(株)日立製作所
事業内容(抜粋)
2024年3月31日現在、当社及び関係会社942社(連結子会社573社、持分法適用会社369社)から成る当グループは、「デジタルシステム&サービス」「グリーンエナジー&モビリティ」「コネクティブインダストリーズ」の3つのセクターを成長分野として位置付け、関連するビジネスユニットを各セクターに配置しています。また、「オートモティブシステム」及び「その他」を加えた合計5セグメントにわたって、当グループは、製品の開発、生産、販売、サービスに至る幅広い事業活動を展開しています。
(注)2023年10月16日付で日立Astemo㈱が株式の一部譲渡によって当社の連結子会社ではなくなったことに伴い、2024年4月1日付でオートモティブシステムセグメントは廃止されています。
日立の強みは、高品質・高信頼のプロダクトに加え、製造現場の機器・システムや鉄道、発電所などの社会インフラを動かすOT (Operational Technology:制御・運用技術)、最先端のIT を併せ持ち、顧客や社会の課題を解決するデジタル技術を活用したソリューションを提供できることです。
社会やビジネスが生み出すデータが増え続ける現在、これらのデータから新たな価値を創出し、イノベーションを加速するためのエンジンが日立のLumada(ルマーダ)です。Lumadaとは、顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称です。Lumadaという名称は、“illuminate(照らす・輝かせる)”+“data(データ)”に由来しています。これは日立の培ったOTにIT、プロダクトの強みを掛け合わせることで生まれました。日立では、社会やビジネスにおける活動から生み出されるデータを未来の社会における新たな価値の源泉として注目し、大量のデータを活用して世の中に向けてイノベーションを創出するビジネスとして、2016年にLumada事業を立ち上げました。
Lumada事業は、顧客の経営課題を理解した上で、その解決方法を設計・実装し、運用・保守するとともに次の課題解決に取り組むという顧客との価値協創のサイクルを、データ分析やAIといったデジタル技術を活用して構築するビジネスです。具体的には、以下のようなソリューションの提供を進めています。
・稼働データを収集して作成した学習モデルにより、異常に至る予兆を検出して突発故障による機器停止を未然に防止するソリューション
・AIが故障の症状等から設備・機器の修理箇所やその対処方法を素早く提案することにより、設備・機器故障による稼働停止時間を削減し、稼働率を向上させるソリューション
・生産実績データ等のあらゆるデータを一元管理し、作業プロセスの見直しやタイムリーな生産調整に生かし、生産効率及び品質を向上させるソリューション
このように、プロダクトの売り切りで終わるのではなく、フィー収入などソリューションの提供価値に基づく収益モデルを構築するために、「OT×IT×プロダクト」の強みを生かし、様々な業種・業務に関するノウハウを商材化し、複数の顧客に提供可能なデジタルソリューションへと転換することで、Lumada事業の拡大を図っています。
また、日立は、急速に進化する生成AIを成長エンジンとして積極的に活用し、業務の生産性を飛躍的に向上させるとともに、新たな事業機会を創出するAIトランスフォーメーションによって、社会イノベーション事業をさらに加速していきます。日立における主な取組は、次のとおりです。
(1)2023年5月 Generative AI センター設立
生成AIの安全・有効な利活用を推進するための新組織「Generative AIセンター」を設立しました。
生成AIに関する知見を有するデータサイエンティストやAI研究者と社内の各業務のスペシャリストが集結し、生成AIの先端的なユースケースや価値の創出を支援するコンサルティングサービスなどを行っています。
(2)2023年12月 Chief AI Transformation Officer配置
デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズの3つのセクターそれぞれに「Chief AI Transformation Officer」を配置しました。
AIトランスフォーメーションの実行をリードする推進者として、全社戦略の各セクター内での連携、浸透を担います。また、業務の実証結果や技術・ノウハウをセクター間で共有し、ベストプラクティスの蓄積やシナジー創出を促進することで、生成AIによる社内プロセス改革の取組を加速させます。
(3)パートナーシップを通じたAIエコシステムの拡大:NVIDIAとの協業によるDX(デジタルトランスフォーメーション)加速
