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味の素(株)

事業内容(抜粋)

当社グループは、当社、連結子会社111社及び持分法適用会社15社より構成され、調味料、栄養・加工食品、ソリューション&イングリディエンツ、冷凍食品、医薬用・食品用アミノ酸、バイオファーマサービス(CDMO)、ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)、更にその他の事業活動を行っております。

 当社グループの当該事業における位置づけは次のとおりです(☆印は持分法適用会社)。

<調味料・食品>

●製品区分
調味料
●主要な会社
味の素食品㈱
味の素AGF㈱
タイ味の素社
タイ味の素販売社
ワンタイフーヅ社
インドネシア味の素社
インドネシア味の素販売社
アジネックス・インターナショナル社
ベトナム味の素社
フィリピン味の素社
マレーシア味の素社
ナイジェリア味の素食品社
ブラジル味の素社
ペルー味の素社
☆プロマシドール・ホールディングス社

●製品区分
栄養・加工食品
●主要な会社
同上

●製品区分
ソリューション&イングリディエンツ
●主要な会社
欧州味の素食品社
味の素ベーカリー㈱
デリカエース㈱
☆ヤマキ㈱

<冷凍食品>
●製品区分
冷凍食品
●主要な会社
味の素冷凍食品㈱
味の素フーズ・ノースアメリカ社

<ヘルスケア等>

●製品区分
医薬用・食品用アミノ酸
●主要な会社
味の素ヘルシーサプライ㈱
味の素ヘルス・アンド・ニュートリション・ノースアメリカ社
上海味の素アミノ酸社

●製品区分
バイオファーマサービス(CDMO)
●主要な会社
味の素オムニケム社
味の素アルテア社
フォージ・バイオロジクス社 (注)1

●製品区分
ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)
●主要な会社
味の素ファインテクノ㈱

●製品区分
その他
●主要な会社
味の素ダイレクト㈱

<その他>

●製品区分
製造受託
●主要な会社
☆EAファーマ㈱

●製品区分
油脂
●主要な会社
☆㈱J-オイルミルズ (注)2

●製品区分
物流
●主要な会社
☆F-LINE㈱

●製品区分
サービス他
●主要な会社
味の素エンジニアリング㈱
㈱味の素コミュニケーションズ
☆NRIシステムテクノ㈱

(注)1.2023年12月21日(現地時間)付で、米国の遺伝子治療薬CDMOのフォージ・バイオロジクス・ホールディングス社の全持分を取得し、同社及びその子会社を連結子会社としております。その後、フォージ・バイオロジクス・ホールディングス社はその子会社のフォージ・バイオロジクス社に吸収合併されております。
(注)2.当社グループの中で、国内の証券市場に上場している会社は次のとおりです。
     東証プライム市場(提出日現在):㈱J-オイルミルズ

経営成績

2022年3月 2023年3月 2024年3月
売上高 1,149,370 1,359,115 1,439,231
営業利益 124,572 148,928 146,682
単位:百万円

財政状態

2024年3月
親会社所有者帰属持分比率 45.9%

セグメント情報

売上高構成比 セグメント利益率
調味料・食品 59% 13%
冷凍食品 20% 3%
ヘルスケア等 20% 8%
その他 1% 5%

設備投資(抜粋)

当社及び連結子会社では、生産部門の合理化及び品質向上を目的とした設備投資のほか、成長が期待できる製品分野への投資を継続的に行っております。

当連結会計年度の設備投資額の内訳は次のとおりです。

・調味料・食品 33,594百万円(食品生産設備の建設及び増強等)
・冷凍食品 8,826百万円(食品生産設備の建設及び増強等)
・ヘルスケア等 30,134百万円(医薬品生産設備の増強等)
・その他 1,053百万円(情報設備の更新等)
・全社 3,338百万円(情報設備の更新等)
・合計 76,947百万円

(注)設備投資金額には、無形資産への投資金額も含まれております。
なお、当連結会計年度において重要な設備の除却等はありません。

2022年3月 2023年3月 2024年3月
設備投資 74,102 69,850 76,947
減価償却費及び償却費 66,234 71,820 78,298
単位:百万円

研究開発(抜粋)

