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ソフトバンク(株)

事業内容(抜粋)

当企業集団は、2024年3月31日現在、当社と子会社239社(以下「当社グループ」)、関連会社57社および共同支配企業20社により構成されています。当社の親会社はソフトバンクグループ㈱です。以下、「ソフトバンクグループ㈱」はソフトバンクグループ㈱単体、「ソフトバンクグループ」はソフトバンクグループ㈱およびその子会社を含む企業集団、「LINEヤフーグループ」はLINEヤフー㈱およびその子会社を含む企業集団とします。

ソフトバンクグループは、創業以来一貫して、情報革命を通じ人類と社会に貢献してきました。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、世界の人々が最も必要とするテクノロジーやサービスを提供する企業グループとなることを目指すとともに、企業価値の最大化を図ってきました。

その中において、当社グループはソフトバンクグループの日本における中心的な事業会社として、ソフトウエアの卸販売、ブロードバンド、固定通信等の事業を受け継ぎつつ、最先端テクノロジーを用いて快適で利便性の高い通信サービスを競争力のある価格で提供し、日本における通信と社会の発展に貢献してきました。当社グループは、成長戦略「Beyond Carrier」を推進することにより、日本でも有数の通信ネットワークに加え、総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」やコミュニケーションアプリ「LINE」、キャッシュレス決済サービス「PayPay」など日本最大級のユーザー基盤を有する通信・IT企業グループとなりました。今後も、成長戦略「Beyond Carrier」の下、コアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りながら、通信キャリアの枠を超え、情報・テクノロジー領域のさまざまな分野で積極的にグループの事業を拡大することで、企業価値の最大化を目指します。また、通信事業とこれらのグループ事業との連携を強化することを通じて、通信事業の競争力を強化するとともに、グループ事業のサービス利用者数の拡大やユーザーエンゲージメントの向上などのシナジーの創出を推進します。

なお、当社グループは2023年6月30日に終了した3カ月間より報告セグメントの名称を一部見直し、「コンシューマ」、「法人」、「流通」、「ヤフー・LINE」、「金融」から「コンシューマ」、「エンタープライズ」、「ディストリビューション」、「メディア・EC」、「ファイナンス」へ変更しています。この変更はセグメント名称のみを変更するものであり、セグメントの区分、範囲、測定方法への変更はありません。

a. コンシューマ事業
主として、日本国内の個人のお客さまに対し、モバイルサービス、ブロードバンドサービスおよび「おうちでんき」などの電力サービスを提供しています。また、携帯端末メーカーから携帯端末を仕入れ、ソフトバンクショップ等を運営する代理店または個人のお客さまに対して販売しています。

(a) モバイルサービス
モバイルサービスでは、次の3つのブランドを展開しています。

-「SoftBank」ブランド  :

最新のスマートフォンや携帯端末、大容量データプランを求めるスマートフォンユーザー向け高付加価値ブランド

-「Y!mobile」ブランド  :

低価格かつ安心のサービスを特徴とするブランド/ライトユーザーや月々の通信料を抑えることを重視するお客さま向けのスマートフォン、Pocket Wi-Fi等を提供するブランド

-「LINEMO」ブランド   :

メッセンジャーアプリ「LINE」がデータ容量を消費せずに使い放題となるプランを提供するほか、全ての手続きをオンライン上で完了できるオンライン専用ブランド

「SoftBank」および「Y!mobile」のスマートフォンユーザーに対しては、追加料金を支払うことなく、LINEヤフー㈱提供の「LYPプレミアム」(注1)をご利用いただけるサービスを提供しています。

これに加え、「SoftBank」スマートフォンユーザーは、PayPayポイントがたくさんもらえる「ソフトバンクプレミアム」の特典として、PayPayポイントが戻ってくる「スーパーPayPayクーポン」の提供を受けられます。また、長く対象プランに加入頂いているお客さまに対する長期継続特典として、PayPayポイントの付与等を実施しています。

(b) ブロードバンドサービス
ブロードバンドサービスでは、主として、個人のお客さま向けの高速・大容量通信回線サービスである「SoftBank 光」(注2)、「フレッツ光」とセットで提供するISPサービス(注3)である「Yahoo! BB 光 with フレッツ」を展開しています。

また、2015年より、「SoftBank 光」等のブロードバンドサービスを移動通信サービスとセットで契約するお客さまに対し、移動通信サービスの通信料金を割り引くサービス「おうち割 光セット」を提供しています。

(c) 電力サービス
電力サービスでは、主として、個人のお客さま向けに「おうちでんき」、「自然でんき」などの電力供給サービスを提供しています。

(主要な関係会社)

