JFEホールディングス(株)
事業内容(抜粋)
当社は、JFEグループ全体の経営戦略の策定、グループ会社の経営とリスク管理、グループIR等の対外説明、グループ全体の資金調達等の機能を集約した、グループを代表する上場会社として、スリムなグループ本社機能を担う会社であります。
JFEグループは、「JFEスチール㈱」、「JFEエンジニアリング㈱」、「JFE商事㈱」の3つの事業会社により、事業分野ごとの特性に応じた最適な業務執行体制の構築を図っております。
なお、セグメント情報については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.セグメント情報」に記載しております。また、主な関係会社については、「4 関係会社の状況」に記載しております。
当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。
(1) 鉄鋼事業
JFEスチール㈱およびその関係会社において、銑鋼一貫メーカーとして各種鉄鋼製品の製造・販売を主力事業とし、鋼材加工製品、原材料等の製造・販売、ならびに運輸業および設備保全・工事等の周辺事業を行っております。
[主要製品等]
鉄鋼製品・半製品(熱延薄鋼板、冷延薄鋼板、表面処理鋼板、厚鋼板、形鋼、H形鋼、鋼矢板、レール、継目無鋼管、鍛接鋼管、電縫鋼管、角型鋼管、電弧溶接鋼管、電磁鋼板、ステンレス鋼板、棒鋼、線材、鉄粉、スラブ)、チタン製品、鋼材加工製品、化学製品、素形材製品、各種容器類、鉱業・鉱産品、鉄鋼スラグ製品、機能素材、合金鉄、各種耐火物、築炉工事、各種運送事業・倉庫業、土木建築工事、設備管理・建設工事、電気工事、電気通信工事、火力発電、ガス、建設仮設材、不動産、保険代理業、各種サービス業、各種コンピュータシステム、材料分析・解析、環境調査、技術情報調査、知的財産支援等
(2) エンジニアリング事業
JFEエンジニアリング㈱およびその関係会社において、エネルギー、都市環境、鋼構造、産業機械等に関するエンジニアリング事業、リサイクル事業および電力小売事業を行っております。
[主要製品等]
ガス・石油・水道パイプライン、LNG・LPG等各種タンク、太陽光・地熱・バイオマス等再生可能エネルギー発電設備、都市ごみ焼却炉、水処理システム、使用済みプラスチック等のリサイクルサービス、橋梁・港湾構造物、物流流通システム・エンジン・シールド掘進機・バラスト水処理システム等の産業機械、製銑・製鋼・ミニミル関連設備、EV(電気自動車)急速充電器等
(3) 商社事業
JFE商事㈱およびその関係会社において、鉄鋼製品、製鉄原材料、非鉄金属製品、食品等の仕入、加工および販売を行っております。
[主要取扱製品等]
鉄鋼製品(厚鋼板、縞板、熱延薄鋼板、冷延薄鋼板、電磁鋼板、表面処理鋼板、亜鉛鋼板、ブリキ、鋼管、特殊鋼管、棒鋼、H形鋼、軽量形鋼、一般形鋼、コラム、線材、ステンレス鋼、特殊鋼、スラブ)、溶材、鉄粉、鋼材加工製品、製鉄原材料・資機材、非鉄金属製品、金属スクラップ、高炉スラグ、化学製品、石油製品、紙製品、船舶、バイオマス燃料、土木建築工事、テールアルメ工法、缶詰製品、農畜産物、水産物、半導体製品、不動産等
経営成績
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
売上高 | 4,365,145 | 5,268,794 | 5,174,632 |
営業利益 | 400,192 | 225,086 | 287,003 |
財政状態
2024年3月 | |
---|---|
親会社所有者帰属持分比率 | 42.8% |
セグメント情報
売上高構成比 | セグメント利益率 | |
---|---|---|
鉄鋼 | 64% | 5% |
エンジニアリング | 10% | 5% |
商社 | 26% | 3% |
設備投資(抜粋)
当社および連結子会社等(共同支配事業を含む)は、鉄鋼事業、エンジニアリング事業および商社事業を中心に、高級鋼の生産能力増強、老朽更新、合理化等に加えて、設備の新鋭化、GX(グリーントランスフォーメーション)投資、DX(デジタルトランスフォーメーション)投資に重点をおいて設備投資を実施しております。当連結会計年度における設備投資の内訳は、以下のとおりであります。なお、下記金額に含まれる共同支配事業の設備投資金額は、当社グループの持分に相当する金額であります。
・鉄鋼事業 269,377百万円
・エンジニアリング事業 60,270百万円
・商社事業 20,875百万円
・調整額 △4,412百万円
・合計 346,111百万円
(注) 金額は有形固定資産、無形資産、使用権資産および投資不動産の合計数値であります。
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
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設備投資 | 340,935 | 325,632 | 346,111 |
減価償却費及び償却費 | 252,283 | 269,600 | 274,101 |
研究開発(抜粋)
