旭化成(株)
事業内容(抜粋)
当社グループは、連結財務諸表提出会社(以下、当社という)及び関係会社353社から構成されています。その主な事業内容はセグメントの区分のとおりであり、当社及び主な関係会社の当該事業に係る位置付けとセグメントとの関連は次のとおりです。
<マテリアル(関係会社167社)>
・環境ソリューション事業(スチレンモノマー、アクリロニトリル、ポリエチレン、ポリスチレン、合成ゴム、リチウムイオン電池用セパレータ(湿式・乾式)、鉛蓄電池用セパレータ、中空糸ろ過膜、イオン交換膜 等)
・モビリティ&インダストリアル事業(繊維(自動車関連)、エンジニアリング樹脂、塗料原料 等)
・ライフイノベーション事業(デジタルソリューション、コンフォートライフ)(電子材料、ミックスドシグナルLSI、ホール素子、深紫外線LED、繊維(衣料・産業資材他)、食品用ラップフィルム、各種フィルム・シート、医薬・食品用添加剤、火薬類、金属加工品 等)
・マテリアル共通
<住宅(関係会社95社)>
・住宅事業(建築請負(戸建・集合住宅)、不動産関連、リフォーム、その他住宅周辺事業、米国・豪州住宅事業 等)
・建材事業(軽量気泡コンクリート(ALC)、断熱材、基礎杭、構造資材 等)
<ヘルスケア(関係会社66社)>
・医薬事業(医療用医薬品、診断薬 等)
・医療事業(血液透析・アフェレシス(血液浄化療法)関連機器、ウイルス除去フィルター、CRO事業、CDMO事業 等)
・クリティカルケア事業(心肺蘇生関連(AED、医療従事者向け除細動器)、着用型自動除細動器、睡眠時無呼吸症治療・診断機器 等)
<その他(関係会社25社)>
エンジニアリング事業
各種リサーチ・情報提供事業
人材派遣・紹介事業 等
経営成績
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
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売上高 | 2,461,317 | 2,726,485 | 2,784,878 |
営業利益 | 202,647 | 128,352 | 140,746 |
財政状態
2024年3月 | |
---|---|
自己資本比率 | 49.5% |
セグメント情報
売上高構成比 | セグメント利益率 | |
---|---|---|
マテリアル | 45% | 3% |
住宅 | 34% | 9% |
ヘルスケア | 20% | 9% |
その他 | 1% | 6% |
設備投資(抜粋)
当社グループ(当社及び連結子会社)は、長期的に成長が期待できる製品分野における新規投資、能力拡大投資に重点を置くとともに、製品の信頼性向上やコストダウンを目的とした合理化、情報化、維持投資を行っています。
当連結会計年度のセグメントごとの設備投資額(有形、無形固定資産(のれん除く)検収ベース数値)は次のとおりです。
・マテリアル 111,464百万円
・住宅 25,786百万円
・ヘルスケア 32,186百万円
・その他 1,113百万円
・全社及びセグメント間取引消去 13,162百万円
・合計 183,712百万円
当連結会計年度は、「マテリアル」セグメントを中心に、競争優位事業の拡大投資及び改良・合理化投資等1,837億円の投資を行いました。
セグメントごとの主な投資内容は以下のとおりです。
・マテリアル(Environment & Energy:リチウムイオン電池用セパレータ「ハイポア™」の生産能力増強、塗工能力増強、水力発電所改修、合理化、情報化、維持更新等)
・住宅(Home & Living:合理化、情報化、維持更新等)
・ヘルスケア(Health Care:ウイルス除去フィルター「プラノバ™」組立工場建設、バイオ医薬品CDMOのBionova社の能力増強、合理化、情報化、維持更新等)
・その他(合理化、情報化、維持更新等)
・全社(基幹システム構築、合理化、情報化、維持更新等)
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
設備投資 | 186,644 | 174,873 | 183,712 |
減価償却費 | 119,738 | 138,956 | 152,593 |
研究開発(抜粋)
当社グループにおける研究開発活動は、長期視点で次世代の事業を創出するためにグループ横断的に中長期的なテーマを開拓するコーポレートの研究開発機能と、事業競争力の強化に必要なテーマを深掘りする各事業の研究・技術開発機能の体制で推進しています。当社及び連結子会社の研究費、主たる研究開発活動の概要及び成果は以下のとおりです。
・マテリアル 43,834百万円
・住宅 3,565百万円
・ヘルスケア 47,783百万円
・その他 137百万円
・全社 11,278百万円
・合計 106,597百万円
1 コーポレートの研究開発における基本方針
(1) ミッションとあるべき姿
コーポレートの研究開発のミッションを以下のとおり定め、研究開発におけるコア技術の育成・獲得・深耕及びイノベーションによる新事業創出を当社グループの成長戦略の両輪として、様々な社会課題を成長のエンジンへ転換し、持続的な成長を実現する原動力とすることを、あるべき姿として目指していきます。
