五洋建設(株)
事業内容(抜粋)
当社グループは、当社、子会社31社及び関連会社8社で構成され、国内土木事業、国内建築事業、海外建設事業及びこれらに関連する建設資材の販売、機器リース並びに国内開発事業、造船事業等の事業活動を展開している。
当社グループの事業に関わる位置付け及びセグメント情報との関連は、次のとおりである。
なお、これらはセグメント情報に記載された区分と同一である。
(1) 国内土木事業
当社及び連結子会社である五栄土木㈱、洋伸建設㈱等が営んでおり、当社は工事の一部をこれらの連結子会社に発注している。
(2) 国内建築事業
当社及び連結子会社であるペンタビルダーズ㈱が営んでおり、当社は工事の一部を連結子会社に発注している。
(3) 海外建設事業
当社及び連結子会社であるUG M&E社等が営んでおり、当社は工事の一部をこれらの連結子会社に発注している。また、連結子会社であるアンドロメダ・ファイブ社及びカシオペア・ファイブ社が大型自航式浚渫船の賃貸・運航管理を営んでいる。
(4) その他
当社が不動産の自主開発、販売及び賃貸等の開発事業を営んでおり、連結子会社に対して、土地・建物の賃貸を行っている。また、連結子会社である警固屋船渠㈱が造船事業を営んでいる。連結子会社であるペンタテクノサービス㈱が事務機器等のリース事業を営んでおり、当社に事務機器等の一部をリースしている。このほか、連結子会社であるジャイワット㈱等が環境関連事業を営んでいる。
経営成績
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
売上高 | 458,231 | 502,206 | 617,708 |
営業利益 | 15,939 | 4,119 | 29,152 |
財政状態
2024年3月 | |
---|---|
自己資本比率 | 30.6% |
セグメント情報
売上高構成比 | セグメント利益率 | |
---|---|---|
国内土木事業 | 43% | 10% |
国内建築事業 | 31% | 3% |
海外建設事業 | 24% | -3% |
その他 | 2% | 4% |
設備投資(抜粋)
(国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)
当連結会計年度における主な設備投資の内容は、洋上風力関連作業船の設備投資他、施工能力向上のための建設機械・作業船などの新設及び更新等であり、その総額は10,484百万円である。なお、前連結会計年度に建造中であった1,600t吊SEP型多目的起重機船は、当連結会計年度に完成した。
(その他)
当連結会計年度における主な設備投資の内容は、賃貸事業用建物の更新、リース用事務機器、副産物リサイクル設備の更新等であり、その総額は402百万円である。
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
設備投資 | 8,657 | 10,113 | 10,886 |
減価償却費 | 6,488 | 7,235 | 7,565 |
研究開発(抜粋)
当連結会計年度は、レジリエンス、DX・GXの推進に着目した技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、31億円であった。
また、当連結会計年度における主要な研究開発内容及び成果は次のとおりである。
(国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)
1.土木分野
(1) BIM/CIMへの取組み
国土交通省は「発注工事の原則BIM/CIM化」を2023年までに達成するという目標を掲げ、BIM/CIM導入の取組みを加速させてきた。当社は2016年度より桟橋工事に港湾分野として初の全面的なBIM/CIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にBIM/CIMに取り組んできており、当連結会計年度も土木分野での取組案件数約100件を6年連続で達成した。
当連結会計年度においては、BIM/CIMモデルを情報の基盤とした施工情報共有システム(i-PentaCOL)をトンネル工事に適用し、出来形・品質や現場状況など日々の施工情報の集約・管理を実施した。土工現場においてはUAVやSLAM技術※1を活用した3D-LiDAR※2など、多様な三次元測量を積極的に実施し、可視化による施工検討の迅速化や出来形管理の省力化を進めた。このほか、既設構造物との干渉を避けるよう複雑な作業手順をBIM/CIMモデルで視覚化しながら策定するとともに、建設機械の最適操作手順をオペレータ目線で再現したVR施工シミュレーションを行うなど、より円滑な施工に向けた現場教育も実施した。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担軽減に寄与できるよう、BIM/CIMの導入・活用に積極的に取り組む予定である。