当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、カーボンニュートラル達成に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための組織を設置し、ロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等を積極的に推進しています。
グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「グループ経営戦略会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。
今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。
当連結会計年度における研究開発費は43,838百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業40,200百万円、エンジニアリング事業3,637百万円であります。
なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。
(1)鉄鋼事業
鉄鋼事業では、社会の持続的な発展と人々の安全で快適な生活のために、「カーボンニュートラル」達成に向けたイノベーションの推進、および「デジタル」による製造基盤強化と新たな成長戦略の実行に向け、CO2削減に大きく貢献する超革新プロセス技術の検討、お客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術の開発を強力に推進しております。
以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。
<プロセス分野>
JFEスチール㈱は、デジタルツイン技術を活用した設備設計により、同社の西日本製鉄所(福山地区)のコークス炉において、省エネルギー効果とCO2削減効果のある新設備の技術開発を行い、このたび工程運用を開始しました。本件は、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)助成金事業に採択されています。製鉄業においては、製銑工程でのエネルギー利用とCO2排出割合が大きく、高効率運転と均質で高品質な原料の製造は、カーボンニュートラルの実現に向けて重要な役割を担っています。同社の西日本製鉄所(福山地区)の5コークス炉D団においては、仮想空間上に構築したコークス炉のデジタルツインの情報から、部分的に燃焼用の空気の不足による燃料の未燃が発生し、燃料原単位に影響を与えていることを解明しました。従来、炉内の空気量の調整は全体量で行っていましたが、デジタルツイン技術を用いたことで、部分的に空気供給量を制御する機構が高効率操業に有効であることを確認でき、更に燃焼最適化のための補助空気量の算出にも成功しました。部分燃焼最適化の実現により、従来比で燃料使用削減量約5%、CO2排出削減量6,600トン/年の効果を達成しました。
また、JFEスチール㈱は最新のDX・ロボティクス技術を活用し、グラインダー研削作業を自動で行うロボットシステムを知多製造所の小径シームレス管工場に導入しました。同社が独自開発した「ティーチングレス技術」により、手入れ工程において微細なきず等の不良部位検出から研削作業までをロボットが自動で行うことが可能となりました。今後は、本システムを他工場・他製造プロセスにも展開していくことで、より安全で快適な職場環境を提供し、生産性の向上につなげていきます。
更に、JFEスチール㈱は最新のデータサイエンス技術により、原料ベルトコンベアの設備異常および操業異常を自動監視するシステムを開発し、同社の東日本製鉄所(千葉地区)と西日本製鉄所(倉敷地区)の原料ヤードに導入しました。今後は、本システムを全地区に展開していくことで、原料ヤードにおける搬送トラブルの未然防止を通じた更なる生産性向上と操業の安定化を推進します。
<製品分野>
石油メジャー等が参画する「海洋石油・天然ガスに係る日本財団とDeepStarの連携技術開発助成プログラム(以下、「本プロジェクト」)の水素関連技術開発において、JFEスチール㈱製品の電縫鋼管(マイティーシーム®)を用いた、高圧水素輸送用ラインパイプ材の特性評価に関する研究開発が採択されました。本プロジェクトにおいて、DeepStarメンバーである石油メジャーのExxonMobil社(米国)、TotalEnergies社(仏国)と連携し、高圧水素輸送用の鋼管材料等の評価基準および方法を確立し、世界初の高圧水素輸送向けパイプラインの実用化を目指します。今回の研究開発は、JFEスチール㈱の東日本製鉄所(千葉地区)にあるスチール研究所で、高圧水素パイプラインに求められる必要特性についてECA技術等を用いた研究を実施するとともに、鋼管材料から切り出した材料試験片を用いて、高圧水素環境試験での性能評価を行います。石油メジャーのニーズを踏まえた技術開発を推進し、各社と共同で脱炭素化に貢献するべく、連携強化を図っていきます。
