまま今の仕事を続けていってもいいのか」「仕事に将来性を見いだせない」「もっとやりがいのある仕事に就くべきではないか」と不安を感じる人が多いようです。2019年に内閣人事局が行った「国家公務員の⼥性活躍とワークライフバランス推進に関する職員アンケート」では、30歳未満の国家公務員(男性)の14.7%が、女性では9.7%が「すでに辞職を準備中か、1~3年程度のうちに辞めたい」と回答しました。その理由として最も多かったのは「もっと魅力的な仕事に就きたい」で、全体の49.4%を占めました。もちろん一般の会社員とは環境が違うとはいえ、安定性からも人気のある国家公務員の中にも、今の仕事に不安を感じている方が多いと言えそうです。
※出典:内閣官房「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進に関する職員アンケート結果」p.6
(2)お金
世界的に大きな社会問題となっている経済的格差の拡大。日本も決して例外ではなく、特に非正規雇用で働く割合が高い若年世代の貧困が問題視されています。2018年に厚生労働省が行った「若年者雇用実態調査」によると、15歳~34歳の労働者のうち、30.8%が非正規労働者となっています。
経済状況の先行きが不透明な中、「このまま給与が増えないのではないか」、「給与カットされるのではないか」、「ローンが支払えなくなるのではないか」といった不安を持つ人も多く、先の内閣人事局の調査でも、辞職を考えている理由として「収入が少ないから」をあげた人が30歳未満の男性では39.7%、女性では28.1%、30代の男性では30.2%、女性では15.2%に上っています。
※出典:厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査の概況」p.1
(3)恋愛・結婚
未婚者が多い20代~30代には、恋愛や結婚に不安を抱く人も少なくありません。「このまま今の相手と付き合い続けていいのか」、「このまま結婚できないのではないか」、「この人と結婚して幸せになれるのだろうか」といった普遍的な不安を抱く人もいれば、「収入が少ないので、結婚して家庭を持てないのではないか」といった経済的な理由で結婚に不安を抱く人もいます。また、キャリアアップを考えている既婚女性にとっては、どのタイミングで出産をするかも大きな問題であり、子育てと仕事を両立できるかどうかが不安で出産に踏み切れない人も少なくないでしょう。
0340代、50代が将来不安を感じていることは?
就職や結婚、出産といった大きなライフイベントが一段落する40代に入ると、職場でも責任の大きな仕事を任されるようになり、充実感をもって働けるようになる人がいる一方で、以下のような、40代、50代特有の不安や焦りに悩む人も増えてきます。
(1)仕事
一般的に「働き盛り」と言われる40代、50代にも、仕事や働き方について不安を抱いている人は少なくありません。
事実、ビジネスシーンのグローバル化やAIの急速な普及、定年延長、年功序列制度の崩壊など、中高年のビジネスパーソンを取り巻く環境はますます厳しさを増しており、「このままでは職場で不要な人材になってしまうのではないか」、「リストラされるのではないか」、「時代についていけなくなるのではないか」、「これ以上、昇進できないのではないか」といった不安や焦りを感じる人も多いものです。
また、コロナ禍を経て、働き方の多様化が進んだ以外にも、業績が不安定化したり事業そのものの変化が迫られたりした業界で働く人も多いことでしょう。先行きに不安が募る人たちも多くなっています。
(2)生活
子どもの教育や親の介護などに直面するのもこの年代です。
子どもの教育に関しては、教育費を気にしつつその将来を考える必要があり、親の介護については、親の居住している地域との距離や、家族構成などの要素によって出てくる課題も様々です。
(3)健康
40代に入ると若い頃よりも疲れやすくなったり無理が効かなくなったりすることが多く、体力の衰えに不安を覚える人も出てきます。また、若い頃からの不摂生が原因で成人病の兆候が表れたり、実際に発症したりするケースも珍しくありません。このため、「病気で苦しい思いをするのではないか」、「長生きできないのではないか」といった不安、あるいは「病気になって働けなくなれば家族や今後の生活はどうなってしまうのか」、「治療費が払えないのではないか」といった経済的な不安を抱き始める人もいます。
(4)老後
50代に入ると企業などで働いている人の多くが「定年」を意識するようになります。以前なら定年と同時に隠居生活に入ってゆっくり余生を過ごす・・・というライフプランが当たり前でしたが、人生100年時代が到来しつつある今、多くの人にとって定年後に残された数十年間をいかに有意義に過ごせるかが大きな課題となっています。特に、2019年にいわゆる「老後2000万円問題」が大きく報道されたのを機に、SNSなどでは「年金がもらえないのではないか」、「死ぬまで働き続けなくてはならないのではないか」と老後の生活に経済的な不安を抱く人の書き込みが多く見られるようになりました。
04切実な老後への不安
生命保険文化センターがまとめた「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、老後生活に対する不安の有無について、何らかの不安を感じる人は全体で82.2%に達しました。