当社グループは2030年に向け、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業になることを目指します。ここでアミノサイエンス®とは、創業以来、アミノ酸のはたらきに徹底的にこだわった研究プロセスや実装化プロセスから得られる多様な素材・機能・技術・サービスを総称したものであり、また、それらを社会課題の解決やWell-beingの貢献につなげる、当社グループ独自の科学的アプローチであり、他企業が容易には真似できない当社グループの競争優位の源泉のひとつとなります。2030年に向け、フードシステムで繋がる健康栄養課題の解決と環境への貢献をセットで取り組み、「環境負荷を50%削減」と「10億人の健康寿命を延伸」の2つのアウトカムを実現していきます。また、当社グループの成長戦略では、中長期の成長が期待される市場において、当社グループならではの強みであるアミノサイエンス®を活かし、持続的に社会価値を提供できる、4つの成長領域(ヘルスケア、フード&ウェルネス、ICT、グリーン)にフォーカスし、既存事業の確実な成長と、事業モデル変革(BMX)による成長ドライブにより、2030年に向けて飛躍的な成長を目指します。

 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は28,766百万円です。

 また、当社グループが保有している特許は国内外合わせて約4,100件です。

 当連結会計年度の各事業区分における研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。

(1) 調味料・食品セグメント

 味の素㈱食品研究所が中心となり、味の素AGF㈱、味の素冷凍食品㈱、上海味の素食品研究開発センター社(中国)をはじめとする国内外のグループ会社の研究開発部門とも密接に連携し、味、香り・風味、食感など、「おいしさを構成するすべての要素」を俯瞰した技術開発、製品開発、及びそのアプリケーション開発を行っています。

 また、日本国内の少子化・高齢化、世帯人数の減少、健康志向といった課題に対し、「おいしさ」、「食へのアクセス(あらゆる人に栄養を届ける)」、「地域や個人の食生活」の3つを妥協しない基本姿勢とし、課題解決先進国の日本で磨いたモデルをグローバルに展開しています。グローバルな製品開発体制のもと、マーケティング力、ブランド力を強みに、各国生活者の嗜好とニーズに適応した調味料、加工食品の開発に継続して取り組んでいます。

<調味料(日本)>

 2023年度の調味料事業商品は、本格中華のご飯ものメニューが手軽に楽しめるメニュー用調味料として、麻(マー)・辣(ラー)を極め、中華調味料・香辛料等にこだわり絶妙なバランスで配合した、本格麻辣麻婆豆腐の素である「Cook Do®」<極(プレミアム)麻辣麻婆豆腐用>を発売しました。また、肉と野菜の栄養バランスの良いメイン和風おかず用調味料「Cook Do® きょうの大皿®」<豚バラほうれん草用>や<白菜とひき肉の帆立だし塩あんかけ用>を発売し、独自技術(特許出願中)によりフライパンで調理したような「Cook Do®」シリーズ初のレンジ調理用品種「Cook Do®」<レンジでつくる四川式麻婆豆腐用>も発売しました。

 フライパンひとつで簡単に具たっぷりのおいしい手作りパスタを楽しめる、日本初のキューブタイプのパスタ用調味料「パスタキューブTM」を発売しました。また、特別感のあるだし素材をたっぷり使った、いつものメニューがちょっと上質に仕上がり、料理が楽しくなるだし調味料「休日だし。TM」<えびだし><きのこだし><ほたて貝柱だし>を発売しました。さらに、「鍋キューブ®」では<鶏だしコク醤油>や<簡単おでん あごだし醤油>を、「スチーミー®」では<鶏ときのこのデミグラス煮込み用>や<鶏と玉ねぎのガーリックオニオン味>を、「Bistro Do®」では<鶏の濃厚チーズクリーム用>を開発し、それぞれラインアップを拡充・発売しました。

 人や社会・環境に配慮したエシカル消費が注目される中、アニマルウェルフェア(動物福祉)に対する意識が高まっており、それに対応した製品を選びたいという生活者のニーズも拡大しており、このような背景と多様化する生活者ニーズに対応することを目的に、大自然に囲まれた農場でのびのび育ったにわとりのたまごを使用した「平飼いたまごのマヨネーズ」を発売しました。