日立は、2024年3月に、米国半導体大手のNVIDIA Corporationと生成AIに関する協業を発表しました。日立のOT分野でのリーダーシップ・デジタルソリューションと、NVIDIAの生成AIに関するノウハウを組み合わせることで、DXによる社会イノベーションを加速します。
本協業をはじめ、先端パートナーとのAIエコシステムを今後さらに拡大していきます。
(NVIDIAとの協業の例)
・仮想空間での高度なシミュレーションにより、エネルギーやモビリティ分野の設備や業務プロセスを最適化するソリューションを開発
・日立のLumadaソリューションのライブラリとNVIDIAのプラットフォームを統合し、新たなAIソリューションを創出
・NVIDIAのAI技術・画像処理半導体とHitachi Vantara社のストレージを統合したAIインフラ製品を提供
(4)ユースケース
①車両設計と保守・保全を進化させる鉄道メタバース
生成AIを活用して、仮想空間(メタバース)に鉄道の車両や線路を再現することで、車両の最適設計や安全運行、的確な線路の保守を可能とする現場拡張メタバースの技術を開発しました。
例えば、メタバース上に再現した線路の3Dモデルに、運用や保守の情報を追加し、状態を色などで表示します。現場での保全作業支援や完全リモートでの保守、補修要否の判断トレーニングの支援など、安全性と効率性を向上させる技術です。
②生成AIによる社内のプロセス改革
日立グループ内でも、25万人を超える従業員の様々な業務で生成AIの利用を推進し、生産性向上につながるノウハウを蓄積しており、例えば、以下の取組によって、社内プロセス改革を行っています。
・生成AI適用時のコード生成やテスト効率化、安全性の考察など、ソフトウェア開発の生産性を向上
・過去の問合せや業務マニュアルなどを生成AIと連携し、顧客対応のオペレーションを迅速化
社内でのトライアルを積み重ね、顧客との協創活動にも生かしています。
(5)AI利用に伴うリスクへの対応
イノベーションの源泉としてAIの利用には多くの利点がある反面、情報漏えい、著作権やプライバシーの侵害、虚偽情報など、様々なリスクも伴います。
日立では、従来のプライバシー保護の取組に加え、2021年には人間中心のAIを開発・社会実装するためにAI倫理原則を策定しました。さらに、生成AIについても、利用ガイドラインを作成するなど、Generative AIセンターを中心に、リスクを適切にマネジメントしながら、活用を推進しています。
各セグメントにおける主な事業内容と当社のビジネスユニット(BU)及び主要な関係会社の位置付けは、概ね次のとおりです。なお、下表のほか、2024年3月31日現在の主要な持分法適用会社として、日立Astemo㈱及び日立建機㈱があります。
<デジタルシステム&サービス>
●主な製品・サービス
・デジタルソリューション(システムインテグレーション、コンサルティング、クラウドサービス)
・ITプロダクツ(ストレージ、サーバ)
・ソフトウェア
・ATM
●BU及び主要な関係会社
〔BU〕
クラウドサービスプラットフォームBU
デジタルエンジニアリングBU
金融BU
社会BU
〔連結子会社〕
日立情報通信エンジニアリング
日立チャネルソリューションズ
日立ソリューションズ
日立システムズ
GlobalLogic Worldwide Holdings
Hitachi Computer Products (America)
Hitachi Digital
Hitachi Digital Services
Hitachi Payment Services
Hitachi Vantara
<グリーンエナジー&モビリティ>
●主な製品・サービス
・エネルギーソリューション(パワーグリッド、再生可能エネルギー、原子力)
・鉄道システム
●BU及び主要な関係会社
〔BU〕
パワーグリッドBU
原子力BU
鉄道BU
〔連結子会社〕
日立GEニュークリア・エナジー
日立プラントコンストラクション
日立パワーデバイス(注)1
日立パワーソリューションズ
Hitachi Energy
Hitachi Rail
<コネクティブインダストリーズ>
●主な製品・サービス
・ビルシステム(エレベーター、エスカレーター)
・生活・エコシステム(家電、空調)
・計測分析システム(半導体製造装置、医用分析装置)
・産業・流通ソリューション
・水・環境ソリューション
・産業用機器
●BU及び主要な関係会社
〔BU〕
ビルシステムBU
インダストリアルデジタルBU
水・環境BU
〔連結子会社〕
日立ビルシステム
日立グローバルライフソリューションズ
日立ハイテク
日立産機システム
日立インダストリアルプロダクツ
日立産業制御ソリューションズ
日立プラントサービス
日立電梯(中国)
Hitachi Global Air Power US
