西松建設(株)
事業内容(抜粋)
当社グループは、当社、子会社21社及び関連会社16社(うち持分法適用関連会社は1社)で構成され、建設事業、アセットバリューアッド事業及び地域環境ソリューション事業を主な事業内容としております。
当社グループの事業に係わる位置づけ及び報告セグメントとの関連は以下のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
(建設事業(土木・建築・国際))
・当社、連結子会社の泰国西松建設㈱他2社及び関連会社の㈱増永組他1社は、建設事業を営んでおります。当社はこれらの会社に工事の一部を発注することがあります。
(アセットバリューアッド事業・地域環境ソリューション事業)
・当社、連結子会社の西松地所㈱他4社、非連結子会社の嶋静商事㈱他2社及び関連会社の浜松中央西ビル㈱他2社は、不動産の販売・賃貸・管理・その他の事業を営んでおります。また、連結子会社の西松リアルエステート・デベロップメント(アジア)社他5社は海外において収益不動産への投資・その他の事業を行っております。
・非連結子会社の新浦安駅前PFI㈱他1社及び関連会社の㈱徳島農林水産PFIサービス他8社は、PFI事業の主体企業であります。
・連結子会社の山陽小野田グリーンエナジー㈱、非連結子会社の㈱サイテックファーム及び関連会社のエヌエナジー㈱他1社は、その他の事業を行っております。
経営成績
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
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売上高 | 323,754 | 339,757 | 401,633 |
営業利益 | 23,540 | 12,615 | 18,827 |
財政状態
2024年3月 | |
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自己資本比率 | 29.1% |
セグメント情報
売上高構成比 | セグメント利益率 | |
---|---|---|
土木事業 | 27% | 10% |
建築事業 | 59% | 0% |
国際事業 | 8% | -2% |
アセットバリュー アッド事業 | 7% | 31% |
地域環境ソリューション事業 | 0% | -393% |
設備投資(抜粋)
当連結会計年度は、建設事業(土木・建築・国際)、アセットバリューアッド事業及び地域環境ソリューション事業において設備投資を行い、その結果、設備投資の総額は14,403百万円となりました。
(建設事業(土木・建築・国際))
当連結会計年度は、主に建設用機械の取得等により、設備投資の総額は1,732百万円となりました。
(アセットバリューアッド事業・地域環境ソリューション事業)
当連結会計年度は、主に賃貸事業用の土地・建物の取得及び自社開発物件の建設等により、設備投資の総額は12,671百万円となりました。
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
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設備投資 | 31,103 | 26,469 | 14,403 |
減価償却費 | 3,728 | 3,966 | 3,993 |
研究開発(抜粋)
当社は技術研究所を中心として、社会や顧客からの要求・要望、社内の各事業部門からの課題解決の要請などに応えるべく、基礎研究から実践的な技術開発まで幅広く研究開発活動を行っております。
具体的には、省力化・生産性向上・高品質化に寄与する技術をはじめ、社会インフラのリニューアル技術、国土強靭化に資する防災・減災に関する技術、省エネ・脱炭素社会に貢献する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っております。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめとして、大学などの研究機関や異業種・同業種企業、公共機関との共同研究も積極的に進めており、多くの分野において効率的な研究開発を推進しております。
当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は2,229百万円で、主な成果は以下のとおりです。
(建設事業(土木・建築・国際))
(1) 生産性向上技術
①道路トンネルリニューアル工事における全断面スライドフォームの長距離・高速移動システムを開発
~供用下でのリニューアル工事に対応可能な多軸台車によるセントルの安全高速運搬を実現~