年齢別に、どの程度不安なのかをまとめた結果は以下の通りです。非常に多くの人が、将来に不安を感じていることがわかります。
※出典:生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」P101
05将来に不安を感じる人が行うべきこと
年代に関わらず、不安な気持ちを抱えながら生きている人は多く、事実、厚生労働省が2022(令和4)年に行った「国民生活基礎調査」では、調査対象となった12歳以上の人のうち47.9%が「日常生活に悩みやストレスがある」と回答しています。特に30~50代の男女においては「日常生活に悩みやストレスがある」と回答した人の割合が高く、男性では約5割、女性では約6割に達しています。不安や悩みを感じているのは、決してあなただけではないということです。
※出典:厚生労働省「 国民生活基礎調査の概況」
大切なのは、不安や悩みとしっかり向き合うこと。今のうちから出来る限りの対策を講じて将来に備えましょう。ここでは、不安解消に向けて第1歩を踏み出すためのヒントをいくつかご紹介します。
(1)不安を紙に書き出す
漠然とした不安を抱えている人は、まず、自分の不安としっかり向き合うために、不安を紙に書き出してみましょう。書き出すことによって、自分の心の中にあった漠然とした不安を可視化することで、具体的な課題として認識できるかもしれません。そうすれば不安の解決のために何ができるかを考えることができるようになるでしょう。
(2)経済的な不安には「貯蓄」と「収入増」の2段構えで挑む
20代~50代までに共通する経済的な不安は、突き詰めると、いずれも貯蓄や収入の少なさが原因です。したがって、経済的な不安を解消するには、貯蓄や収入を増やすしかありません。貯蓄を増やす方法としては、「先取り貯金」がおすすめです。毎月の目標貯蓄額を決めて、給与をもらったら、その日のうちに目標の貯蓄額分を貯蓄用口座に移してしまい、残りを生活費にする方法です。貯蓄分を「最初からなかったお金」にしてしまうことによって、確実に貯蓄することができるので、無駄遣いや衝動買いをしてしまいがちな人はぜひ実践してみてください。
貯蓄と同時に収入増に取り組むことも大切です。資格取得やスキルアップで評価を上げて給与やボーナスを増やす努力をする、もしくは週末や就業後の時間を使って副業を始めてみるのもよいでしょう。資格やスキルの取得、副業での経験や人脈は、将来、例えば定年後の再就職や起業にも役立つ可能性があります。
(3)健康維持に努める
健康への不安を感じている人は、1日も早く具体的な行動を起こしましょう。過度な飲酒や喫煙を控えるのはもちろん、栄養バランスのとれた食生活や適度な運動を心がけることによって、免疫力を高め、病気になりにくい体づくりに努めましょう。年齢を重ねても健康を維持できれば、定年後も働き続けることができるので、年金だけでは不安な人も、生活費の不足を補うことができます。
(4)勤務先以外で人間関係を育む
仕事に関する悩みを解消するためには、勤務先以外の「居場所」を確保することが大切です。万が一、仕事を失ってしまった場合や定年退職をした後に、会社という看板がなくなった自分を受け入れてもらえる居場所があることは、大きな自信に繋がります。また、そこで培った人間関係や人脈が、将来の生活をより豊かで楽しいものに変えてくれる可能性もあります。たとえば将来に経済的な不安がある人は、金融機関が主催する勉強会やセミナーなどに参加して仲間を作りながら投資や貯蓄に関する知識を増やしたり、資格取得のための学校に通って仲間と一緒に勉強などをしたりしてみてはいかがでしょうか。
将来への不安は、放置していても時間とともに解消されるものではありません。それどころか、知らず知らずのうちに私たちの心身に大きなストレスを与え、それがまた将来への不安を増長する原因になるおそれもあります。不安を抱いている自分に気づいたら、まずは不安と向き合い、1日も早く解消に向けて具体的な行動を起こしましょう。仕事や働き方についての不安はキャリアコンサルタントに、お金についての不安はファイナンシャルプランナーに相談するなど、プロのサポートを受けるとより効率的に不安を解消できるかもしれません。
06経済的な不安がある人は新NISAを活用しよう
将来への多様な不安のうち、主に経済的な不安を抱えている人は、将来の資産形成について具体的に考え、実際に行動を起こすのがおすすめです。
新NISAなら、長期・分散・積立を心がければ投資リスクが軽減でき、投資初心者でも少額から運用を始めやすいです。2024年1月からスタートした新NISAは、非課税保有期間の無期限化や年間120万円の「つみたて投資枠」と年間240万円の「成長投資枠」の併用が可能になるなど年間投資枠の拡大によって、さらに投資しやすい制度となりました。特に若い世代の人は、早く始めるほど長期的な視点で粘り強くじっくりと取り組めば、余裕を持って老後資金を増やすことも可能になるでしょう。
興味を持った方は、まずは「新NISAではじめる資産形成」のページにも目を通してみてください。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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