(コーポレートの研究開発のミッション)
・コア技術の育成・獲得・深耕(差別性・優位性の高い製品・サービス開発のためのコア技術の深化及び外部技術獲得・育成)
・イノベーションによる新事業創出(自社の研究開発のマネジメントの強化に加え、CVCやオープンイノベーション等、社外との連携も加速)
・技術基盤機能の深化と進化(当社グループを支える技術基盤機能の深化と進化)
(2) 重点戦略分野等
重点戦略分野として、「脱炭素・水素(カーボンニュートラル)」「膜・セパレーション技術」「化合物半導体」の3分野を設定して研究開発テーマに資源配分を進めています。また、これらを含めた研究開発を進めるにあたっては、オープンイノベーションを通じて共創による開発を進めるとともに社会実装を加速し、さらに、DXや知的財産権のフル活用により無形資産の価値の最大化を図り、新事業創出による持続可能な社会への貢献を目指していきます。無形資産の価値の最大化については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> v 経営基盤の強化 ■ 無形資産の最大活用」もご参照ください。
2 新事業創出に向けた研究開発の加速のための取り組み
(1) CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活動
当社グループは、2008年に日本国内でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立し、2011年から米国を拠点として、スタートアップ企業への投資を通して最先端技術・ビジネスを獲得し、新事業の創出を行ってきました。現在は、米国、ドイツ、中国の拠点でグローバルな活動の幅を広げ、3年間で7,500万ドルの投資枠を設けて、1社当たり500万ドルまでの投資に関しては本社での決裁を不要とするなど、スピーディな意思決定、手続きができるような仕組みを運用しています。
2023年4月には、「Care for Earth」投資枠を設定し、水素、蓄エネルギー、カーボンマネジメント、バイオケミカルなどの環境分野の課題解決に取り組むアーリーステージのスタートアップ企業を対象に、2027年度までの5年間にグローバルで1億ドルの出資を実施していく予定です。この投資枠を使い、同年12月にはアニオン交換型の水電解装置用の膜を開発するIonomr Innovations Inc.(本社:カナダ・バンクーバー市、以下「Ionomr社」)への出資参画を決定しました。詳細は「3 主な研究開発活動 (1) 当社グループ全体 ② 膜・セパレーション技術の開発」をご参照ください。
(2) オープンイノベーションによるミッシングパーツの取り込み
研究テーマの探索/研究開発/事業開発のそれぞれの段階で、アセットライト、高付加価値化、スピードアップの実現へ向けて産官学のパートナーと連携を進めています。外部のオープンイノベーションプラットフォームも積極的に活用し、例えば、サステナブルな価値の提供を目指すオープンイノベーションプログラム「Asahi Kasei Value Co-Creation Table 2023」を昨年度に引き続き進めており、従来の商流にとらわれない新たなパートナーとの共創を加速しています。
(3) 社内基盤の強化(事業開発視点を重視した独自のアジャイル型ステージゲート管理や、オープンイノベーション文化の醸成)
研究開発テーマのポートフォリオ管理や適切な資源配分を目的として、アジャイル型ステージゲート制度を導入しています。探索、研究、開発、事業開発、事業化準備の各ステージの要件や、各研究開発テーマのステージ上の位置付けを明確にし、研究開発テーマを次のステージに移行させる判断にあたっては、技術視点のみならず、顧客価値視点を重視し、ビジネスモデル、事業戦略、特許戦略、品質保証、製造、環境安全対応等、ステージごとに必要な審査を強化しています。さらに、審査プロセスを通じて、研究開発部門の内外のメンバーから多面的な助言を得ることや、各事業との連携を深め、既存事業との関係性の整理・明確化、パートナー連携の活用強化や出口戦略の多様化に取り組んでいます。また、研究開発に関わる高度専門人材があふれ出る仕組みの構築と風土の醸成へ向けて、働き方やDE&I、キャリア支援、組織の支援や個の支援の各場面において、挑戦・成長を促して多様性を拡げるためのキャリア施策とマネジメント施策を進め、社内での対話を通じた共創・イノベーションを目指しています。
3 主な研究開発活動
(1) 当社グループ全体(「全社」)
① 炭素・水素循環型社会実現への貢献
i バイオエタノールからのバイオ化学品製造の実証
バイオエタノールからバイオ基礎化学品を製造するプロセス開発・設計を進めており、4~5万トン規模のプラントについて2027年稼働を目標に検討を進めています。GHG排出量を削減し、自社基礎化学品や誘導品のCFP低減を推進するとともに、ISCC認証やバイオマスバランスアプローチを適用したバイオ化学品サプライ事業を目指し、実証実験を通じたデータ取得や技術のパッケージングを実施していきます。
