マネーリテラシーを備えた社会人になろう!
社会人になると自分で働いたお金で生活し、将来に備えていかなければなりません。これから社会人になる方のなかには、お金に関して漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 そんなお金に関する不安を払拭するには「マネーリテラシー」を身につけることが重要です。マネーリテラシーを備えた社会人になれば、経済的なリスクや不安を軽減できるだけでなく、お金を効率的に増やしていけるかもしれません。 この記事では、マネーリテラシーを身につけるメリットや、マネーリテラシーを身につける方法を解説します。この記事を読めば、マネーリテラシーの体得が人生をどう変えるのか理解できるでしょう。
01マネーリテラシーとは何か
「マネーリテラシー」とは、経済的に自立してより良い生活を送るために必要な、お金に関する知識や判断力のこと。また、得た知識を上手に活用して、自らの資産防衛や資産拡大につなげる能力も指します。
なぜ、これからの時代にマネーリテラシーが求められるかというと、働き方やライフスタイルが以前よりも多様化しているからです。
かつて日系企業では当然だった終身雇用制度は崩壊しつつあり、複数回の転職は当たり前のことになってきています。毎年給与が上がり、退職金を元手に老後を豊かに送るというライフプランはもう昔のものです。
自分に合った生き方や働き方を自由に選べる時代だからこそ、お金に関する正しい知識を習得しておくべきでしょう。
マネーリテラシーは学校で学べるものではなく、あくまで自発的に学習して身につけるもの。これからの時代を生きていくには、自らマネーリテラシーを学習する姿勢が求められます。
02マネーリテラシーを身につけるメリット
社会人になってマネーリテラシーを身につけることのメリットを具体的に紹介します。
投資詐欺などの金融トラブルに遭いにくい
お金に関する正しい知識を身につけているので「簡単にお金が増える話」をされても、それが現実的なのか否かを判断できます。
「5年後には資金が確実に倍になる」など明らかに怪しい投資話でも、正しい知識がないと言葉巧みに騙され、大切な資産を失いかねません。マネーリテラシーを身につければ、経済や投資の仕組みに関する知識をもとに正しい判断ができるため、投資詐欺のような金融トラブルから自分の資産を守れる可能性が高まります。
ただし、自分の知識を過信し過ぎると逆にトラブルに巻き込まれやすくなるので注意しましょう。
老後のお金に対する不安が軽減される
人生100年時代となり、老後の夫婦がゆとりある生活を送るには、年金だけでは不足すると言われています。過去では2000万円が必要といわれていましたが、その後の物価の上昇などにより2024年時点では約3000万円が必要だといわれています。
「3000万円といわれても、そんな大金貯められる気がしない…」と不安になる方も多いと思います。実際、これを公的年金だけでまかなうことは難しく、若いうちから自分で資産を形成することが重要です。
20代、30代の若いうちにマネーリテラシーを身につけておけば、早くから3000万円の資産形成のために何をすべきかアクションプランが明確になります。より時間をかけて資産形成ができるので、将来の不安を払拭しやすくなるでしょう。
年収や金融資産保有額が増えやすい
日本証券業協会が2023年に行った「個人投資家の証券投資に関する意識調査」によると、金融に関する知識が高いほど、平均年収や金融資産の平均保有額が高くなる傾向にあるといいます。
マネーリテラシーの高い人ほど家計管理がしっかりできて、自分に合った資産運用が行えることから、順調に金融資産を増やせると考えられます。また、年収が高い分だけ多く投資に回せるため、効率的な資産拡大ができる面もあるでしょう。
人生の選択肢が広がる
マネーリテラシーを身につけて金融資産を増やせれば、より自由な生き方を選ぶことができます。
たとえば、給与以外の投資リターンや分配金などで経済的安定が得られると、給与や待遇に縛られて転職先を選ぶ必要がなくなるため、転職の選択肢が広がります。さらに、いわゆる「FIRE(早期リタイア)」や起業、海外移住といった生き方も可能になるでしょう。
マネーリテラシーを身につけた結果、自由な生き方の選択肢が増えることで、人生の充足感が高まります。充足感が高まると、生活の質の向上にもつながるでしょう。
03マネーリテラシーを高める方法!お金に関する「3つの力」を身につけよう
マネーリテラシーを高めるには、「お金を稼ぐ力」「お金を守る力」「お金を働かせる力」の3つの力を身につけることが重要です。1つずつ詳しく解説しましょう。
1. お金を稼ぐ力
先ほども紹介したように、金融資産があれば人生の選択肢が増えます。人生をより豊かに生きるには多くのお金が必要であり、人生において、仕事で安定的に収入を得ることはとても重要です。
たしかに、今は複数回の転職が当たり前の時代であり、フリーランスとして働くのも一般的になりました。しかし、お金を稼ぐという点から見れば、安易に「正社員」の肩書きを捨てて、フリーランスや非正規社員として働く道を選ぶのはもったいない、といわざるを得ません。