※1 SLAM技術:移動体が今どこにいるのかを推測する「自己位置推定」と、その周辺がどういう状況にあるのかを把握する「環境地図作成」を同時に行う技術の総称
※2 3D-LiDAR:レーザー光を使用してターゲットの表面までの距離を3次元的に測定するマッピング技術
(2) 地盤情報の可視化ツール(Gi-CIM)の開発
地盤改良工事は施工対象が地中となるため、既設埋設物との干渉リスクがあり、また出来形や品質を直接確認することができない。当社はこれらの課題に対して、既設埋設物等のCIMモデルに地盤改良の調査・設計・施工管理等の情報を3次元的に統合して可視化することができるGi-CIM(Ground improvement Construction Information Modeling)を開発し、これまで多くの工事で活用してきた。Gi-CIMには、施工管理装置のモニター画面に表示される施工情報をOCR(光学的文字認識)により数値データ化し、新たに搭載した3Dモデルの自動作成機能により、施工状況をリアルタイムで三次元的に把握することが可能となっている。
本OCR機能をこれまでは浸透固化処理工法を中心に適用してきたが、当連結会計年度においては、深層混合処理工法にも適用し、改良杭の施工履歴(セメントスラリーの添加量や攪拌翼の回転数など)をリアルタイムに見える化することで、施工不良を防止し、適正な施工品質の確保に貢献した。今後も、サンドコンパクションパイル工法や静的圧入締固め工法など他工法へ適用範囲を拡大し、地盤改良工事の安全・品質および施工の信頼性向上に取り組んでいく。
(3) プレキャスト技術の開発と現場実装
近年、建設現場における担い手不足や働き方改革を背景に、施工プロセスにおける生産性向上を図る取組みが広く行われている。港湾の桟橋工事などでは、工期短縮や作業人員の削減など生産性向上の観点からプレキャスト施工は有益な方法である。しかしながら、大型起重機船の調達、陸上製作ヤードの確保、部材接合技術が必要であり、従来の現場打ちコンクリートによる構築方法と比較して建設コストが増加する傾向にある。
当社は、国内最大の原塩ターミナルである三ツ子島埠頭の桟橋工事において、幅30m×全長240mの桟橋上部工を12基のプレキャスト部材(幅30m×長さ20m、1,600t/基)に分割し、2,200t吊起重機船を用いて据付工事を行った。鋼管杭とプレキャスト部材、プレキャスト部材同士の接合は当社で開発したスマート接合技術を適用した。プレキャスト部材としてRC中空構造のフラットスラブ形式を採用するなど上部工の軽量化や鋼管杭本数の削減により、従来の現場打ちコンクリートによる工法と比較して全体工期を56%短縮、労働員数を27%削減などプレキャスト工法のメリットを享受しながら、課題であったコスト削減(11%)をも達成した。本工事を適用した桟橋構築技術は、当連結会計年度において土木技術の発展に顕著な貢献をなし、社会の発展に寄与したと認められ「令和5年度土木学会技術賞」を受賞した。
また、北陸地方整備局発注の新潟空港進入灯(10側)橋脚工事では、橋脚コンクリートのプレキャスト化により夜間の海上高所作業が低減され、場所打ち工法と比べて労働員数を46%削減、海上施工日数を47%短縮するとともに、夜間海上作業の低減により災害発生リスクも減少させた。本工事は、建設生産プロセスの高度化・効率化、国民サービスの向上等につながる優れた実績として評価され「令和5年度インフラDX大賞優秀賞」を受賞した。
(4) 山岳トンネルにおける防水シート自動溶着システムの開発
一般に、山岳トンネルの防水工においては、トンネル壁面(支保工面)全面に展張した幅約2m/枚の防水シート同士を3人の作業員が手作業で溶着して接合するが、狭隘な足場台車上での高所作業となり、トンネル天端付近は上向きの不安定な姿勢での作業となる。また、防水シートは凹凸のある支保工面に展張されるため、溶着部が不規則に波打ち、確実に溶着するためには熟練の技能が必要となる。しかし、近年の建設業界では担い手・熟練工不足が著しい。そこで当社は、作業員の技量によらず、1人で安全に防水シートを溶着接合できる「防水シート自動溶着システム」を開発し、高速道路トンネル新設工事に導入した。一般に使用されている足場台車に追加設置した溶着機走行用レールと当社が開発した自走式溶着機により、作業員が足場台車に上ることなく、複雑で不規則な溶着部のたわみやよれに溶着機が追従しながら、自動で溶着できることを確認した。
当連結会計年度において、国土交通省が運用する新技術情報提供システム(NETIS)に登録した。今後も山岳トンネル工事における安全性・生産性の向上に資する技術開発に取り組んでいく予定である。