ii アルカリ水電解システムの開発
カーボンニュートラルを実現するための取り組みとして、再生エネルギーを活用したアルカリ水電解システムの開発を実施しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造」に対し、2021~2030年度を事業期間と想定した「大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発及びグリーンケミカルプラントの実証」と題したプロジェクトとして、福島県浪江町での10MW級アルカリ水電解システム及び中規模グリーンケミカルプラントの検証や、マレーシアでの60MW級アルカリ水電解システム及びグリーンケミカルプラントの実証を、日揮ホールディング株式会社と進め、水素を用いたエネルギー貯蔵・利用の実用化に向けた技術開発事業の拡充・強化を行っています。マレーシアのプロジェクトは「(2) 「マテリアル」セグメント 環境ソリューション事業」もご参照ください。また、同基金の助成を受けて、多様な実証実験が可能な水素製造用のアルカリ水電解パイロット試験設備が2024年5月に当社川崎製造所にて本格稼働しました。同設備に組み込む電解セルは商業機と同じサイズの設備であり、部材の性能や長期耐久性といった開発品の評価試験から、水電解システム全体の信頼性を確認することができるため、当社の水電解技術の開発と事業化を大きく加速させていきます。
iii CO2ケミストリー技術、CO2分離回収システムの開発
当社グループでは、CO2を原料に使用するポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスを世界で初めて確立し、有毒な化合物(ホスゲン)を使用しない、CO2を原料に代替することによる地球環境負荷の低い製法で、社会へ新たな価値を提供してきました。また、2018年に実証が完了したCO2を原料とするジフェニルカーボネート製造プロセスや、現在開発中であるCO2誘導体利用技術のイソシアネート製法など、更なる展開を進めていきます。加えて、ゼオライトを吸着材として用いたCO2分離回収システムの開発も進めており、2022年9月には当社と岡山県倉敷市とでバイオガス精製システムの性能評価、実証を行う契約を締結し、ゼオライト系CO2分離回収システムの実証開始へ向けて取り組んでいます。
② 膜・セパレーション技術の開発
当社グループのコア技術である相分離技術をベースに膜・セパレーション技術の研究開発を進めることにより、既存事業の強化に加えて、新たな事業展開を加速しています。
i バイオプロセスFO(正浸透)膜
医薬品製造プロセスで使用されるバイオプロセスFO(正浸透)膜においては、FOシステムとMDシステムのハイブリッドにより、非加熱・非加圧で濃縮できるため医薬品の変性を防ぐとともに、凍結時間の短縮やエネルギー負荷の低減の実現を通じて医薬品製造プロセスを革新するものであり、既に複数の顧客候補と実証実験に取り組んでいます。
ii アニオン交換型の水電解装置用の膜
水電解にはアルカリ水電解型を含めていくつかの方式がありますが、性能・コストの両面で大幅な改善が期待される次世代膜として、アニオン交換型の水電解装置用の膜(Anion-Exchange Membranes、AEM)への展開にも取り組んでいます。2023年12月にCVCの「Care for Earth」投資枠で出資参画したカナダのIonomr社が手掛けるアニオン交換型の水電解は、再生可能エネルギーを利用する際に特に求められる負荷変動対応で優れる他、希少金属を使わないことからコスト面でのポテンシャルも期待されています。今後、研究開発面での同社とのコラボレーションを進め、AEMに関する知見を蓄えるとともに、当社が保有する知見・技術を活用し、同社の膜の性能向上も支援していきます。
③ 化合物半導体の開発(深紫外LED/深紫外レーザーや窒化アルミニウム(AlN)系材料の開発)
i 深紫外LED/深紫外レーザー
現在、殺菌、ウイルス不活性化に最も効果の高い、波長265nmを高出力で実現できる深紫外LEDの展開を実施していますが、更なる高出力化に向けた研究や、基板の大口径化や高品質化にも継続して取り組んでいます。また、名古屋大学との協力により、深紫外レーザーの開発を行っており、2019年にはUV-C帯の世界で最も短波長のレーザー発振に成功しました。また、その技術をさらに進化させ、2022年11月には深紫外半導体レーザーの室温連続発振に世界で初めて(※)成功し、電池駆動も可能なレーザー発振の成功により、実用化に向けて飛躍的に前進しています。今後は、ガス分析等センシングへの応用、局所殺菌、DNAや微粒子などの計測・解析といった、ヘルスケア・医療分野への応用の検討を進めていきます。
ii 窒化アルミニウム(AlN)系材料