Hitachi Industrial Holdings Americas
JR Technology Group
〔持分法適用会社〕
日立国際電気
Arcelik Hitachi Home Appliances
Johnson Controls-Hitachi Air Conditioning Holding (UK)
<オートモティブシステム>
●主な製品・サービス
・パワートレイン
・シャシー
・先進運転支援
・二輪車用システム
●BU及び主要な関係会社
〔連結子会社〕
―(注)2
<その他>
●主な製品・サービス
・不動産の管理・売買・賃貸
・その他
●BU及び主要な関係会社
〔連結子会社〕
日立リアルエステートパートナーズ
Hitachi America(注)3
Hitachi Asia(注)3
日立(中国)(注)3
Hitachi Europe(注)3
Hitachi India(注)3
(注)
1.㈱日立パワーデバイスは、株式譲渡により、2024年5月2日付で当社の関係会社ではなくなりました。
2.日立Astemo㈱は、株式の一部譲渡により、2023年10月16日付で当社の連結子会社ではなくなり、当社の持分法適用会社となりました。これに伴い、オートモティブシステムセグメントに属する会社はなくなり、2024年4月1日付でオートモティブシステムセグメントは廃止されました。
3.Hitachi America, Ltd.、Hitachi Asia Ltd.、日立(中国)有限公司、Hitachi Europe Ltd.及びHitachi India Pvt. Ltd.は、当グループの米州、アジア、中国、欧州及びインドにおける地域統括会社であり、当グループの製品を販売しています。
経営成績
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
売上高 | 10,264,602 | 10,881,150 | 9,728,716 |
営業利益 | 782,625 | 805,324 | 775,285 |
売上高営業利益率 | 7.6% | 7.4% | 8.0% |
財政状態
2024年3月 | |
---|---|
親会社株主持分比率 | 46.7% |
セグメント情報
売上高構成比 | セグメント利益率 | |
---|---|---|
デジタルシステム&サービス | 25% | 13% |
グリーンエナジー&モビリティ | 31% | 7% |
コネクティブインダストリーズ | 29% | 10% |
オートモティブシステム | 12% | 4% |
その他 | 3% | 1% |
設備投資(抜粋)
当グループ(当社及び連結子会社)は、長期的に成長が期待できる製品分野及び研究開発部門への投資に重点を置き、あわせて省力化、合理化及び製品・サービスの信頼性向上のための投資を行っています。
当連結会計年度の設備投資金額(有形固定資産及び投資不動産受入ベース)は、3,158億円であり、内訳は次のとおりです。
・デジタルシステム&サービス 678億円(製品開発、データセンタの維持・更新)
・グリーンエナジー&モビリティ 1,149億円(パワーグリッド製品等生産設備、鉄道システム生産設備)
・コネクティブインダストリーズ 638億円(産業用機器生産設備、半導体製造装置及び計測・分析装置の開発及び生産増強、ビルシステム生産設備、その他の製品の開発及び生産合理化)
・オートモティブシステム 512億円(自動車機器の生産増強)
・その他 210億円(事業所の改修、研究開発設備)
・全社及び消去 △30億円
・合計 3,158億円
(注)1.上表は、使用権資産の「有形固定資産」への計上額及び投資不動産の「その他の非流動資産」への計上額を含んでいます。
2.所要資金は、主として自己資金をもって充当しています。
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
設備投資 | 388,700 | 349,700 | 315,800 |
減価償却費及び無形資産償却費 | 540,252 | 526,310 | 451,525 |
研究開発(抜粋)
(1)研究の目的及び主要課題
当グループ(当社及び連結子会社)は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」を成長ドライバーとして、社会イノベーション事業のさらなる進化をめざしています。「グローバル事業成長に向けて、デジタル、グリーンによるイノベーション創生」を研究開発のミッションとして掲げ、研究開発資源を、顧客体験を革新するイノベーションや社会の本質課題を捉えたイノベーションの創生に重点的に配分し、顧客と社会の課題解決に努めることで、プラネタリーバウンダリーを越えない社会の維持と一人ひとりのウェルビーイングの実現の両立、そして将来にわたる継続的な事業成長をめざします。