当社、Wireless City Planning㈱、SBモバイルサービス㈱、SBパワー㈱

b. エンタープライズ事業
法人のお客さまに対し、モバイル回線提供や携帯端末レンタルなどのモバイルサービス、固定電話やデータ通信などの固定通信サービス、データセンター、クラウド、セキュリティ、グローバル、AI(注4)、IoT(注5)、デジタルマーケティング等のソリューションサービスなど、多様な法人向けサービスを提供しています。

(主要な関係会社)

当社、Wireless City Planning㈱、SBエンジニアリング㈱、㈱IDCフロンティア、㈱イーエムネットジャパン、Cubic Telecom Ltd.(注6)

c. ディストリビューション事業
ディストリビューション事業は、変化する市場環境を迅速にとらえた最先端のプロダクトやサービスを提供しています。法人のお客さま向けには、クラウドサービス、AIを含めた先進テクノロジーを活用し商材を提供しています。個人のお客さま向けには、メーカーあるいはディストリビューターとして、ソフトウエアやモバイルアクセサリー、IoTプロダクト等、多岐にわたる商品の企画・提供を行っています。

(主要な関係会社)

SB C&S㈱

d. メディア・EC事業
メディア・EC事業は、メディアおよびコマースを中心としたサービスを展開し、オンラインからオフラインまで一気通貫でサービスを提供しています。メディア領域においては、総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」やコミュニケーションアプリ「LINE」での広告関連サービス、コマース領域においては「Yahoo!ショッピング」、「ZOZOTOWN」などのオンラインショッピングサービスや「Yahoo!オークション」などのリユースサービス、戦略領域においては、メディア・コマースに次ぐ新たな収益の柱となるよう取り組んでいるFinTech(注7)サービス等の提供を行っています。

(主要な関係会社)

LINEヤフー㈱(注8)、アスクル㈱、㈱ZOZO、㈱一休、バリューコマース㈱(注9)、PayPay銀行㈱、LINE Pay㈱、LINE Financial Corporation(注10)、LINE Plus Corporation、LINE SOUTHEAST ASIA CORP.PTE.LTD.

e. ファイナンス事業

ファイナンス事業では、QRコード決済やクレジットカードなどのキャッシュレス決済サービス、加盟店のマーケティングソリューションの開発・提供、資産運用などの金融サービス、およびクレジットカード・電子マネー・QRコードなど多様化する決済を一括で提供する決済代行サービスなどを提供しています。

(主要な関係会社)

PayPay㈱、PayPayカード㈱、SBペイメントサービス㈱、PayPay証券㈱

f. その他の事業

その他の事業として、クラウドサービス、セキュリティ運用監視サービス、IoTソリューションの提供、IoT、Linux/OSS、認証・セキュリティサービスの提供、およびデジタルメディア・デジタルコンテンツの企画・制作などを行っています。当社グループでは最先端の技術革新をビジネスチャンスとして常に追求しており、FinTech、IoT、クラウドなどの分野に積極的に投資を行い、事業展開を図っています。

(主要な関係会社) (注11)

当社、SBテクノロジー㈱、サイバートラスト㈱、アイティメディア㈱

(注1) 「LYPプレミアム」(月額会員費508円(税込)から)は、旧「Yahoo!プレミアム」で提供していた、「Yahoo!ショッピング」利用によるPayPayポイント(譲渡不可)の付与などに加え、「LINE」でLINEスタンプ プレミアムのベーシックコースが適用されるなど、様々なサービスで特典を受けられる会員サービスです。「SoftBank」ユーザーは「スマートログイン」設定により、また、「Y!mobile」ユーザーは初期登録により、追加料金の支払いなしに利用できます。

(注2) 「SoftBank Air」を含みます。

(注3) ISPサービスとは、ユーザーのコンピューターをインターネットに接続するための手段を提供するサービスを意味します。ISPはInternet Service Providerの略称です。

(注4) AIとは、Artificial Intelligenceの略称で、人工知能のことです。

(注5) IoTとは、Internet of Thingsの略称で、モノがインターネット経由で通信することです。

(注6) 2024年3月6日付で、当社はCubic Telecom Ltd.の株式の54.3%(議決権所有割合)を取得しました。

(注7) FinTechとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報通信技術を結び付けたさまざまな革新的なサービスのことです。

(注8) 2023年10月1日付でZホールディングス㈱を存続会社とし、同社ならびにLINE㈱およびヤフー㈱を中心としたグループ内再編に関する手続きが完了しました。同日をもって、Zホールディングス㈱はLINEヤフー㈱に、LINE㈱はZ中間グローバル㈱に商号変更され、ヤフー㈱は消滅しました。また、LINEヤフーグループの国内金融事業領域の中間持株会社は、これまでLINE Financial㈱とZフィナンシャル㈱の2社体制でしたが、グループ内再編により、Zフィナンシャル㈱にその機能が集約されました。