<調味料(海外)>

 事業展開している各国・地域の健康志向やライフスタイルの変化に対応した高付加価値製品のラインアップ拡充、統計解析技術を活用した生活者意識・行動解析による商品開発の高度化を推進しています。都市化やライフスタイルの変化が進む中、簡便で加工度の高い製品や健康価値を有する製品への需要も増加しています。当社グループの減塩技術、新規独自素材の導入により、メニュー用調味料製品(ペルー「Aji-no-mix®」)では、塩分値を従来製品より下げながらおいしさを向上させる製品を開発しています。

 今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化し、現地の生活者の嗜好に合うおいしさや栄養改善に貢献していきます。

<栄養・加工食品(日本)>

 2023年度の栄養・加工食品事業商品として、独自開発のコーンパウダーを新たに採用し、蒸したてのコーンの複雑味のあるコクと風味を強化し、さらに独自開発の乳原料によりミルクのコク・うま味の強化を実現した「クノール® カップスープ」<コーンクリーム><つぶたっぷりコーンクリーム>をリニューアルしました。また、「クノール® カップスープ」ブランドから14年ぶりとなる野菜素材の新品種として、味わいの異なる3種の豆(白いんげん豆・ひよこ豆・大豆)の豆本来の甘さと複雑味のあるコク・風味が楽しめる「クノール® カップスープ」<豆のポタージュ>を発売しました。また、袋のまま電子レンジで温めるだけで、豆と野菜を上質なスープでおいしく食べられ、カラダにとって重要なたんぱく質や食物繊維等の栄養が摂れる、具だくさんレトルトスープ「クノール® ポタージュで食べる豆と野菜」<クラムチャウダー>も発売しました。

 Z世代向けカップお粥「粥粥好日®」を本格的に販売開始しました。本開発にあたっては、Z世代の食へのインサイト・不満に着目し、SNSのデータからAI予兆分析・コンセプト開発を行い製品化しており、公益社団法人日本マーケティング協会が開催する「第15回日本マーケティング大賞」の「準グランプリ」を受賞しています。また、女性にとって不足が気になる鉄などが含まれる、日本初の女性のための完全栄養食(1食で必要な栄養素がバランスよく摂れる食品)として「One ALL」を発売しました。

<栄養・加工食品(海外)>

 加工食品では、事業を展開する各ローカル市場の慣習や食の嗜好、資源、原料、ステークホルダーを尊重し、アミノ酸のはたらきを活かして、おいしく減塩したり、たんぱく質等の栄養素を摂取したりできる製品を提供し、子供から大人まで、食とライフスタイルに起因する健康課題の解決に向けた取組みを進めています。

 今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化し、現地の生活者の嗜好に合うおいしさや栄養改善に貢献していきます。

<コーヒー類>

 スティックコーヒー市場では、《「ブレンディ®カフェラトリー®」スティック》から、濃厚シリーズ<濃厚ミルクティラテ>、及び、スイーツシリーズ3品種を発売し、《「ブレンディ®」マイボトルスティック》シリーズで6品種を発売しました。また、「ちょっと贅沢な珈琲店®」ブランドから、4つの産地のコーヒーを使用した《「ちょっと贅沢な珈琲店®」EVERBLACK®》を発売しました。機能性表示食品《「ブレンディ®」毎日の腸活コーヒー》シリーズからは、一袋で腸活が実践できるサイズの《「ブレンディ®」毎日の腸活コーヒー》袋80gを販売しました。

<ソリューション&イングリディエンツ>

 製品を水に溶かし肉や魚を10分つけ込むだけで、自然な食感とおいしさを保持したまま、しっとり食べやすいやわらかさにする調理料(食感改良剤)である業務用「やわらかしっとり調理料(速効タイプ)」を全国の高齢者施設給食・病院給食を中心としたユーザー向けに発売しました。

 調味料・食品セグメントに係わる研究開発費は、7,674百万円です。

(2) 冷凍食品セグメント

 味の素冷凍食品㈱研究開発センターと海外グループ会社の開発部門を中心に、現地の嗜好とニーズに適応した商品開発に取り組んでいます。さらに味の素㈱食品研究所との連携により、減塩等の健康価値の向上に取り組んでいます。