窒化アルミニウム(AlN)系材料は、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも電力損失が小さく、耐圧が高いポテンシャルを有することから、エネルギー効率に優れ、次世代のパワーデバイスへの適用やRF(高周波)アプリケーションへの展開が期待されています。2023年8月には当社グループのCrystal IS, Inc.が4インチ(直径100mm)のAlN単結晶基板の製造に世界で初めて(※)成功しました。各種デバイス生産能力・効率の大幅な向上への貢献を目指してさらなる改善を行っていきます。また、名古屋大学との協力により、同年12月には電流-電圧特性、電圧-容量特性、電流注入による発光特性において非常に良好な特性を示す、理想的なAlN系の「pn接合」の実現に世界で初めて(※)成功しました。pn接合は半導体デバイスの根幹をなす基本構造であり、本成果はAlN系デバイスの今後の発展の礎となるものであり、産学連携をさらに強化していきます。
※これまでの学会発表や論文などから当社グループ調べによるもの
④ セルロースナノファイバー系材料の開発
バイオ由来のセルロースナノファイバーと、樹脂又は繊維をナノコンポジット化することで、素材の高機能化と環境技術を両立し、サステナビリティに貢献する製品の実現を目指しています。当社グループでは、セルロースナノファイバーからセルロースナノファイバーコンポジットまでの一貫製造プロセスを保有していることの特長を活かし、低コスト、低環境負荷、高機能を満たす製品開発及びマーケティング活動を通じた事業化の検討を進めています。2023年6月には、プラスチックの合成繊維にセルロースナノファイバーを10質量%混ぜて成形した材料で、一般的なフェルトの防音材と比べて厚さが40分の1の0.5mmという薄さながら同等の防音性能を実現しました。開発品は幅広い周波数領域で吸音かつ遮音性能を併せ持ち、薄膜でも立体的に成形できる特徴があります。モーターやコンプレッサーなどの形状に合わせたケースに成形し、騒音源を囲うような使い方を想定し、今後、自動車向けの防音材としての製品化を目指していきます。
(2) 「マテリアル」セグメント
・ 環境ソリューション事業
セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工や塗工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー・コストダウン」「環境負荷軽減」「再生可能エネルギーの普及」に向けた開発を推進しています。電気自動車等の環境対応車、電子機器、電動ツールや蓄電システム用途に展開するリチウムイオン電池用高機能セパレータ等の環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。
イオン交換膜事業では製造型リカーリングを推進しており、「メンテナンス最適化」、「トラブルレス」、「運転条件最適化・簡易化」の顧客課題をソリューション開発により解決するため、顧客とのデータ基盤の構築やシステムの構築に向けた取り組みを行い、ソリューション提案を推進しています。
技術ライセンス事業では、脱炭素社会の実現に向けてCO2を原料としたポリマー製造技術を確立し、ライセンス事業を推進しています。CO2を原料とした化学品には、エンジニアリング樹脂に使用されるポリカーボネート、リチウムイオン電池用電解液としてエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートがあります。脱炭素原料の世界的な需要の高まりからグローバルに多くの引き合いを受けており、事業の拡大に向けて体制の強化を進めています。
水素事業基盤の構築へ向けて、NEDOのグリーンイノベーション基金(GI基金)事業として、マレーシアにて、日揮ホールディングス株式会社やPetronasグループのGentari社とともに、60MW級アルカリ水電解システムにより年間8,000トン程度の水素をケミカルプラントへ供給する実証に取り組みます。変動運転のためのマルチモジュール制御技術の開発や、運転最適化のための統合制御システムの開発を進め、早期事業化を図ります。
・ モビリティ&インダストリアル事業
機能材料事業では、自動車構造部材を重点マーケット領域と定め、自動車の更なる軽量化を実現するため、ポリアミド66とガラス繊維織物による連続繊維強化複合材料「レンセン®」の開発が進捗しています。また、3Dプリンタ―用フィラメントとして変性PPE「ザイロン®」を原料とするフィラメントを開発し、北米にて試験販売を開始しました。当社独自の樹脂CAE(Computer Aided Engineering)技術を駆使して、部品設計まで手掛けたソリューションを提供し、新規用途開拓と海外展開を加速していきます。環境負荷低減に貢献する取り組みでは、自動車内装材事業における人工皮革「Dinamica®」のサステナビリティ強化や米国スタートアップNFWとの非石化由来レザーの共同開発など、バイオマス由来原料、リサイクル原材料の積極的な活用を検討しています。
・ ライフイノベーション事業
電子材料事業では、微細化、高集積化、高速化を支える最先端半導体・実装プロセス革新に向け、感光性ポリイミド「パイメル™」や感光性ドライフィルム「サンフォート™」など先進・独自の技術による高付加価値製品の展開を進めています。特にDXの加速によって、知財データの活用や、マテリアルズインフォマティクス(MI)などによる、開発競争の強化を図っています。自律成長に加え、技術導入等による価値創出を模索し、電子部品事業との融合も図り、デジタル社会で求められるニーズに対し特徴ある部品、部材、ソリューションを展開していきます。