事業活動の競争力強化及び将来の成長に向けた取組として、Lumada成長サイクルの具体化により顧客の成長シナリオを策定し、顧客価値を起点としたDX(デジタルトランスフォーメーション)/GX(グリーントランスフォーメーション)をOne Hitachiで実現するとともに、さらに先を見据えたバックキャスト型のコーポレートR&Dを通じた次のLumadaソリューション創生を、グローバル体制で推進しています。そのために、デジタル技術基盤の拡大と、海外の研究リソースの強化を図っています。また、グループ横断で成長戦略をリードする日立デジタル社、グローバル環境事業本部、環境戦略企画本部、イノベーション成長戦略本部と連携し、当グループ一丸となって社会イノベーション事業のさらなる進化を加速します。
(2)研究開発体制
当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めています。また、国内外の大学や研究機関との連携に加え、2019年4月には研究開発グループ国分寺サイトに研究開発拠点「協創の森」を開設し、顧客やパートナーとのオープンな協創を加速しています。
さらに、コーポレートベンチャリング室を設立し、これまで組成した3つのファンドを通じて、合計30社以上のスタートアップ企業に出資し、当グループの事業とのコラボレーションを通じて各企業の成長を支援しつつ、顧客に価値を提供することで、DX、脱炭素、ウェルビーイングなどに貢献しています。
社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、2022年4月に、研究開発グループの組織を再編しました。これまで、当グループのフロントとともに価値起点でのイノベーション創生を担ってきた「社会イノベーション協創センタ」と、価値創生を支える世界No.1技術の開発を担ってきた「テクノロジーイノベーションセンタ」を一体化して、「デジタルサービス研究統括本部」、「サステナビリティ研究統括本部」に再編し、DX及びGXによる価値創生を強化しました。将来への布石を担う「基礎研究センタ」、北米、欧州、中国、アジア及びインドの海外研究開発拠点とともにグローバル一体となってイノベーション創生を推進しています。
(3)イノベーション投資
当グループのさらなる成長に向けて、グループ全体のイノベーション投資を拡大します。
2023年4月に、コーポレートベンチャリング投資として新たに第3号ファンドを、これまでに設立した第1号、第2号ファンドの2倍に相当する300百万米ドルで組成し、Web3、生成AIをはじめとする最新のデジタルトレンドを牽引するスタートアップ企業への戦略的な投資を行います。また、先端研究については、2024中期経営計画の3年間累積で約1,000億円投資する予定です。これらの投資を通じて、将来の社会課題の解決に向けた破壊的イノベーションの創出、Lumada成長サイクルの実現による当グループの成長への貢献をめざしていきます。
(4)研究開発費
当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.0%にあたる2,901億円であり、セグメントごとの研究開発費及び研究開発費の推移は次のとおりです。
・デジタルシステム&サービス 541億円
・グリーンエナジー&モビリティ 652億円
・コネクティブインダストリーズ 910億円
・オートモティブシステム 506億円
・その他 30億円
・全社及び消去 259億円
・合計 2,901億円
(5)研究成果
当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。
①現場データの収集技術や生成AIを活用した「現場拡張メタバース」を開発(デジタルシステム&サービスセグメント、グリーンエナジー&モビリティセグメント、コネクティブインダストリーズセグメント)
エネルギーや交通分野の建設・製造・保全などの現場で、施工・製造などの現場関係者と設計・品証・管理部門などの現場外関係者の情報共有や合意形成を促進し、現場業務を迅速に進めるためのメタバース技術として、産業分野での活用を想定した「現場拡張メタバース」を発表しました。これまでに蓄積した多様な産業分野でのデジタルソリューション開発の知見に基づき、簡便な3Dスキャン技術などによりメタバース空間上に現場を迅速に再現し、これを現場データの蓄積や可視化のためのプラットフォームと位置づけて、デジタル技術に不慣れな顧客でも生成AIを含むAI技術によって、容易にデータを利活用することができます。当グループは、現場作業を効率化することでグローバルな社会インフラの持続可能な運用や管理に貢献していきます。
