パナソニック ホールディングス(株)
事業内容(抜粋)
当社グループは、当社及び連結子会社511社を中心に構成され、総合エレクトロニクスメーカーとして関連する事業分野について国内外のグループ各社との緊密な連携のもとに、開発・生産・販売・サービス活動を展開しています。
なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。
当社(以下、原則として連結子会社を含む)の製品の範囲は、電気機械器具のほとんどすべてにわたっており、「くらし事業」「オートモーティブ」「コネクト」「インダストリー」「エナジー」の5つの報告セグメントと、報告セグメントに含まれない事業セグメント及びその他の事業活動から構成されています。各セグメントの詳細については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記4.セグメント情報」に記載しています。
当社は、IFRSに基づいて連結財務諸表を作成しており、関係会社の範囲についても当該会計基準の定義に基づいて開示しています。「第2 事業の状況」及び「第3 設備の状況」においても同様です。
経営成績
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
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売上高 | 7,388,791 | 8,378,942 | 8,496,420 |
営業利益 | 357,526 | 288,570 | 360,962 |
財政状態
2024年3月 | |
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親会社所有者帰属持分比率 | 48.3% |
セグメント情報
売上高構成比 | セグメント利益率 | |
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くらし事業 | 39% | 3% |
オートモーティブ | 17% | 3% |
コネクト | 13% | 3% |
インダストリー | 10% | 3% |
エナジー | 10% | 10% |
その他 | 11% | 5% |
設備投資(抜粋)
当連結会計年度の内訳は、次のとおりです。
・くらし事業 1,167億円(家庭用電化機器、A2W、電材、ショーケースや業務用冷蔵庫等の新製品生産及び合理化)
・オートモーティブ 299億円(車載コックピットシステム、車載エレクトロニクス関連の新製品生産及び合理化)
・コネクト 216億円(B2Bソリューション事業関連機器等の新製品生産及び合理化)
・インダストリー 556億円(電子部品、制御機器等の新製品生産及び合理化)
・エナジー 2,921億円(一次電池、二次電池の新製品生産及び合理化、北米の新工場建設等)
・その他・全社 521億円(映像・AV機器、住設建材等の新製品生産及び合理化、本社等の設備更新)
・合計 5,680億円
(注)1 前年度比は、当連結会計年度の形態に合わせて組み替えて算出しています。
2 エンターテインメント&コミュニケーション事業及びハウジング事業等の報告セグメントに含まれないその他の事業及び全社部門の投資額を合計し、「その他・全社」として記載しています。
3 有形固定資産の投資額を記載しています。
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
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設備投資 | 237,100 | 309,100 | 568,000 |
減価償却費及び償却費 | 339,148 | 382,289 | 399,984 |
研究開発(抜粋)
当社グループは成長戦略に基づき、将来を担う新技術や新製品の開発に注力しました。加えて、「地球環境課題の解決」への貢献と、「一人ひとりの生涯の健康・安全・快適」へのお役立ちを目指した技術開発にも、積極的に取り組みました。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、4,912億円となりました。主な内訳は、「くらし事業」1,420億円、「オートモーティブ」1,006億円、「コネクト」1,249億円、「インダストリー」630億円、「エナジー」232億円です。
各報告セグメント及びその他の事業、部門の主な成果は、以下のとおりです。
(1) くらし事業
主に「くらし」領域において、家電、空調、照明、電気設備や業務用機器など、家庭から店舗、オフィス、街にいたる様々な空間に対応した商品・サービスの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・省エネ・CO2排出削減に貢献する空調・給湯・暖房領域での研究開発を強化