(5) 海外大型プロジェクトへの国内技術導入
海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多く、また設計や施工計画・管理に必要な気海象情報が不足することが多い。バングラデシュのマタバリプロジェクトの建設場所は波浪条件の厳しい外洋に面しており、潮流が速く海域は著しい濁りが発生する。このような環境下にあるため、現地に波高・流速計、濁度計などを設置して時系列データを取得するとともに、定期的な深浅測量や採水調査などを実施し、海底地形変化や海中の濁度に関する総合的なモニタリング調査を行った。これらの物理データを検証データとして、航路埋没予測解析モデルを高精度化し、予測した埋め戻り土砂量を浚渫計画に反映した。インドネシアのパティンバン新港プロジェクトにおいても施工中の航路の埋め戻りが懸念されたため、工事着手に先立ち、過去の実測データに基づいて埋没予測解析を実施し、施工計画に反映した。
また、インドネシアのパティンバン新港プロジェクトやマダガスカルのトアマシナ港拡張事業に対して、国内で活用実績が豊富な気海象予測システム、海外機関が公開している気海象推算データに基づく稼働率解析、数値波動水路(CADMAS-SURF)等の高精度波浪解析技術を適用し、構造物の設計、海上作業の施工計画や日々の施工管理・安全管理に反映した。
(6) 桟橋の調査診断システム及び残存耐力評価技術の開発
従来の港湾施設の目視調査は、専門技術者が小型船に乗り、船上から構造物を観察して劣化状況を把握していたが、劣化状況の判断が点検実施者の主観に依存せざるを得ないこと、また桟橋下部では狭隘な空間で上向きの作業となるため労力・時間を要することが問題となっていた。そこで「i-Boat」を航行させ、搭載したカメラにより桟橋下面の劣化状況を撮影し、得られた画像から構造物の劣化度を客観的に診断できるシステムを開発し、これまで複数の桟橋調査に適用してきた。
また、点検・診断結果からAIを用いて桟橋の残存耐力を評価する技術も開発した。これは、現在および将来(経年劣化後)の桟橋に対して、地震時の損傷状態を予測するものである。施設管理者にとって供用継続の可否や補修・補強の意思決定がしやすいため、不具合が生じてから対策を行う事後保全から、合理的・計画的な予防保全への転換が期待できる。本技術について、当社は当連結会計年度より、内閣府が主導する国家プロジェクトである「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に参画し、AIを用いた残存耐力評価技術の高精度化や社会実装に向けた取組みを産官学の共同研究体制により開始した。
なお、3D画像処理から劣化度診断、残存耐力評価までの維持管理トータルシステムについて、当連結会計年度において「第7回インフラメンテナンス大賞 情報通信技術の優れた活用に関する総務大臣賞」を受賞した。
(7) 可塑性グラウト増深工法の開発(社会実装に向けた現場実証)
船舶大型化に対応するため既設係船岸を増深するニーズが高まり、法線を変更せずに増深できる可塑性グラウト増深工法を開発した。本工法は捨石マウンド内の一部に可塑性グラウトを注入・固化した後、前面の捨石を掘削して増深する工法であり、(国研)港湾空港技術研究所と(一社)日本埋立浚渫協会により共同で開発した技術である。本工法の社会実装を促進するため、当社を代表とした8社は、(国研)港湾空港技術研究所から公募された「革新的社会資本整備研究開発推進事業」に応募して採択され、川崎港東扇島の実岸壁において現場実証を行った。実岸壁で一連の施工を行い、工法の実現性・有効性を示し、港湾分野において実用化できることを明らかにした。この技術的成果は、有識者や国の監修のもと「可塑性グラウト増深工法ガイドライン」としてまとめられる予定である。なお、本技術の現場実証に関して土木学会論文集に発表した論文は、「令和6年度日本港湾協会論文賞」を受賞した。
(8) 新船種作業船の開発・建造
国内洋上風力発電プロジェクトは、港湾区域に引き続き、一般海域においても洋上風力発電の開発を促進する法律が整備され、全国各地で取組みが本格化している。また、洋上風力発電の導入が進む欧州では、風車の大型化が進んでいる。
これらの動向を見据え、10~15MWクラスの風車を複数基運搬・設置可能な1,600t吊SEP型多目的起重機船「CP-16001」の建造に着手し、当連結会計年度において引渡しを受けた。さらに、現在DEME Offshore社が保有する外国船籍のSEP船「Sea Challenger」を1,600t吊に大規模改造し、2026年の運用開始を目指す予定である。また、洋上風力発電向けのケーブル敷設船、大型基礎設置船、資材運搬船などの保有に向けて検討を進めている。