<冷凍食品(日本)>

 生活者のライフスタイルの多様化や喫食シーンの変化に応じて、食卓カテゴリーを中心としたラインアップを展開するとともに、メニュー提案や店頭訴求、体験型イベントの開催等の取組みを通じて、冷凍食品の提供価値向上に取り組んできました。2023年の製品として、「冷凍餃子フライパンチャレンジ」プロジェクトの成果として、フライパンへ張りつきにくく、簡単に羽根つきギョーザが焼けるようにした「ギョーザ」と、中具の増量でジューシーさと食べ応えがアップした「レンジでギョーザ」をリニューアルしました。この「冷凍餃子フライパンチャレンジ」はアジア最大級の広告祭「ADFEST 2024」にて最優秀賞を受賞しています。「米粉でつくったギョーザ」は一般社団法人日本子育て支援協会主催の「第4回日本子育て支援大賞2023」を受賞しました。また、Amazon社との共同企画で、Amazon社のプライベートブランドとして、高たんぱくと肉汁がジューシーなおいしさを兼ね備えた「SOLIMO PROTEIN ギョーザ 1kg袋」と、市販用商品「ギョーザ」の大容量(1kg)パック「SOLIMO ギョーザ 1kg袋」を、Amazon社で発売しました。

 直火焼豚と卵、白葱といったシンプルな具材と塩・胡椒や醤油をベースとした正統派な味つけで、さらに、独自の減塩技術により塩分を40%カットした「白チャーハン」を発売しました。また、おいしさに妥協することなく、塩分を40%カットした「おいしく塩分配慮ギョーザ」と「おいしく塩分配慮エビピラフ」も発売しました。㈱モスフードサービスが展開するモスバーガー監修で生活協同組合(生協)宅配向け製品として「レンジでテリヤキハンバーグ」を発売しました。また、醤油味をしみこませた若鶏の一枚肉を、備長炭でこんがり焼き上げた「若鶏もも焼き」を発売しました。

 味の素冷凍食品㈱は一般財団法人食品産業センター及び公益財団法人食品等流通合理化促進機構が共催する「第45回食品産業優良企業等表彰」のCSR部門及び食品産業部門<経営革新タイプ>の2部門で農林水産大臣賞を受賞しました。CSR部門では、停電、被災時の冷凍ギョーザの活用によるフードロス削減の取組みと、災害時の冷凍食品活用に関する情報発信の取組みが評価され、食品産業部門<経営革新タイプ>では、おいしさと減塩を実現した商品及び、高たんぱくの餃子の開発・発売の取組みが評価されました。また、九州工場でのヒートポンプ導入によるボイラー給水加温の実現やヒートポンプシステム内に熱交換器を入れたことによるメンテナンス簡素化の工夫が評価され、一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターが主催する「第20回ヒートポンプ・蓄熱シンポジウム」の令和5年度「ヒートポンプ・蓄熱システム運転管理等の改善事例」部門にて優秀賞を受賞しました。冷凍米飯専用工場である千葉工場では新しく導入された低炭素型炊飯ラインの本格稼働を開始しました。この低炭素型炊飯ラインはきめ細やかな炊飯管理が可能であるとともにエネルギー効率が従来比で約2倍となり、CO2排出量の削減に貢献します。

<冷凍食品(海外)>

 北米や欧州では、日本食人気の高まりやコロナ後の新しい生活様式により、特にリテール製品におけるアジアン冷凍食品市場が成長しています。今後も日本で培われた生産技術で簡便な調理、かつおいしさを提供していくとともに、健康機能を付与した製品を市場投入する等、製品の付加価値を常に向上させながら、更なる事業拡大に貢献していきます。

 冷凍食品セグメントに係わる研究開発費は、1,796百万円です。

(3) ヘルスケア等セグメント

 味の素㈱バイオ・ファイン研究所、食品研究所、味の素バイオファーマサービス社(米国、ベルギー)、味の素-ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社(ロシア)、味の素ファインテクノ㈱等の国内外の各グループ会社及びその技術開発部門とも連携し、世界中の人々の健康や生活に貢献するための商品及びソリューションを提供しております。