空調・給湯・暖房領域で中長期研究開発を強化するための体制構築に取り組みました。滋賀県草津市に新研究拠点を設立、カーボンニュートラル実現に向けてZEH(ネットゼロエネルギーハウス)対応やヒートポンプ・自然冷媒など地球環境に配慮した技術開発を推進、拠点建屋では当社省エネ製品をフル活用し、従来の建物で消費される一次エネルギーを基準に53%のエネルギー削減を実現、ZEB Ready(注)を達成しています。またAI・クラウドを活用した空質空調のソリューション事業開発に特化した拠点を大阪の梅田に開設、当社が培ってきたデータ分析・AI技術を活用し顧客接点強化を図りました。
・投入から部品ごとの解体まで一貫処理可能な「廃家電自動解体システム」を開発
使用済み家電製品の解体作業のさらなる効率化を目指し、平林金属㈱の協力のもと、「廃家電自動解体システム」を開発しました。家電製品のリサイクルにおいて、業界初となる投入から部品ごとの解体まで一貫処理可能なシステムとなります。国内では、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)に沿って、適切にリサイクル処理を行っていますが、一方で、家電リサイクル工場においては、労働人口の減少や、繁忙期に集中する作業負荷などの課題を抱えており、さらなる作業の効率化が求められています。本システムでは、今後、回収量の増加が見込まれるエアコン室外機に焦点を当て、部品ごとに解体品位を維持したまま、解体工程で最も時間がかかる室外機カバーからコンプレッサー外しまでの工程を自動化することで、より安定的・継続的な家電リサイクルを実現します。
今後も開発を推進し、さらなる資源循環に貢献してまいります。
(2) オートモーティブ
主に車載向けのコックピットシステム、キャビンUX(ユーザーエクスペリエンス)、EVパワエレなどの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・クラウド対応したデジタルコックピットソリューションの開発
車両開発サイクルの初期段階から自動車開発者を支援するための、クラウドサービス環境の利用を前提としたクラウドネイティブな車載ソフトウェア開発環境Virtual SkipGen™(vSkipGen™)を開発・構築しました。vSkipGen™は、自動車においてこれまで一体であったハードウェアとソフトウェアを分離し、クラウドサーバーの計算能力を活用して、それぞれを独立して進化させることで、市場投入までの時間を短縮し、ソフトウェアの品質を向上させています。新たな開発環境による試作段階でのハードウェアの削減を含め、パナソニックグループの環境目標にも貢献してまいります。
また、複数のECU(Electronic Control Unit)の機能を集約し冗長なコンポーネントを削除することにより、車両のコストと重量の削減との統合による複雑さを軽減ができる、Neuron™ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)システムも開発しました。このHPCシステムは、高性能かつ大量データの入力処理機能を備え、アップグレード可能で拡張性があり、進化する車載プラットフォームに対応できる将来性を備えています。
これらの先端的な取り組みにより、コックピット領域において、インフォテインメント機器やフルディスプレイメーターなどの実績のある商材をさらに発展させUX価値の向上・環境への貢献を図り、今後、急速に進化するモビリティニーズに対応するソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)化の進化に貢献してまいります。
・車載サイバーセキュリティ対策をより強固で安全にするサイバーセキュリティ堅牢化ソリューションを開発
自動運転技術の発展や、デジタル化の進展、コネクテッドカーと呼ばれるネットワークに接続する車両の増加などに伴い、年々高まる自動車を狙ったサイバー攻撃リスクに対し、セキュリティソリューション・サービス「VERZEUSE®」を開発しています。
本年開発した「VERZEUSE®」のサイバーセキュリティ堅牢化ソリューションは、セキュアブートによるプログラム起動時のチェックのみならず、実行中もセキュリティ監視機能が正しく動作していることを完全性監視ソフトウェアが常時チェックします。この完全性監視ソフトウェアを信頼された領域に配置し、信頼された領域からセキュリティ監視機能のチェックを行う多段構成を取ることで、車両内におけるセキュリティ監視機能を堅牢化します。「VERZEUSE®」の仮想化セキュリティソリューションは、ICT分野の世界的アワードInforma Tech Automotive Award2023において「Collaborative Partnership of the Year」を受賞しています。
サイバー攻撃の脅威からの車両の保護を一段階上位の安全性で実現するセキュリティソリューション・サービス「VERZEUSE®」により、安心・安全なモビリティ社会の発展に寄与してまいります。
(3) コネクト