メタバースで再現された鉄道車両の内部
②気候変動に伴う浸水リスクを高速にシミュレーションする環境省の開発途上国向けWebサービス「FloodS」を構築(デジタルシステム&サービスセグメント)
環境省の請負事業のもと、アジア太平洋地域をはじめとする開発途上国での利用を想定した、浸水予測Webサービス「FloodS」を構築し、2023年11月30日から環境省が無償で提供を開始しました。本サービスは、河川氾濫、降雨、高潮による浸水状況の時間変化を高速にシミュレーションし、Webブラウザーの地図上に予測結果を表示するもので、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)のジャパン・パビリオン(日立ブース)にて紹介されました。今後も当グループは、デジタル技術を活用した官民連携での国際協力の取組などを通じ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成や、気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化に対する適応力強化など社会インフラの強靭化を支援していきます。
③新型特急車両N100系SPACIA Xが「iF DESIGN AWARD 2024」及び「2023年度グッドデザイン賞」を受賞(グリーンエナジー&モビリティセグメント)
鉄道車両N100系 SPACIA X(以下、「スペーシアX」といいます。)が「iF International Forum Design GmbH」が主催する「iF DESIGN AWARD 2024」及び公益財団法人 日本デザイン振興会主催の「2023年度グッドデザイン賞」を受賞しました。浅草と日光・鬼怒川エリアをつなぐ新型特急車両として2023年7月15日より運行を開始したスペーシアXは、「Connect & Updatable」をコンセプトに、従来の100系「スペーシア」が築き上げてきた伝統やブランド・イメージを維持・継承しながら、より進化した上質なフラッグシップ特急をめざし製作した車両です。車体色・車内照明に沿線観光地の文化的な色彩や造形を取り入れたデザインを採用しているほか、多様なニーズにお応えするため、コックピットラウンジ・コックピットスイートをはじめ、6種類のシートバリエーションを設えております。今回、こうしたデザインが評価され、受賞に至りました(東武鉄道㈱との共同受賞)。
スペーシアX 外観
コックピットスイート
コックピットラウンジ
スペーシアX ロゴ
④脱炭素社会の実現に向けた充電インフラ拡充及びEV普及に貢献する大容量マルチポートEVチャージャを製品化(コネクティブインダストリーズセグメント)
㈱日立インダストリアルプロダクツでは、電気自動車(EV)の急速充電を可能にする大容量マルチポートEVチャージャを、2023年10月に製品化しました。このマルチポートEVチャージャには、当グループが開発したEV充電技術が搭載されています。大容量かつマルチポート化により同時に充電できる台数を増加させることで、充電時間の短縮と充電渋滞の解消を実現、充放電制御技術により系統増強工事を必要としない系統混雑の緩和や、再生可能エネルギー電源接続量の増加、電圧制御の安定化が可能となります。加えて高効率電力変換技術によりEVが持つ分散型エネルギーリソースの価値を最大化させるものです。当グループは、グループ全体で連携することで脱炭素社会の実現に貢献していきます。
マルチポートEVチャージャ
⑤High-NA EUV世代のデバイス開発と量産におけるニーズに応えた高精度電子線計測システム「GT2000」を発売(コネクティブインダストリーズセグメント)
㈱日立ハイテクでは、2023年12月12日に高精度電子線計測システム「GT2000」を発売することを発表しました。本製品は、同社がトップシェアをもつCD-SEM(注1)の技術やノウハウを適用しながら、High-NA EUV露光(注2)向けに低ダメージ高精度計測及び超高速多点計測機能を、また先端半導体デバイスで適用が進む3Dデバイス構造向けに新規検出系を搭載したほか、量産段階で要求される測長値差のさらなる改善を実現しました。当グループの研究開発では、「GT2000」の最先端の加工ノードに対応した世界トップクラスの計測精度の実現に貢献しました。当グループは、顧客の多様なニーズに応え、最先端のモノづくりに貢献していきます。
(注)1.CD-SEM:ウェーハ上に形成された半導体の微細な回路パターンの線幅や穴径等の寸法を高精度に計測する装置
2.High-NA (Numerical Aperture) EUV (Extreme ultraviolet)リソグラフィー:波長が13.5nmの極端紫外線(extreme ultraviolet)で、従来よりもNA(開口数)を向上させたリソグラフィー用露光装置