電子部品事業では、デジタル社会の進展に対応し、「音」「磁気」「ガス」のセンシング技術を主軸に、省エネ・健康・快適に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、センサ技術、アナログ信号処理技術、アルゴリズム技術等を融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型ビジネスへの展開にも積極的に取り組んでいきます。特に電気自動車(EV)化に伴うパワー系のセンシングソリューション、またサウンドマネジメントソリューションのトレンドを的確に掴んだ、特徴のあるソリューション提案を進めています。
また、生活者の視点と健康で快適な暮らしへの貢献を意識し、新事業領域として、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイルの開発などにも取り組んでいます。
繊維事業では、アパレルと衛生材料を重点マーケット領域と定め、キュプラ繊維「ベンベルグ®」やポリウレタン弾性繊維「ロイカ®」を軸に、独自性を活かし、かつ、サステナビリティに対応した付加価値の高い製品創出や生産プロセス革新のための研究開発を進めています。
(3) 「住宅」セグメント
住宅事業では、「ロングライフの実現」を支えるコア技術について、重点的な研究開発を続けています。シェルター技術については、安全性(耐震・制震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。また、住ソフト技術については、都市部における二世帯同居やシニア等の住まい方についての研究を推進するとともに、住宅における生活エネルギー消費量削減と人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる、環境共生型住まいを実現する技術開発に注力しています。
建材事業では、「良質空間を追求し、グッド・マテリアルを通じて、未来を見据え新たな価値を創造する」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、杭基礎、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。
(4) 「ヘルスケア」セグメント
医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、免疫領域(SLE、移植等)、整形外科領域(骨、疼痛等)及び救急領域を中心に、有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOL(Quality of Life)向上を図ることを目指して、積極的な研究開発を行っています。創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。
医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力を挙げた研究開発に取り組んでいます。グループのコア技術である膜、フィルター、吸着材等による濾過・分離技術を、化学、機械工学、医薬分野での幅広い知見や保有技術と高度に融合させることで、人工腎臓、血液浄化治療、輸血製剤の白血球除去、製剤のウイルス安全性確保やプロセスエンジニアリングをはじめとしたバイオプロセス分野における技術をさらに発展させていきます。
クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する心肺蘇生領域における技術開発を原点とし、重篤な心肺関連疾患の診断・治療・管理領域にも研究開発を広げています。予後が悪く医療ニーズの高い、心不全・急性心筋梗塞・呼吸機能障害等におけるアンメットメディカルニーズに対する新規治療法や技術の発展と提供を通じ、患者様と臨床医に役立つことを使命としています。
(5) 「その他」
エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
研究開発 | 98,693 | 105,027 | 106,597 |
売上対比 | 4.0% | 3.9% | 3.8% |
従業員の状況(抜粋)
提出会社の状況
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
従業員数 | 8,646名 | 8,787名 | 8,810名 |
平均年齢 | 41.3歳 | 41.5歳 | 41.5歳 |
平均勤続年数 | 14.6年 | 13.9年 | 14.3年 |
平均年間給与 | 7,511,733円 | 7,605,539円 | 7,528,168円 |
連結会社の状況
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
従業員数 | 46,751名 | 48,897名 | 49,295名 |
1人あたり売上高 | 52.6百万円 | 55.8百万円 | 56.5百万円 |