経営成績

2022年3月 2023年3月 2024年3月
売上高 5,690,606 5,911,999 6,084,002
営業利益 985,746 1,060,168 876,068
単位:百万円

財政状態

2024年3月
親会社所有者帰属持分比率 15.3%

セグメント情報

売上高構成比 セグメント利益率
コンシューマ 46% 18%
エンタープライズ 13% 21%
ディストリビューション 9% 4%
メディア・EC 26% 12%
ファイナンス 4% -2%
その他 2% -3%

設備投資(抜粋)

当連結会計年度は、主にコンシューマ事業およびエンタープライズ事業に係る通信サービスの拡充並びに品質の向上等を目的に、効率的に設備投資を実施しました。5Gのエリア展開に係る設備投資やLINEヤフーグループの設備投資が減少した一方で、生成AI基盤に係る設備投資が増加したことにより、当連結会計年度の設備投資の総額は650,856百万円(レンタル端末投資額60,066百万円、IFRS第16号の適用による投資額73,486百万円を含む)となりました。

(注) 設備投資額は建設仮勘定を含む有形固定資産、無形資産の取得、長期前払費用(その他の非流動資産)およびIFRS第16号の適用による投資額です。なお、資産除去債務に係る有形固定資産の増加額、のれんおよび商標利用権の増加額は含まれていません。

2022年3月 2023年3月 2024年3月
設備投資 647,284 788,609 650,856
減価償却費及び償却費 723,444 764,210 743,808
単位:百万円

研究開発(抜粋)

当社グループは、通信を基盤とした様々なサービスの提供を目指し、AI、IoT、ロボット、6G、HAPS(注)、デジタルツイン、自動運転や量子技術などの先端技術の研究開発を実施しています。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を実現し、通信を介してヒト・モノ・コトをつなぎお客さまに新たな体験や価値を提供するため、より良い技術の実現を目指して日々研究開発に取り組んでいます。

なお、当社グループの研究開発は複数のセグメント間に共通した基礎技術に関するものがほとんどであるため、特定のセグメントに区分して記載していません。

 (注)HAPS(High Altitude Platform Station)とは、成層圏を長期間飛び続ける無人航空機を通信基地局のように運用し広域エリアに通信サービスを提供するシステムの総称です。

(研究開発活動の目的)

お客さまに対して最先端技術の製品を安定的に供給していくこと、および当社グループ内での情報通信技術の中長期的なロードマップを策定していくことを目標に、情報通信技術に関わる最先端技術の動向の把握、対外的なデモンストレーションを含む研究開発および事業化検討を目的としています。

(研究成果)

当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は以下の通りです。

ルワンダ政府と協力して世界で初めて成層圏からの5Gの通信試験に成功

当社は、成層圏通信プラットフォーム(以下「HAPS」)の研究開発の一環として、HAPSの無人航空機の試験機体に自社で開発した5Gに対応するペイロード(通信機器)を搭載し、2023年9月24日に、成層圏で5Gの通信試験に成功しました。本試験は、当社とルワンダ共和国の政府が協力し、ルワンダの領空で実施したものです。HAPSの無人航空機を活用して、成層圏からの5Gの通信試験に成功したのは、世界で初めてです。(注)

当社が開発したペイロードは、成層圏の高度最大16.9kmにおいて、約73分間連続して5Gの通信を提供し、厳しい条件下でも想定通りの性能を発揮しました。本試験では、一般に販売されている5G対応スマートフォンを使用し、通常の通信で利用されている電波を利用して、ルワンダの試験場と日本の間で5Gによるビデオ通話(Zoom)を実現しました。

本試験の結果を受け、当社とルワンダ政府は、ルワンダなどのアフリカ地域におけるHAPSの活用の可能性と商用化に向けた研究に取り組む予定です。その他、通信環境が整っていない農村地域の学校やコミュニティーのデジタル化なども検討していきます。

(注)成層圏において、飛行機型のHAPSを活用した5Gの通信試験に成功したのは世界初。2023年10月17日時点での公開情報に基づく。当社調べ。

国内最大級の生成AI開発向け計算基盤の稼働および国産大規模言語モデル(LLM)の開発を本格開始

当社は、生成AI(人工知能)開発向けの計算基盤の稼働を開始し、当社の子会社であるSB Intuitions㈱(以下「SB Intuitions」)は、この計算基盤を活用して、日本語に特化した国産大規模言語モデル(LLM)の開発を本格的に開始しました。