高精度電子線計測システム「GT2000」
⑥オープンイノベーションによる社会課題解決とエコシステム構築に向けた取組(全社)
将来の社会課題解決に向けて、オープンイノベーションによる最先端技術開発とエコシステム構築に取り組みました。
(i) シリコン量子コンピューティング
量子コンピュータは,従来のコンピュータでは解けない問題を解くことができる新概念コンピューティング技術として期待されています。当社では、30年以上の歴史がある「日立ケンブリッジラボ」での量子物理基礎研究に加え、2020年からは国立研究開発法人科学技術振興機構のムーンショット型研究開発事業(グラント番号JPMJMS2065)を通してアカデミアと連携し、量子コンピュータの課題である大規模化に優位なシリコン量子コンピュータの研究を推進しています。2023年度は量子ビットを効率良く制御可能な「シャトリング量子ビット方式」を提案し、その効果を確認するとともに、大学共同利用機関法人自然科学研究機構分子科学研究所と量子オペレーティングシステムの共同研究を開始、大規模集積化に向けた研究を加速し、量子コンピュータの早期実用化をめざしています。
(ii) 日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボにてオープンフォーラムを開催
リサイクル・リユースの推進や再生可能エネルギーの導入拡大など、限りある資源の有効活用を通じて持続可能な世界を実現する取組が世界的に広がっているなか、当社と国立研究開発法人産業技術総合研究所は、2022年10月に「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立して以来、循環経済社会の実現に向けた研究を推進してきました。2024年2月に開催された第1回オープンフォーラムでは、循環経済へのトランジションに向けた国内外の情勢や同ラボにおける研究の成果を踏まえ、2050年の循環経済社会の姿とその実現に向けた技術的・制度的課題について議論しました。
(iii) デジタルオブザーバトリ研究推進機構のオープンフォーラムを共同開催
多様な社会・経済活動のデータ観測とその利活用による社会リスクの把握・予兆発見・回避、及びレジリエントな社会の実現を目的として、国立大学法人東京大学(以下、「東京大学」といいます。)に設立された「デジタルオブザーバトリ研究推進機構」では、2023年10月10日に設立記念フォーラムを共同開催しました。本機構において、当社は2つの研究グループを東京大学と共同推進しています。フォーラムでは、2050年を見据えレジリエントな社会の実現に向けて産学官がどのように連携すべきかについて、対談により課題解決に向けた方策などを議論しました。
(iv) 日立東大ラボがインペリアルカレッジロンドンとの合同ワークショップを実施
2023年11月2日に日立東大ラボ及びインペリアルカレッジロンドン(以下、「ICL」といいます。)の代表者がエネルギーシステムの将来及び国際的協力の在り方について議論しました。東京大学とICLは、2023年5月に当社立会いのもとで脱炭素技術やクリーンテック技術の創出に関する戦略的関係の構築に合意する趣意書を締結しており、本ワークショップは、こうした連携強化に関する具体的な取組の第一歩です。パネルディスカッションでは、今後の再生可能エネルギーの導入に対する日英それぞれの立場をもとに制度面や技術面での喫緊の課題、及びカーボンニュートラルへの移行に関する国際的な課題や協力の在り方について議論しました。
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
研究開発 | 317,383 | 316,280 | 290,145 |
売上対比 | 3.1% | 2.9% | 3.0% |
従業員の状況(抜粋)
提出会社の状況
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
従業員数 | 29,485名 | 28,672名 | 28,111名 |
平均年齢 | 42.7歳 | 42.9歳 | 42.9歳 |
平均勤続年数 | 19.3年 | 19.3年 | 19.1年 |
平均年間給与 | 8,969,979円 | 9,159,908円 | 9,359,857円 |
連結会社の状況
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
従業員数 | 368,247名 | 322,525名 | 268,655名 |
1人あたり売上高 | 27.9百万円 | 33.7百万円 | 36.2百万円 |