働き方による生涯賃金(生涯所得)の違いを知る
正社員は非正規社員に比べて賃金水準が高くなっています。厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、令和4(2022)年の正社員・正職員の平均賃金は32万8000円です。一方、正社員・正職員以外の平均賃金は22万1300円に留まっています。
正社員と非正社員の月収の差は10万6700万円にもなり、年収に換算すれば128万円もの差がつくのです。ボーナスが支給されるとなれば、いっそう年収の差は大きくなるでしょう。
また、企業規模別に賃金を比較すると大企業が34万8300円なのに対し、中企業では30万3000円、小企業では28万4500円となっており、企業規模が大きくなるほど賃金は高くなる傾向です。特に大企業の正社員はお金を稼ぐ力が高いといえます。
働き方による待遇(福利厚生や社会保険)の違いを知る
もう一つ、正社員が有利な点があります。それは福利厚生や社会保険の面で優遇されていることです。福利厚生や社会保険が適用されることで、稼ぐ力がさらに強くなるといえます。
正社員は非正社員に比べて福利厚生の範囲が広く、法定外福利厚生の対象となります。法定外福利厚生の例としては、「慶弔・災害見舞金」「健康診断」「家賃補助・住宅ローン補助」「退職金制度」などが挙げられます。
社会保険に関しては雇用形態によって決定されるものではなく、関連する法律で求められる要件を満たす働き方をしている従業員に適用される決まりです。正社員は基本的に要件を満たしますが、非正社員のうち短時間労働者は注意が必要です。労働時間など一定の要件を満たさないと、社会保険に加入できません。
2. お金を守る力
手元に残るお金は「収入 – 支出」で決まります。マネーリテラシーを高めて資産を拡大するには、余分な支出を抑えて資金を確保する「お金を守る力」も大切です。具体的には、毎月本当に必要な支出を把握し、必要以上のお金は使わないようにする力を身につけましょう。
毎月の給与から天引きされるお金を知る
毎月の必要な支出を把握するためには、給与から天引きされるお金の種類や内容を理解しておく必要があります。給与額および天引きされる金額の詳細が記されているのが「給与明細書」です。給与明細は大きく「支給」「控除」「勤怠」に分けられます。
支給:支払われる給与
基本給 | 月給のベースとなる賃金の固定分 |
---|---|
諸手当 | 通勤手当、住宅手当、資格手当など |
割増賃金 | 時間外手当など |
支給額から「控除」が差し引いたものが手取り額であり、支給額 = 手取り額ではありません。
控除:給与から天引きされる社会保険料や税金
欠勤控除 | 欠勤があった場合、その分の給与を差し引く控除 |
---|---|
遅刻・早退控除 | 遅刻・早退があった場合、その分の給与を差し引く控除 |
雇用保険 | 失業等給付・育児休業給付の支給などの機能を有する雇用保険の保険料(2024年度は額面給与 × 0.6%) |
健康保険 | 医療費負担が軽減される健康保険制度の保険料 (都道府県ごとに異なるが標準報酬月額 × 10%前後) |
介護保険 | 原則40歳以上が加入 (2024年度は標準報酬月額 × 1.60%) |
厚生年金保険 | 厚生年金の保険料 (従業員負担分は標準報酬月額 × 9.15%) |
所得税 | 累進課税制度のため、給与が高くなるほど税率が高くなる |
住民税 | 所得割10% + 均等割5000円(自治体によって異なる) |
その他控除 | 会社で団体加入している生命保険、財形貯蓄など |
控除項目では、納めるべき保険料や税金が未払いになっていないかをチェックします。総支給額から総控除額を差し引いた金額が、実際に手元に入る手取り給与です。
勤怠:所定就労日(労働義務のある日数)、出勤日数、欠勤日数の情報
給与は勤怠情報を基に計算されるため、実際の勤務状況が正しく反映されているかをチェックしておきましょう。
生活費の適正な水準を知る
生活費の適正な水準がどれくらいを知っておくことも、マネーリテラシーを高めるうえでは重要なポイントです。
総務省統計局「家計調査 家計収支編 2023年」によると、単身世帯における1カ月間の平均消費支出は16万7620円です。支出の内訳は次のようになっています。
費目 | 月平均額 | 全体に占める割合 |
---|---|---|
食料費 | 4万6391円 | 27.7% |
住居費 | 2万3815円 | 14.2% |
水光熱費 | 1万3045円 | 7.8% |
家事・家事用品費 | 5955円 | 3.6% |
被服・履物費 | 4712円 | 2.8% |
保健医療費 | 7426円 | 4.4% |
交通・通信費 | 2万1796円 | 13.0% |
教育費 | 2円 | − |
教養娯楽費 | 1万9425円 | 11.6% |
その他の消費支出 | 2万5051円 | 14.9% |