道路供用下での山岳トンネルの覆工リニューアル工事に伴う通行止め期間の最小限化を目的に、「多軸台車を用いた全断面スライドフォーム移動システム」を開発しました。本システムにより、セントルはトンネル坑口から離れたヤードで組立て、ヤードから1km程度内の距離であれば、一夜間の通行規制時間内に坑内の施工箇所までの運搬が可能となりました。また、セントル四方に取り付けたレーザー距離計にて既設構造物の離隔をリアルタイムに連続計測し、タブレット端末上で管理することで、既設構造物との接触を回避でき、運送時の安全性を確保したシステムを構築しています。なお、セントルとは山岳トンネルの覆工コンクリートを打設する際の内型枠、全断面スライドフォームの通称です。
②データ利活用型ICT土工管理システムによる現場の生産性向上を実証
戸田建設株式会社、株式会社奥村組と2021年に3社で共同開発した「データ利活用型ICT土工管理システム」を複数の実現場に適用し、盛土現場の生産性向上を実証しました。本土量管理システムは、データ利活用にかかわるデータ処理、クラウドへのアップロード作業を自動化し、職員の手間なくクラウド上で施工管理(土量算出・進捗把握)を行うことができます。汎用性が高く、建機メーカー各社の転圧データに対応可能であり、多様な施工条件でも施工管理の省力化・効率化が可能です。
③フォークリフトによる床版取替工事用の専用治具を開発
~クレーン作業ができない作業環境でも新設床版設置作業の効率化を実現~
オックスジャッキ株式会社と共同で、クレーン作業ができない条件の床版取替工事に対して、フォークリフトに装備するリモコン操作が可能な床版作業用の専用装置を開発しました。開発した装置は、フォークリフトのフォーク部分に簡単に装着でき、鉛直・水平ジャッキを装備して床版位置を回転方向、前後方向に微修正可能です。床版作業用装置の性能を検証するため、実工事で設置する新設床版と同程度の大きさの模擬床版を用いて、運搬及び設置試験を実施して、大型フォークリフトによる新設床版の運搬・設置作業が安全・容易に精度よく実施できることを確認しました。
(2) 省人化・省力化技術
①タブレット端末による「CFT柱コンクリート施工管理システム」を開発
~現場技術者によるコンクリート施工管理作業の省力化・省人化を推進~
CFT柱(コンクリートを充填した鋼管柱)へのコンクリート充填中に計測したデータを無線でクラウド上に伝送・処理し、タブレット端末上の画面で施工状況を確認できる「CFT柱コンクリート施工管理システム」を開発しました。本システムでは、タブレット端末上で施工状況を可視化できるので、現場技術者が現場内や現場事務所のどこにいてもCFT柱へのコンクリートの施工状況を確認することが可能となり、CFT柱におけるコンクリートの施工管理の省力化・省人化を実現できます。
②吹付厚さのリアルタイム計測管理技術「吹付ナビゲーションシステム」を確立
~ミリ波レーダ、モーションキャプチャカメラを搭載した新型吹付機の開発~
清水建設株式会社、戸田建設株式会社、前田建設工業株式会社、エフティーエス株式会社と共同で、山岳トンネルの「吹付ナビゲーションシステム(ヘラクレス-Navigator)」を開発しました。近年の社会的ニーズを踏まえて2018年より山岳トンネル工事におけるコンクリートの吹付作業を遠隔化・自動化する技術を探索し、試作・検証を進めてきました。従来の吹付作業の効率を損なわず、定量的にリアルタイムに遠隔で吹付出来形状況を確認できる技術を追求した結果、本システムが完成しました。
③現場巡回中に必要な安全看板を選び作成できるアプリを開発
クェスタ株式会社と共同で、建設現場に設置する安全看板を作成し、携帯端末から直接印刷できる安全看板アプリ「ぱっと看板ナビ」を開発しました。本アプリは、現場内を巡回中に携帯端末から必要な安全看板とその設置場所を簡単に選択指示でき、パソコンを使わず直接印刷できるため、現場技術者の安全看板設置に係る業務の省力化を実現できます。また、作製した安全看板はアプリ内の指示書に表示されるため、設置忘れを防ぐことができ安全な現場運営に貢献できます。
(3) 品質向上技術
①人力による杭の簡易載荷試験の管理団体を設立
~基礎杭の品質・性能の更なる向上に貢献~
株式会社淺沼組、株式会社奥村組、株式会社熊谷組、五洋建設株式会社、佐藤工業株式会社、西武建設株式会社、東亜建設工業株式会社、株式会社東京ソイルリサーチ、戸田建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、一般財団法人ベターリビング、株式会社松村組(50音順)と、共同研究の成果である杭の簡易載荷試験について、その管理団体「杭の簡易載荷試験協会」を設立しました。対象となる杭の簡易載荷試験は、杭頭に人力で打撃を加えるだけで杭の荷重変位関係を評価できる新しい試験方法です。本試験方法に係る知的財産について、同協会は共同研究メンバー13法人の代理として活動し、第三者からの問合せ対応や特許の実施許諾をワンストップでスムーズに行います。