<医薬用・食品用アミノ酸>

 医薬用・食品用アミノ酸市場の伸びに対応するために、生産性の向上とコスト競争力の強化を目的とした発酵・精製プロセス開発と導入を継続して進めています。また、動物細胞培養用の培地事業は味の素ジェネクシン社(以下AGX社、現:味の素CELLiST Korea社)をプラットフォームとし、国内外のバイオ医薬品メーカーとの開発を継続、拡大しています。2023年6月、AGX社の株式25%をバイオ医薬品企業のGenexine社(韓国)より取得することに合意(当社グループのAGX社の保有株式は100%)、バイオ医薬用培地事業の中核となる開発・製造拠点として独資化することにより、当社グループの培地開発・製造のグローバル体制をさらに強化します。

<バイオファーマサービス(CDMO)>

 製薬メーカーからの原薬受託製造について、低分子医薬品原薬、高活性原薬(HAPI)、ペプチド/オリゴ核酸、タンパク医薬、抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)などの幅広い開発・供給体制の充実を図り、継続的な案件の受注に繋げています。

 低分子医薬品原薬製造においては、バイオ技術との融合による効率的かつ環境配慮型のプロセスの研究を進めています。タンパク質発現技術(「CORYNEX®」技術)においては、味の素アルテア社と連携して、グローバル大手製薬企業とバイオ医薬品の開発・製造支援事業「CORYNEX®」を推進しています。オリゴ核酸の受託製造においては、㈱ジーンデザインと連携して固相合成を活用した少量多品種製造から「AJIPHASE®」の液相合成技術による大量製造までの開発体制を構築し、味の素アルテア社、味の素オムニケム社との連携も深めながら、味の素バイオファーマサービス(CDMO)事業全体としてオリゴ核酸製造受託事業を推進しています。

 さらに、2023年度、米国の遺伝子治療薬CDMOのForge Biologics Holdings, LLC(以下「Forge社」という。)の全持分を約547百万米ドル(785億円)で取得し完全子会社化しました。遺伝子治療領域の中でも、安全性の高い、アデノ随伴ウイルス(Adeno-Associated Virus、以下「AAV」という。)を用いた治療方法は、米国を中心に100件以上の臨床試験が行われるとともに7つの新規医薬品が承認されており、今後の臨床試験数の増加とそれに伴う承認薬の増加によって、遺伝子治療薬CDMO市場の拡大が見込まれています。Forge社は、遺伝子治療薬製造バリューチェーン上の2つの要所であるAAV製造とプラスミドDNAの製造能力を有する遺伝子治療薬CDMOであり、また、高純度・高収率のAAVベクター生産技術を有しています。これにより、多数のバイオテック企業の初期臨床向けにGMP生産を行い、製造実績を確実に積み上げることで、ここ数年で急成長・急拡大を遂げており、今後も継続的に成長する見込みです。本買収により、次世代の事業領域に進出することで付加価値の高い事業モデルへの転換を進め、ヘルスケア領域の成長加速と高収益化を推進します。

<ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)>

 電子材料につきましては、味の素ファインテクノ㈱と共同で、次世代PC、データセンター向けサーバー、5G通信ネットワーク用途向けに「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」の開発を推進しています。また、国内外の主要ICT関連企業が設立したIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)Global Forumに参画し、未来の高速大容量通信社会の実現を目指し研究開発に取り組んでいます。

<その他>

-機能性栄養食品-

 スポーツ栄養科学研究に基づき、アミノ酸の独自配合によるスポーツサプリメントの開発に取り組んでいます。エネルギーの源となるクエン酸(現行品+1,200mg)と運動時に大切なアミノ酸(現行品+500mg)を増量し、当社独自のおいしさ設計技術®により飲みやすい味とした「アミノバイタル®クエン酸チャージ」<ウォーター>を発売しました。

-健康基盤食品-

 腰、膝、筋力のケアを内側から行う機能性表示食品「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<腰>、「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<膝>、「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<筋>の3品種を発売しました。「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<腰>は、当社独自の特許配合でセリンとEPAによる腰の違和感を緩和する日本初の機能性表示食品です。「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<膝>は、膝の違和感を軽減し、膝関節の動きをサポートするカツオ由来エラスチンペプチドを主成分とした製品です。「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<筋>は、運動との併用で日常生活に必要な筋力の維持に役立つHMB(β‐ヒドロキシ‐β‐メチル酪酸)とカルシウムを主成分とした製品です。