主に「サプライチェーン」「公共サービス」「生活インフラ」「エンターテインメント」分野での企業・法人向けのハードを含むソリューションの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・倉庫ソリューションの上位レイヤーから実行レイヤーまでの最適化を実現する技術を開発
倉庫管理システム上の入出荷情報に応じて、AIアルゴリズムがロボットアームや自動倉庫、人による作業などのタスクを最適に割り当て、商品の出荷作業の同期を実現する新技術「タスク最適化エンジン(仮称)」を開発しました。本技術により、物流の大きな課題であるトラックの荷待ち時間を最大50%削減することが可能です。さらに、本技術と連動して倉庫内で商品のピッキングを行うロボットハンドを制御するロボット制御プラットフォームを開発しました。これらをオープンプラットフォームとして提供していきます。
今後も、ハードとソフト、AIに加え、IE(Industrial Engineering)の知見を組み合わせた当社の実行系ソフトウェアと、米国子会社Blue Yonder Holding, Inc.のソフトウェアを繋げることで、世界トップクラスのサプライチェーンプラットフォームを構築し、世界中の社会課題やお客様の経営課題解決に貢献してまいります。
・つかんだものを落とさずに回し続けられるロボットハンド制御技術を開発
カメラ画像を、ロボットを制御するための視覚機能として活用し、対象物の形状や姿勢に応じてロボットハンドを制御しながら、把持した対象物の位置や姿勢をロボットハンド内で変更することが可能な技術を中央大学と共同開発しました。本技術は、製造現場での部品組立作業、物流現場での様々な形状の対象物を高密度に整列させる箱詰め作業や、形状に個体差がある青果等において個体毎に形状をリアルタイムで検出し対象物を整列させる作業など、これまで人手に頼っていた作業の自動化に貢献します。こうした技術は、小売店舗等の流通現場においても、商品陳列など対象物を決まった姿勢で並べる作業への応用が見込まれます。
(4) インダストリー
主に電子部品、FA・産業デバイス、電子材料などのBtoB事業を中心とした幅広いソリューションの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・開発ノウハウとデジタル技術を組み合わせて実験設備を自動化したスマートラボを開設
大阪府門真市の旧本社構内に24時間/365日稼働する自動実験室スマートラボを導入・開設しました。スマートラボは、これまで進めていたAIやMI(マテリアルインフォマティクス)、PI(プロセスインフォマティクス)と装置を組み合わせることで、飛躍的に材料開発プロセスの高度化・スピード化が図れます。
コンデンサの開発向けに導入しており、材料準備、濃度調整や温度管理、実験データの収集など、これまでは技術者が手作業で行っていた単純作業を自動化することで、技術者はより創造性ある付加価値の高い研究開発業務に集中することができるようになります。また、遠隔操作による実験が可能になることで、日本国内に限らずグローバルで技術者の活躍の場を広げていきます。
今後は、電子材料やモータなど他の製品開発にも展開していく予定で、スマートラボを起点にインダストリー事業の技術開発を強化してまいります。
(5) エナジー
主に乾電池、二次電池、産業用電池、車載用電池の研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・EV電池のエネルギー密度のさらなる向上を実現する次世代電池開発を加速
現在負極材に広く使用されている黒鉛に比べ、理論値で約10倍という高い容量を有する特徴を持つシリコン材を使いこなす技術を開発してきました。加えてパートナー企業と連携して高容量かつ充電時の膨張を抑制する技術を導入することで、負極材中の黒鉛をより多くの比率でシリコン材に置き換え、エネルギー密度を向上させることが可能となります。
今後も更なる電池の高性能化を推進し、体積当たりのエネルギー密度を現行比で2025年までに5%向上、2030年までに25%向上させるという目標の実現を目指します。
(6) その他
エンターテインメント&コミュニケーション
主に有機ELテレビなどのAV機器、デジタルカメラ、ヘッドホン、電話機などのコミュニケーション機器等の映像・音響・通信関連の商品・サービスに関する研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・新たなオペレーションシステム(OS)搭載による体験価値を創出するテレビを開発
これまで培ってきた高画質・高音質技術、通信・デジタル技術、機器連携などのハード・ソフトウェア技術を活用し、Amazon Fire TVが持つUX開発力やコンテンツ力を融合することで、視聴者一人ひとりのライフスタイルや視聴環境に応じたストレスフリーなコンテンツとの出会い、コンテンツに最適な画質・音質による映像の没入体験、家と移動空間またIoT機器や録画機器とのシームレスなつながりを実現する技術開発を行います。2024年度のグローバルフラッグシップモデルから、OSにAmazon Fire TVを搭載し、コンテンツ適応画質などの独自技術を取り入れ、操作性や機器連携を進化させた新製品を導入していきます。