当社の経営理念である「情報革命で人々を幸せに」の実現に向けて、デジタル社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供するという長期ビジョンを、2023年5月に発表しました。この長期ビジョンの実現に向けて、生成AI開発向けの計算基盤の構築に取り組んでいます。この計算基盤は、2023年7月に経済産業省から、経済安全保障推進法に基づく特定重要物資である「クラウドプログラム」の供給確保計画について認定を受けております。

この計算基盤は、NVIDIA Tensor コア GPUを2,000基以上搭載したAI スーパーコンピューター NVIDIA DGX SuperPOD™、NVIDIA ネットワーキング、NVIDIA AI Enterpriseソフトウエアで構成された大規模クラスターで、国内最大級の(注)計算基盤となります。また、伊藤忠テクノソリューションズ㈱の協力の下、設備導入および構築をスピーディーに進め、稼働を開始しました。この計算基盤は、まず当社とSB Intuitionsで段階的に利用しながら、早期に大学や研究機関、企業などに提供する予定です。

計算基盤の稼働開始に伴い、SB Intuitionsは事前検証を完了させて、日本語に特化した国産LLMの開発を本格的に開始しました。高速処理が可能な計算基盤と豊富な技術者、圧倒的な顧客接点を持つ当社が、日本語のデータセットを活用した高品質な国産LLMを開発することで、日本の商習慣や文化に適した生成AIサービスの提供を実現します。

(注)2023年10月31日時点での公開情報に基づく。当社調べ。

AI-RANアライアンス設立

~AIを駆使し、5Gおよび来るべき6G時代に備えたRANの変革に向けた研究開発を推進~

AI-RANアライアンスは、Amazon Web Services, Inc.、Arm、DeepSig Inc.、Telefonaktiebolaget LM Ericsson、Microsoft Corporation、Nokia、 Northeastern University、NVIDIA、Samsung Electronics、当社およびT-Mobile USA, Inc.により設立されました。AI-RANアライアンスは、モバイルネットワークの効率性をグローバル規模で向上させ、ネットワークによる消費電力を削減し、既存のインフラを改善することで、5Gおよび6Gに向けて、AIを活用した新たなビジネスの機会を創出することをミッションとします。

加盟企業・大学は、それぞれのリーダーシップと技術力を活用し、下記の主要な三つのテーマに関する研究開発に取り組みます。

・ AI for RAN:AIの活用により、既存のRANの周波数利用効率および性能を向上させる

・ AI and RAN:AIとRANの処理を統合し、インフラの利用効率を上げることで、AIを活用した新たな収益機会を創出

・ AI on RAN:RANを通じて、ネットワークエッジ側にAIを展開。RANの運用効率を上げ、モバイルユーザー向けの新規サービスを展開

今後は、加盟企業・大学で連携して、AI-RANの研究や実証実験を進め、新規技術の普及を推進していきます。

NISTが開催した映像解析コンテスト「TRECVID 2023」の映像検索部門と映像説明文生成部門で世界最高水準の精度を達成

明星大学と当社が共同研究した映像解析技術が、米国国立標準技術研究所(以下「NIST」)が開催した世界的な映像解析コンテスト「TRECVID 2023」の映像検索部門(AVS:Ad-hoc Video Search)と映像説明文生成部門(VTT:Video To Text)において、世界最高水準の精度を達成しました。映像検索部門では、メインタスクで世界第2位、プログレスタスクで世界第1位、映像説明文生成部門では、五つの評価指標のうち三つで世界第1位を、二つで第3位を獲得し、明星大学と当社の技術が世界最高水準の精度であることが示されました。

「TRECVID」は、世界各国の企業や大学などが参加して、映像解析に関するさまざまな課題について技術の性能を競い合う、世界的にも権威のあるコンテストです。

近年、ディープラーニングなどの機械学習技術の発展により、物体などを高精度に検出・分類することは可能になりつつありますが、文章と映像が持つ意味の概念を正確に関連付けることができないという問題点がありました。明星大学と当社は、多種多様な映像について、画像と言語を関連付けて処理することができるマルチモーダル学習に関する研究をはじめとした、映像解析技術の研究開発を進めています。これらの映像解析技術は、将来的にさまざまな映像コンテンツを自動解析することができ、多くのサービスやソリューションへの応用が期待できる技術です。例えば、人間の目視による映像の確認作業を軽減し、作業の省力化や迅速化につながることが期待されます。

Beyond 5G/6Gの実現に向けて障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線伝送を自己修復ビームにより実証