②コンクリートの初期強度発現性を改善したポンプ圧送助剤を開発
戸田建設株式会社、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、株式会社北斗工業と共同で、コンクリートの長距離圧送工事に使用する新しいポンプ圧送助剤を開発しました。本圧送助剤は、アジテータ車に直接投入し、撹拌して使用することができるため作業性に優れています。また、従来のポンプ圧送助剤の課題であった初期強度発現性を改善できます。さらに、真夏の暑中環境下でコンクリートを長距離圧送しても、所要品質を満足していることを実機で確認しました。
(4) 環境関連技術
①技術研究所の一部をリニューアル、ZEB設計に資する要素技術の実証を開始
技術研究所(神奈川県愛甲郡愛川町)の一部を改修し、ZEB設計に資する要素技術の実証ができる空間としてリニューアルしました。今回のリニューアルでは、ワークスペースや会議室など使い方が異なるいくつかのオフィス空間を設け、それぞれの空間に適した省エネ技術を導入し、省エネかつ快適性が向上する空間を目指しました。今後は、技術研究所のオフィスとして継続使用しながら、省エネ性能や快適性について検証し、性能向上を行っていく予定です。
②環境配慮型コンクリート「スラグリート®」の建設技術審査証明(建築技術)を取得
~確認申請時の運用マニュアルを整備し建築物への適用を促進~
戸田建設株式会社と共同で、環境配慮型コンクリート「スラグリート®」について、一般社団法人日本建築センターの建設技術審査証明(建築技術)を取得しました。一般的に、環境配慮型コンクリートは主に地下躯体等の中性化の影響の少ない部位に使用されていましたが、中性化の影響を受けにくい「スラグリート®」は、地上構造物へ使用されることが期待されます。スラグリート建設技術審査証明の取得及び確認申請マニュアルの整備により、本技術の建築分野での適用をさらに進め、脱炭素社会への実現に貢献してまいります。なお、「スラグリート®」は、技術研究所(神奈川県愛甲郡愛川町)の実験棟建屋の一部に適用しております。
③二酸化炭素の回収・利用に適したバイオメタネーション技術の研究開発を推進
国立大学法人横浜国立大学、三機工業株式会社と共同で、二酸化炭素の回収及び利用を実現するため、気体透過膜を活用した新たなバイオメタネーション技術の研究開発に取り組んでいます。本技術の中心は、メタン生成の原料となる水素を気体透過膜から供給するとともに、気体透過膜の表面にメタン生成微生物を固定する仕組み(MBfR)です。水洗で吸収した溶存二酸化炭素をMBfRに供給することで、二酸化炭素の分離精製からメタンとしての回収までをコンパクトに一体化した点が特徴です。本技術の開発成果は、第60回環境工学研究フォーラム(主催:公益社団法人土木学会 環境工学委員会)の環境技術・プロジェクト賞を受賞しました。
(5) 新しい取り組み
①山岳トンネル技術開発拠点「N-フィールド」始動
山岳トンネルの施工技術の向上、無人化・自動化施工システムをはじめとした技術開発のさらなる進展のため、栃木県那須塩原市に研究開発拠点「N-フィールド」を新たに整備し、運用を開始しました。コンクリート吹付機の遠隔操作や自動化技術の開発に向けた試行・検証、油圧ショベルによる自律運転等の技術開発や展示会における遠隔操作システムの体験デモを展開中です。今後は、社内研修会や当社開発技術を視察頂ける対外発信拠点としての活用のほか、遠隔操作重機の配備を拡充し、複数施工機械による遠隔操作での同時制御システムの構築、自動・自律制御システムの開発によるトンネル掘削作業の完全無人化に向けた取り組みを進めてまいります。
②廃食用油の全量でHiBDの安定的な製造を実現
佐賀市と共同で、環境エネルギー株式会社の協力を得て、佐賀市内の家庭及び事業所で回収された廃食用油を原料として、第2世代バイオディーゼル燃料であるHiBDの安定的な製造を実現しました。今回の実証試験結果から、年間を通して市内で回収される廃食用油の全量をリサイクルすることが可能になりました。当社が策定している2050年カーボンニュートラルに向けたCO2削減計画「ZERO30ロードマップ2023」の達成に向け、HiBD等の第2世代バイオディーゼル燃料の現場導入の検討を進めてまいります。また、自治体との連携による地域の脱炭素化の促進に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
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研究開発 | 1,748 | 2,038 | 2,229 |
売上対比 | 0.5% | 0.6% | 0.6% |