当社は、保有する「CP-8001」、「CP-16001」と自航式多目的起重機船「CP-5001」に加え、新たに1,600t吊SEP型多目的起重機船1隻とケーブル敷設船などを投入することで、洋上風力建設工事に積極的に参入していく予定である。
2.建築分野
(1) 設計、施工へのBIM活用
当社は、フロントローディングによる品質および生産性の向上を目指し、設計、施工の各フェーズでBIMを活用するとともに、BIMの教育についても継続的に実施してきた。
当連結会計年度では、前連結会計年度からの継続案件と新規案件の合計48件に対してBIMを活用し、その取組みを通じて現場職員へのBIMリテラシー向上を図った。また意匠・構造設計者を対象としたBIMソフトウェア教育を若手職員10人に対して実施し、これまでに累計60人以上に設計BIM技術を習得させた。冷凍冷蔵倉庫やごみ処理場、物流倉庫のランプウェイなどにおいては干渉チェックをはじめ、複雑に絡み合う部材の可視化などBIM機能を利用した効果的な活用手法を構築した。また建築遮音設計システムなど外部システムとのデータ連携を行う情報抽出用プログラムを開発し、属人化の解消に向けた取組みを進めている。今後も、BIMデジタル人材の育成をさらに推進していくとともに、BIM機能拡張に向けた技術開発にも精力的に取り組む予定である。
(2) ICT技術を用いた業務効率化システムの開発と運用
当社は、BIMやタブレット端末を活用したシステム開発を行い、ICT技術による現場業務の効率化および生産性向上に向けて継続して取り組んでいる。
当連結会計年度では、BIMを活用した「五洋建設統合施工管理システムPiCOMS(ピーコムス):Penta-ocean integrated Construction Management System」にRTK測位を用いた高精度の位置情報を組み合わせ、PCa(プレキャスト)部材の運送・保管管理業務へ適用拡大を行った。建設現場での運用を通じて生産性向上効果を確認した。またAR(Augmented Reality)技術を活用し建設重機の配置状況をタブレット端末上で確認できる「Degisite(デジサイト)-AR Lite」を開発した。建設重機の実大3Dモデルを現場映像に重ね合わせることで配置計画の事前確認が容易となり、さらに発注者や近隣住民の方などに対しわかりやすく情報伝達できることを確認した。
現場での運用を通じて、当社職員だけではなく、協力業者に対しても現場業務の効率化が図れることを確認した。引き続き、ICT技術の開発および現場運用を通して、生産性向上への取組みを加速させていく予定である。
(3) CO2低減型コンクリート「CELBIC」の開発と活用
当社は、これまでに脱炭素社会の形成と地球環境問題の改善に寄与することを目的に、建築構造物に求められる所要の品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減するCELBIC(セルビック:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete)を開発し、建設現場に導入してきた。
当連結会計年度は、CELBICの適用範囲の拡大ならびに再生骨材を併用することで低炭素性と資源循環性を併せ持つ「高炉スラグ微粉末高含有再生骨材コンクリート」の早急な実用化に向けて開発を進めてきた。今後もカーボンニュートラル社会の実現に向けて、技術開発および普及展開を進めていく。
(4) ZEB化技術への取組み
カーボンニュートラル社会の実現に向けた機運が高まる中、建物の省エネルギー・ZEB化に対して顧客の関心が高まっている。当社は、これまでにZEBの実績を積み重ねつつ、ZEB化技術の開発に積極的に取り組んでいる。
当連結会計年度では、再生可能エネルギー100%の工場として建設した自社工場「室蘭製作所」での取組みが高く評価され、北海道経済産業局より「北国の省エネ・新エネ大賞」を受賞した。またZEB化提案技術の一つとして、エネルギー効率や設置自由度が高い水冷式空調設備の省エネ運転制御技術を開発し、空調設備全体の省エネ化に効果的であることを確認した。
今後も、積み重ねた実績に裏付けられたZEB化技術を活用し、顧客への設計提案、技術提案に積極的に取り組んでいく予定である。
(5) 環境配慮技術の取組み
近年、利用者のウェルネスやプロダクティビティに影響を与えるオフィス空間に対して、より良い環境創出が求められている。当社では、室内環境を評価し改善するため人のしぐさ・行動から室内の温熱や衛生状態を見える化する技術の開発に取り組んでいる。