今後も映像・音響・通信の技術で、お客様のウェルビーイングに貢献する商品サービスを提供してまいります。
ハウジングシステム
主に住宅設備・建材や技術を活かしたデバイス・ソリューションの研究開発を行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・震度7の繰り返す巨大地震にも耐えられる独自の基準を設定した「テクノストラクチャーEX」を開発
1995年阪神淡路大震災以降に震度6弱以上の地震は60回以上発生しており、2016年熊本地震においては震度7の激震が同一観測点で2回計測されるなど、繰り返す地震によって建物の被害が拡大しました。地震への備えがより求められる背景のもと、「テクノストラクチャー工法」の特徴である緻密な許容応力度計算による耐震性に加え、独自人工地震波による動的な建物変形を可視化する「4D災害シミュレーション」と、地震の力を吸収するオリジナル制震ダンパー「テクノダンパー」を組み合わせることで、建物への影響を最小限に抑制する技術「テクノストラクチャーEX」を開発し、繰り返す巨大地震への強さを実現しました。
今後も、人々の「くらし」に寄り添い、人と社会へ新たな価値を提供してまいります。
技術部門・共通事項
主に、技術・モノづくりに関わる全社戦略の統括、中長期視点での先端技術開発、生産技術・要素技術・共通技術基盤開発などを行っています。
主な成果としては、以下のとおりです。
・世界初、ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池を開発
当社独自の材料技術やインクジェット塗布製法と、レーザー加工技術を組み合わせることでサイズ、透過度、デザインなどの自由度を高め、カスタマイズにも対応可能な世界初ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池を開発しました。30cm角モジュールで18.1%の世界最高レベルの光電変換効率を有しています。プロトタイプを試作し神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウンにて性能や耐久性などの技術検証を含めた1年以上にわたる長期実証実験を昨年8月より実施しています。またメートル級の試作ラインを導入し、大面積製造プロセスを開発中です。
今後もペロブスカイト太陽電池をまち・くらしに調和する「発電するガラス」と位置づけ、再生可能エネルギーの創出と都市景観の調和を両立するとともにCO2削減に貢献してまいります。
・画像認識を中心としたAI技術の社会実装に向けた技術開発を推進
当社が長年培ってきた画像認識技術をAIに適用、膨大なデータ数・計算量を低減し社会実装する技術を開発しています。例えば、種々の属性に共通して有効となる顔認証モデルを学習することで、データ数が少ない特定モデルの認証精度低下を抑制する技術や、AIモデルが学習していない物体の「知ったかぶり誤認識」を防ぐ技術、悪天候環境で画像認識精度を上げる技術などを開発、いずれもAIや画像認識領域で権威のある国際学会に採択されました。こうした採択数は年々増加(前年比1.5倍)しています。また生成AI活用による業務効率向上を目的に大規模言語モデルをベースに自社向けのAIアシスタントサービスを開発、自社独自情報も活用できるよう機能を拡大、業務での活用を目的とした運用を開始しています。
今後も当社は、AI活用技術の社会実装を加速し、お客様のくらしやしごとの現場へのお役立ちに貢献する研究開発を推進していきます。
・くらしに密着し、しごとの現場で社会課題解決に貢献するロボット活用技術を開発
深刻化する物流領域での労働力不足や効率化に貢献するロボット活用技術を推進しました。荷物配送の現場では、これまで培ってきた自動配送ロボット技術・実証実績に基づき、改正道路交通法を踏まえた届出制による自動配送ロボットの運用を業界に先駆け実現しました。また物流倉庫の現場では、ロボット制御技術、センシング技術、AI技術を組み合わせて一元制御することにより、倉庫で変動する多様な商品への対応が可能となった「ロボット制御プラットフォーム」を開発、ひとによる作業や機能の制約を解き放つ技術群を開発しました。
今後も当社は、ロボット技術があるからこそ実現できる、より便利な世の中や、より豊かな世界を目指し、開発を加速いたします。
(注) 「ZEB(ネットゼロエネルギービル)」を見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減に適合した建築物
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
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研究開発 | 419,807 | 469,785 | 491,224 |
売上対比 | 5.7% | 5.6% | 5.8% |