-パーソナルケア素材-

 アミノ酸由来の洗浄剤、湿潤剤、メークアップ素材を中心に研究開発を行っています。一般的なコラーゲンの約1,000分の1の分子量で消化・吸収されやすい超低分子コラーゲンを主成分とする、香粧品ブランド「ジーノ」で史上初となる美容ドリンク「ジーノ コラーゲンTM」を発売しました。

-飼料用アミノ酸-

 乳牛用アミノ酸製剤「AjiPro®-L」などスペシャリティ事業にフォーカスした研究開発を推進しています。

 ヘルスケア等セグメントに係わる研究開発費は、10,115百万円です。

(4) その他

 その他セグメントに係わる研究開発費は、355百万円です。

(5) 全社

 当社が想定する2030~50年の未来図からバックキャストし、グループの将来を担うと期待される領域での事業展開を見据え、関係する研究テーマを全社研究とし、資源を集中的に投資し、開発を進めています。

 全社研究では、味の素㈱食品研究所、バイオ・ファイン研究所が中心となり、国内外の研究機関と連携して進めている先端研究・技術を活用し、グループ内の各研究所とともに様々な事業に向けた新技術・独自素材の開発や、各事業分野に共通した基盤技術の強化に取り組んでいます。

 無形資産への投資も増強していきます。まず技術資産には、おいしさ設計技術®や先端バイオ・ファイン技術に代表されるアミノサイエンス®が挙げられます。今後、より一層顧客に寄り添うためにはデジタルのケイパビリティが欠かせないと考えています。顧客と技術をマッチングさせイノベーションを生み出す人財資産、顧客資産、それらの基盤となる組織資産への投資も増強していきます。

<オープンイノベーション>

 当社は、オープンイノベーションを積極的に推進しており、国内外の企業や研究機関等とリンクし、これまでにない新しい価値を創造することを重要と位置付けています。スタートアップとのパートナリング戦略構築や先端イノベーション情報収集をグローバルに推進するため、2024年1月に米国・シリコンバレー(カリフォルニア州パロアルト市)に拠点を新設しました。米国拠点設立は、次世代事業創出を通じた成長戦略の実現に向け、世界の先端イノベーション情報・活動に直接アクセスし、出資・協業・M&Aなどをスピーディに検討・判断するインテリジェンス機能(Search, Access&Partnering)を集中化させたイノベーション戦略チームのグローバル展開の一環となります。

 2023年度の主なオープンイノベーションは下記のとおりとなります。

-ヘルスケア領域-

 上述のとおり、米国遺伝子治療薬CDMOのForge社を完全子会社化しました。本買収により、次世代の事業領域に進出することで付加価値の高い事業モデルへの転換を進め、ヘルスケア領域の成長加速と高収益化を推進します。

 また、2018年から東京工業大学と共同研究を進めており、再生医療素材や抗体(バイオ医薬用)等に応用可能なたんぱく質を高分泌生産する微生物を短期間で取得するスクリーニング法の開発に成功しました。今後、東京工業大学が独自に開発したバイオセンサー技術「Quenchbody(Q-body)」と、当社の先端バイオ技術を組み合わせた手法の研究開発を推進することにより、有用なたんぱく質の高効率生産を図ります。

 当社は、摂食に関する困りごとに対応したAI搭載の献立支援サイト「ReTabell」(リタベル)を開設し、「ReTabell」サイト展開の一環として、医療関係者や介助者向けの食と栄養に関するサービスを創出するべく、第一三共㈱と協業基本合意書を締結しました。両社は、当社の「ReTabell」サイトと第一三共㈱の「Healthcare as a Service」を連携させることで、食と栄養のDXを推進します。

-フード&ウェルネス領域-

 当社は、まぜご飯の上におかずを詰めた一食完結型の宅配冷凍弁当「あえて、」を開発し、小売業特化型のDXソリューションプロバイダー企業である㈱イングリウッドとの協業により、サブスクリプションサービスによりおいしくて栄養バランスの良い宅配冷凍弁当の提供を開始しました。“食と健康のソリューションサービス”の実現を目指すことで、生活者のWell-being向上に貢献していきます。