新型コロナウイルス感染症の流行による人々の衛生意識の高まりに鑑み、当連結会計年度では、オフィス空間に設置したカメラ画像から机上面等と執務者の手との接触を検知することで、机上面等における細菌等の付着汚染量を類推し数値化して評価する「感染リスク可視化システム」を開発した。自社施設での運用結果からカメラ画像による行動追跡に基づき算出した値が実測値と一致することを確認した。
今後は、顧客の建物施設管理業務に対しての清掃等の衛生管理サポートに関する提案力や運用データの集積・分析から室内環境改善に関する提案力を高めていくとともに、同技術の新たな活用につながる技術開発に取り組んでいく予定である。
3.環境分野
(1) 副産物の有効利用技術
カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として使用されている。
これまでに開発した、大規模施工に対応可能なカルシア落下混合船やバックホウ混合を効率化するカルシアバケット、軟弱な海底地盤の表層改良を可能とするカルシア改質土のバッチ式原位置混合工法の改良や適用を進めている。今後は、これらのカルシア改質技術を活用したCO2排出量の少ない施工方法やカルシア改質土でのCO2固定方法等のカーボンニュートラル技術、ブルーカーボン生態系の形成のための海藻の生育基盤作成技術の開発を行っていく。
(2) 泥土のリサイクル技術
河川・湖沼の浚渫土や陸上の掘削工事にともなって発生する泥土の利活用は重要な課題であり、その解決のため当社はこれまで様々な技術開発に取り組んできた。
吸水性泥土改質材「ワトル」は、製紙会社から発生するペーパースラッジ焼却灰(PS灰)に特殊薬剤を混合し水和処理した製品で、泥土に対し、吸水による物理的改質(瞬時の改良効果)に加え、時間経過にともなう化学的改質(緩やかな強度発現)を合わせ持つことが特徴である。従来、建設汚泥や含水比が高い発生土に対して、天日干しやセメント・石灰等による固化処理が用いられてきたが、時間やコスト、アルカリ化等の課題があった。「ワトル」はこのような課題を解決する多くの使用実績があるが、さらにカーボンリサイクルへの貢献など環境負荷の低減、利用用途の拡大など、より高機能な材料の開発へと取組みを進めていく。
4.技術評価証等の取得
NETIS
<新規登録>
・防水シート自動溶着器 KK -230038-A
・UAVによるAR施工管理支援システム KTK-230004-A
・DXを使用したクラウド航行安全監視システム KTK-230006-A
・深層混合処理工法 3DCIMシステム KTK-230007-A
<更新>
・Gi-CIM KTK-210009-A
技術評価証
<新規登録>
・カルシア改質土のバッチ式原位置混合工法 第 22006号
<更新>
・4Dソナーによる施工管理 第 12004号
・高含水泥土造粒固化処理工法 第 02004号
・曲がり削孔工法(リアルタイムで誘導する曲線ボーリング) 第 08001号
性能評定
<新規登録>
・非耐力壁の一部に水平部分を有するせっこうボードを用いた耐火壁構造
(クランク耐火壁)の耐火性能に関する技術的評価
:一般財団法人ベターリビング、評定CBL FP012-23号、2024年3月
<更新>
・異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法及び施工方法 -Dicos Beam工法-
:日本ERI株式会社、構造性能評価 ERI-K19023-01、2023年7月
・RCS合成壁/杭工法の合成構造としての性能
:一般財団法人ベターリビング、評定CBL FP022-18号、2024年2月
大臣認定
<新規登録>
・押出成形セメント板/吹付けロックウール合成被覆/鋼管柱(耐火構造1.5時間/柱)
:国土交通大臣認定(一般)、FP090CN-0994、2023年8月
・軽量気泡コンクリートパネル/吹付けロックウール合成耐火被覆/鋼管柱(耐火構造1時間/柱)
:国土交通大臣認定(一般)、FP060CN-1028、2024年3月
・軽量気泡コンクリートパネル/吹付けロックウール合成耐火被覆/鋼管柱(耐火構造2時間/柱)
:国土交通大臣認定(一般)、FP120CN-1043、2024年3月
・仕上材・軽量気泡コンクリ-トパネル・吹付けロックウール合成耐火被覆/鉄骨はり(耐火構造1時間/はり)
:国土交通大臣認定(一般)、FP060BM-0786、2024年3月
・仕上材・軽量気泡コンクリ-トパネル・吹付けロックウール合成耐火被覆/鉄骨はり(耐火構造2時間/はり)
:国土交通大臣認定(一般)、FP120BM-0796、2024年3月
2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | |
---|---|---|---|
研究開発 | 2,405 | 2,786 | 3,142 |
売上対比 | 0.5% | 0.6% | 0.5% |