当社と岐阜大学工学部、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、名古屋工業大学大学院工学研究科(以下「本研究グループ」)は、Beyond 5G/6G時代を見据え、障害物による電波の遮蔽に強い300GHz帯(注1)テラヘルツ無線伝送(以下「テラヘルツ無線(注2)」)を自己修復ビーム(注3)により実証しました。

このたび本研究グループは、300GHz帯においてベッセルビーム(注4)を生成し、ベッセルビーム断面内に設置された障害物により乱されたビーム形状が、伝搬とともに自己修復することと、通常のガウスビームと比べて障害物による通信エラーの発生が少なくなることを実験的に確認しました。自己修復ビームにより、障害物による電波の遮蔽に強いテラヘルツ無線通信路が形成可能であることを示した本研究成果は、これまでテラヘルツ無線の大きな弱点であるとされてきた、障害物によるビーム遮蔽に脆弱であるという問題を解決し、Beyond 5G/6G時代の超高速無線通信の実用化への重要な一歩と位置付けられます。

今後は、今回の研究成果を拡張し、屋外でのデータ通信のユースケースを目指した長距離化や、さらに大きな障害物でも対応を可能にする自己修復ビームの発生に関する研究を進めていきます。

(注1)200GHz~300GHzは大気の窓と呼ばれる吸収が低い周波数領域であり、中距離(~1km程度)で利用可能な帯域として期待されている。

(注2)100GHz~3THzの周波数領域を用いた無線通信技術であり、特に100GHz~300GHzがBeyond 5G/6Gでの利用が期待されている。

(注3)通常の電磁ビームが障害物によって一部分遮蔽されると、ビーム断面内の強度分布は乱され、元のビーム分布と異なったものとなる。一方、自己修復ビームは、障害物によって乱された強度分布が伝搬とともに修復され、元のビーム強度分布に近い分布にまで戻る性質を持つ。

(注4)ビーム断面内の振幅分布がベッセル関数に従うビーム。自己修復特性がある。

光無線を活用したQKDの動作実証に成功~都市部のQKDセキュアネットワークの拡大へ前進~

当社と東芝デジタルソリューションズ㈱は、東芝デジタルソリューションズ㈱の量子鍵配送(Quantum Key Distribution、以下「QKD」)システムを、当社の光無線通信の試験環境に導入し、光ファイバーと光無線を組み合わせたQKDの動作実証に成功しました。

現代社会において、国家安全保障や銀行取引、個人情報の保護など、幅広い分野でサイバーセキュリティが重要な課題となっています。特に量子コンピューター技術の急速な発展や暗号解読アルゴリズムの研究の進展により、従来の暗号技術の危殆化が懸念されています。QKDは重要な機密データを保護するための暗号鍵を配信する仕組みで、量子力学の原理に基づき、暗号鍵を盗聴して解読することが理論上不可能な通信技術です。

QKDは、量子力学に基づく原理を通信に応用することで、データの送信側と受信側の双方に共通の暗号鍵(以下「共通鍵」)をそれぞれ生成し、共通鍵を生成するための情報を光子(光の粒子)に乗せて伝送します。従来のQKDでは、都市部の拠点間の接続には光ファイバーを用いる必要があるため、ビル間や公道をまたいだ建屋間など、光ファイバーの敷設が困難な拠点や敷設に多くの時間を要する拠点では、QKDの導入が阻害されてしまう場合があります。この課題を解決するため、従来のQKDの構成に光無線も加えて活用する実証実験を行いました。

動作実証において、光子の伝送路の途中に光無線を組み合わせた場合でも、光ファイバー向けのQKDシステムを変更することなく安定した鍵生成が可能であることを確認できました。また、性能評価において、暗号鍵の生成が可能な伝送路全体の光の減衰量について把握することができました。今後さらに特性の把握を深めることで、光無線を組み合わせたQKDシステムの運用に必要となる無線機の要件定義や無線区間の回線設計が可能になるため、QKDセキュアネットワークの設計に大きく寄与するものと考えています。

将来的には、ビルの屋上などに光無線機を設置して活用することで、光ファイバーを新設することなく短期間でQKDを利用することが可能になります。当社と東芝デジタルソリューションズは、今後も光無線の伝送路の長距離化によるエリア拡大など、QKDセキュアネットワークの拡張性を高める技術の研究開発を進めていきます。

上記の他、主にAI、HAPS、広告関連サービスやアプリの研究開発を行い、当連結会計年度における研究開発費は60,380百万円となりました。

2022年3月 2023年3月 2024年3月
研究開発 42,802 56,094 60,380
売上対比 0.8% 0.9% 1.0%
単位:百万円

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