 また、パーソナライズされた食体験を通じたWell-beingの実現を目指してレシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」の運営やリテールDX支援サービスの提供を行う㈱エブリーに出資をしました。今後、当社グループが保有するおいしさ設計技術®やアミノ酸研究による健康と栄養の知見、生活者の洞察から得られた食のインサイトを生かして展開してきた当社のレシピや献立の提案サービスに、㈱エブリーが持つレシピ動画メディアを通じた生活者接点、食品スーパー向けのデジタルソリューションを組み合わせることで、食と健康・栄養を軸としてパーソナライズされた新たな食体験サービスの構築を進めます。

 テクノロジーによる持続可能な食インフラの創造に取り組むスタートアップ企業のTechMagic㈱と資本業務提携に関する契約を締結しました。今回の資本業務提携に基づき、両社はフードテックにおける最先端技術や知見を活用し、フードサービス業界(外食・中食産業)における人手不足解消や生産性を改善する新しいソリューションを共創していきます。

 また、デバイス開発やデジタルツインコンピューティング、行動変容などのIOWN関連技術を有する日本電信電話㈱と、当社の食と健康を科学するアミノサイエンス®等を組み合わせた、食習慣や身体の状況を示す種々のデータ活用による、生活者のWell-beingの向上と健康寿命の延伸を実現させる仕組み作りに向け協業すべく、日本電信電話㈱と基本合意書を締結しました。食行動と生活習慣病リスク低減との関連性をパーソナル要因から見える化するための実証を開始し、その後、その関連に基づくレコメンドによる個々人のWell-beingと健康効果を最大化するための実証を進め、本取組みで得られた知見をデジタルツインコンピューティングなどに組み込み、サービスプラットフォームとして社会実装していくことを目指していきます。

 その他、東京大学と共同して、東京大学大学院医学系研究科に「人々の健康寿命の延伸とウェルビーイングの実現への貢献」に取り組む東京大学社会連携講座「栄養疫学・行動栄養学講座」を開設しました。今後、当社は東京大学とともに、栄養疫学、行動栄養学に基づく緻密な調査とデータ解析により、生活者が持つ健康への課題・理想を理解し、行動変化へのキーファクターを解明、これを当社の健康ソリューション開発に組み入れ、科学的根拠に基づく独自な課題解決方法を提供し、社会貢献を図っていきます。

-ICT領域-

 当社は、世界初の低炭素プリント基板を開発・製造するエレファンテック㈱への出資を行いました。エレファンテック㈱は、プリント基板製造における水・資源・エネルギー・CO2排出を大幅に削減する革新的な技術を開発するスタートアップ企業です。同社への出資をICT領域におけるCVC投資の1号案件として、中長期的な協業機会の検討を進めていきます。また、IT関連のスタートアップ企業向けに投資を行うベンチャーキャピタルのTranslink Capital社(米国)が設立したファンドへ出資を行いました。同社は、米国やアジア諸国に拠点を持ち、スタートアップ企業とアジアの大手事業会社との業務提携支援にも力を入れており、モビリティ・AI・ロボティクス・ヘルスケア・サステナビリティ・半導体などの幅広い分野に対する、事業開発と一体化した独自の投資手法により、スタートアップ企業の発掘や成長支援で高い実績を上げています。

-グリーン領域-

 独自のゲノム大規模構築技術を持つ東京工業大学発スタートアップ企業である㈱Logomixと、当社のアミノ酸生産に関する技術や知見との相互作用を通じて、カーボンニュートラルの実現に貢献するサステナブルなアミノ酸製法の共同開発を開始しました。

 また、二酸化炭素を栄養源とした微生物たんぱく質「Solein®」を開発し、シンガポールでの販売許可を取得したフィンランドのフードテック企業であるSolar Foods社と、戦略的提携に関する基本合意書を締結しました。Solar Foods社は、同社初となる「Solein®」の生産工場をフィンランドに建設中であり、「Solein®」の商業生産を開始する2024年の工場完工以降、販売許可を取得しているシンガポールでの商品開発及び市場性検証を行います。