合計 | 16万7620円 | 100.0% |
生活費は年代や働き方、ライフプランによって異なるうえ、家賃や水光熱費には地域差もあるので、必ずしも紹介した目安のようにはいきません。とりわけ都心部では、もっと高めになる場合がほとんどでしょう。
家賃の目安は手取り収入額の1/3程度とされ、手取り18万円であれば管理費込みで月約6万円が水準となります。水光熱費の目安は月1万円前後です。
社会人になると、交際費や食費の支出はどうしても多くなります。こういった変動費を削ろうとするとストレスにつながりやすいので、家賃や通信費などの固定費を安く抑えるのが効果的です。
なかでもサブスクリプションサービスは類似のものに複数加入していたり、利用頻度が低かったりして、支払いが無駄になっているケースも多くなっています。月500円程度だと出費を感じにくいですが、積もり積もって大きな金額になっていることも少なくありません。「1カ月サービスを使わなかったら解約」など、自分の中で一定のルールを決めておき、必ず実行に移すことを心がけましょう。
3. お金を働かせる力
「お金を働かせる」とは、自分の時間や能力を使用せずに収入を得ることをいいます。預金に対して付される利息や、保有株式から得られる配当金・値上がり益などで不労所得を得ている状態が、まさに「お金を働かせている状態」にあたります。
現在の日本は低金利のため、金融機関に預金しても利子が期待できないうえ、インフレ傾向が鮮明です。インフレの状況下では物価が上がるため、実質的に現金の価値が下がります。金融機関に預けていても利子がほとんどつかず、インフレによって預金の価値は次第に下がっていく状況なのです。
2024年3月に日銀がマイナス金利を解除したことが話題になりましたが、解除後もしばらくは金融緩和的な政策を変えない方針を示しています。このため、今後も現金・預貯金で持っている資産の一部を、株や投資信託、不動産などインフレに強い資産に置き換えることが有効でしょう。
投資を始める前に最低限知っておきたい知識を身につける
「資産を置き換えることが有効」といっても、闇雲に投資していては、むしろ資産を減らす事態になりかねません。投資を始める前に、最低限知っておくべき知識を身につけることが重要です。資産運用の世界では「長期・積立・分散」の3つの投資手法を組み合わせるのが王道とされます。
長期
「長期」の投資が有利なのは、運用期間が長ければ長いほど複利効果が期待できるためです。複利効果とは、運用益を元本に加えて再投資する流れを繰り返すことで、利益が利益を呼ぶ状態になることをいいます。
積立
「積立」の投資の利点は「ドルコスト平均法」を実践できることです。ドルコスト平均法とは、価格変動型の商品を定期的かつ一定の金額で購入し続ける方法をいいます。価格が上がっているときは購入数が減少し、反対に価格が下がっているときはたくさん購入できるため、期間全体での平均購入単価を低くする効果が期待できます。
分散
さらに株式と債券、外国株式と国内株式など、性質の異なる商品に「分散」して投資することで、リスクを抑えながらも成長のチャンスをとらえることができるのです。
この「長期・積立・分散」の3原則を守って投資運用を行えば、リスクを抑えた資産形成をできる可能性が高まります。
手取り収入から生活費を差し引いた残りのお金を投資に充てる
投資をするにあたり、前提として必要な生活費は確保しなければなりません。手取り収入から生活費を差し引いた残りのお金のうち、無理のない範囲で投資を実施することが重要です。
まず、手元に残ったお金を次の3つに分類します。
- 生活防衛資金(ケガや病気で働けなくなった場合などに備えるお金)
- 用途が明確なお金(将来の車購入代金、旅行代金など)
- 用途が決まっていないお金
1は生活費の3カ月分を目安として確実に確保しておきたいところ。2は使う時期が3年後以降なら、一時的に投資へ回すのもいいでしょう。3はいわゆる「余裕資金」で時間に縛られないため、積極的に運用へ回しても問題ありません。
04新NISAなら「長期・積立・分散」投資ができる!
社会人になると重要なマネーリテラシーを身につけるには、お金を「稼ぐ力」「守る力」「働かせる力」の3つを身につけることが重要です。お金を働かせるには、余裕資金を積極的に運用に回す姿勢が求められます。
投資の3大原則である「長期・積立・分散」を実践できるとして、いま注目を浴びているのが「新NISA」です。投資に興味はあるけれど始め方がわからないときは、まずNISAからスタートするといいでしょう。
NISAとは、株式や投資信託の運用で得られた利益が非課税となるお得な制度です。気になる方は以下の記事をチェックして、新NISAで投資をスタートしてみましょう。
監修:新井智美
CFP(R)認定者・一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)・DC(確定拠出年金)プランナー・住宅ローンアドバイザー・証券外務員
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。