また、JFEスチール㈱の「JFEトポロジー最適化技術」が、いすゞ自動車㈱(以下、「いすゞ」)の「新型エルフ」のトラックの乗車部分であるキャブ設計手法として採用されました。両社は共同でキャブの構造最適化に取り組み、「JFEトポロジー最適化技術」を用いた設計により、室内空間の最大化と車体の軽量化の両立を達成しました。本技術はこれまで普通乗用車や軽自動車に採用されてきましたが、トラックのような商用小型貨物車への採用は今回が初となります。新型エルフのフルモデルチェンジに伴い、居住性を向上させるために室内空間を最大限広げる一方で、車体を軽量化するため、いすゞは「JFEトポロジー最適化技術」を採用し、両社が協業で主要骨格の新設計を実施いたしました。新部品形状の設計および高効率接合位置の検出のためにトポロジー最適化からなるCAE技術を駆使した結果、前モデルに対し大幅な軽量化を達成いたしました。なお、本成果については、いすゞより2023年7月の自動車技術会フォーラム「車体の最新技術2023」にて発表されています。
更に、JFEスチール㈱は橋梁等の鋼構造物の耐久性を高める新たな溶接施工法「FLExB®溶接」を開発しました。本溶接施工法は、2023年5月に国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録されました。今回、新しく開発したFLExB®溶接は、ガセットプレート(補強用鋼板)と呼ばれる接合部材の短辺側を先に溶接し、その短辺溶接部を挟み込むように長辺側を溶接します。更に溶接ビードを延ばすことで疲労損傷を抑制できる技術です。これにより、溶接部の疲労き裂の起点になる箇所の応力レベルを軽減し、疲労き裂の発生を遅らせるとともに、疲労き裂の進展を抑えることで、疲労損傷への耐久性を高めることを実現しました。FLExB®溶接による耐久性向上の効果により、従来よりもJSSCの疲労等級が1等級向上しました。従来の溶接施工法より作業を単純化できることに加え、溶接施工後に疲労強度向上を目的として実施していた表面処理等の作業工程を省略でき、施工能率の向上にも寄与します。
<表彰>
JFEスチール㈱が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、「超大型コンテナ船の建造を実現した極厚高強度鋼板の開発」の成果が認められ、令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。同社の同賞受賞は6年連続となります。また、「自動車の燃費と衝突安全性を向上する超高強度薄鋼板」の成果が認められ、令和5年度全国発明表彰経済産業大臣賞を受賞しました。
また、JFEスチール㈱が開発した「サイバーフィジカルシステムによる高炉操業の自動化」が、第70回(令和5年度)大河内記念技術賞を受賞しました。更に、「鋼と炭素繊維強化樹脂層を複合させた超高圧水素蓄圧器の開発」の成果が認められ、環境省主催の令和5年度気候変動アクション環境大臣表彰を開発・製品化部門(緩和分野)で受賞しました。
(2)エンジニアリング事業
エンジニアリング事業では、「Waste to Resource」、「カーボンニュートラル」、「複合ユーティリティサービス」、「基幹インフラ」の4事業分野にそれらを支える技術基盤である「DX」を加えた5つを重点分野と位置付け研究開発を推進しています。当連結会計年度は、特に「カーボンニュートラル」を最注力分野として重点的な投資を実施しました。具体的には、急拡大する日本の洋上風力発電事業の発展に大きく貢献するべく洋上風力のモノパイル基礎の製造技術に取り組む他、膜分離法と物理吸着法のハイブリッド型を用いた低消費エネルギーCO2分離回収技術等、脱炭素社会の実現に貢献する新規技術開発に取り組んでおります。
また、JFEエンジニアリング㈱は積水化学工業㈱と共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/廃棄物・資源循環分野におけるカーボンニュートラル実現」を受託し、廃棄物から化学品原料を製造する「廃棄物のケミカルリサイクル(Waste-to-Chemical)プロセス」の確立に取り組んでいます。本開発は、JFEエンジニアリング㈱が開発中である幅広い廃棄物をガス化し高品質な精製合成ガスを安定供給する技術と、積水化学工業㈱が開発中である廃棄物由来の精製合成ガスからエタノールを製造する技術を組み合わせたプロセスです。化学品合成に必要な水素も自らのプロセス内で生成するため、水素ネットワークの構築を待たずに早期の社会実装が期待される革新的な技術となります。
JFEエンジニアリング㈱が開発した商品・技術は社外からも高く評価されております。基幹インフラ分野においては、「簡便な杭式桟橋の補強工法」の成果が認められ、第25回国土技術開発賞に入賞しました。
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
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研究開発 | 39,658 | 43,018 | 43,838 |
売上対比 | 0.9% | 0.8% | 0.8% |