 プラントベースフードの普及を推進するスタートアップ企業である㈱TWOより、当社ロイシン高配合必須アミノ酸全9種「Amino L40」をミックスした次世代型プラントベースプロテイン「2Protein」を発売しました。サステナブルなのにおいしくてヘルシーな新しい食のカタチ、”with Earth”フードを提唱し、プラントベース with ニュートリションの価値提供を強化していきます。

<DX関連>

 経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2023」に選定されました。経済産業省と東京証券取引所は、2015年より、経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を「攻めのIT経営銘柄」として選定しており、2020年からは、デジタルでビジネスモデルを変革し新たな成長・競争力強化につなぐDXに取り組む企業を「DX銘柄」として選定しています。2023年度は32社が選ばれ、当社は2022年度に続き2年連続の選定となりました。

<サステナビリティ>

 フードロス削減に関して、当社は、”\日本全国ご当地対抗!フードロス削減/「捨てたもんじゃない!TM」グルメグランプリ”において、全国47都道府県の自治体と連携し、ご当地食材を無駄なく活用する47レシピを開発しました。「食べてみたい」「応援したい」などを基準にした一般投票を募集し、全体で252,634票のうち72,022票を獲得した岩手の「わかめナムルおにぎり」がグランプリ(1位)となりました。フードロス削減につながるレシピの認知を高め、家庭で実践いただくことを目指す活動となります。

 また、当社は国際的な環境非営利団体であるCDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)より、2023年度の「気候変動Aリスト」に選定されました。これは、当社の気候変動に関する開示の包括性や先駆的な取組みなどが評価されたもので、当社のAリストへの選定は4年連続となります。CDPは、環境問題に高い関心を持つ世界の機関投資家や大手購買企業の要請に基づき、企業や自治体に対して、気候変動、水資源保護、森林保全等の環境問題への取組みの促進と情報開示を求める活動を行う非営利団体です。同団体は、世界の主要企業の環境活動に関する情報を収集・分析・評価しており、2023年には、136兆米ドル以上の資産を持つ740社以上の署名金融機関がCDPのプラットフォームを通じて環境への影響、リスク、機会に関するデータの開示を要請し、過去最多の約23,000社の企業がこれに応じました。今年度、気候変動に関する取組みと情報開示において最も優れた企業を選定する「気候変動Aリスト」に、対象となった約21,000社の企業より346社(うち日本企業109社)が選定されています。

 当社東海事業所では、2022年度のすべての購入電力の非化石証書を調達することで、同事業所における100%再生可能エネルギーへの切り替えが完了しました。今回の取組みにより、同事業所の年間購入電力量約25,000,000kWhがすべて再生可能エネルギーとなり、年間約10,000t相当の温室効果ガス削減効果を見込みます。また、当社九州事業所でも佐賀市の「グリーン電力証書」購入に合わせて、2023年度より当社九州事業所の購入電力量の全てを非化石化する取組みを開始しています。さらに佐賀市とは実質的な温室効果ガス排出量(スコープ1)削減にも取り組んでおり、当社九州事業所の廃水処理設備由来の液状バイオマスを、佐賀市下水浄化センターでのバイオマス発電資源として活用する事業を2023年度より開始しています。

 当社は、2030年度に温室効果ガス排出量(スコープ1・2の合計)を2018年度比で50%削減することに取り組んでいます。さらに2050年度までに温室効果ガス排出量を正味ゼロ(ネットゼロ)とするカーボンニュートラルを目標として設定しています。

 全社に係わる研究開発費は、8,823百万円です。

2022年3月 2023年3月 2024年3月
研究開発 24,842 25,867 28,766
売上対比 2.2% 1.9% 2.0%
単位:百万円

従業員の状況(抜粋)

提出会社の状況

2022年3月 2023年3月 2024年3月
従業員数 3,252名 3,335名 3,480名
平均年齢 44.4歳 44.6歳 44.5歳
平均勤続年数 20.2年 20.3年 19.9年
平均年間給与 10,465,012円 10,475,177円 10,727,465円

連結会社の状況

2022年3月 2023年3月 2024年3月
従業員数 34,198名 34,615名 34,862名
1人あたり売上高 33.6百万円 39.3百万円 41.3百万円

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