積立投資は資産形成に最適 メリット・デメリットや失敗しないポイントとは
毎月一定額を投資信託で積み立てていく積立投資は、少額から手軽に始められ、運用初心者にも挑戦しやすい投資方法です。これから投資を始めてみたいと思っているあなたに、初心者でも失敗しない積立投資のポイントと注意点をお伝えします。
01投資信託とは
投資信託とは、投資信託を購入する人(投資家)から集めたお金を、運用の専門家が金融市場の中で国内外の株式や債券、不動産などに投資をし、運用成果に応じて投資家に利益を分配する商品です。
投資信託は毎日値動きのある株式や債券などで運用しているため、投資信託の値段である基準価額も毎日動き、貯蓄のように元本が確保される商品ではありません。
ここからは投資信託を毎月一定額ずつ積み立てる積立投資の特徴について見ていきましょう。
積立投資は初心者が始めやすい資産形成方法
積立投資は大きな元手がなくても、少額から始めることができます。たとえば、家計の中から投資資金を出すのが難しくても、お小遣いの中から毎月1,000円ずつ積み立てを始めることはできます。
投資で失敗したらどうしようと心配でも、少額から始めれば、値動きに少しずつ慣れ、だんだんと積立額を増やすこともできるので、投資を怖がらず始めることができます。
また、積立投資は一度始めてしまえば、自分から投資しようという意思がなくても、毎月強制的にお金を積み立てることができるので、お金の管理が苦手な人でも始めやすい資産形成方法です。
積立投資を始めるタイミング
積立投資は始めやすいとはいえ初心者にとって、いつ投資を始めればいいのかは難問です。今の値段がもっと上がるのか、それとも下がるのか考えていると、いつまでたっても投資を始めることができません。
しかし、積立投資は、値動きする投資信託を毎月一定額ずつ購入するため、安いときにたくさん購入し、高いときには少ししか購入しないということを自動的に行うので、いつからでも始めることができます。
一定額の取引なので、投資信託の値段である基準価額が値下がりしていくときは安値で購入できるチャンスとなり、逆に値上がりした時に高値でたくさんの口数(くちすう=取引を行う際の単位)を買ってしまう失敗がありません。長期間上がったり下がったりを繰り返す間には、安値の時にたくさんの口数を購入でき、結果的に平均の購入単価を下げることができます。こうした積立投資の効果をドルコスト平均法といいます。
少額からスタートでき、下落したときでも相場に惑わされることなく、機械的に購入を続けられる積立投資は、市場の状況を気にせず始められる投資方法といえるでしょう。
積立投資のメリット・デメリット
積立投資には前述のようにメリットもたくさんありますが、注意点もあります。積立投資のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
<積立投資のメリットとデメリット>
メリット | デメリット |
ドルコスト平均法の効果で、長期間には平均の購入単価を下げられる可能性が高い | 元本割れする可能性がある |
元手がなくても少額からいつでもはじめられる | 手数料がかかる |
国内外の株式や債券などに分散投資がしやすい | 売却益や分配金に税金がかかる |
海外の資産にも手軽に投資できる | 短期間で大きく増やすことがむずかしい |
分配金を再投資すれば長期間には複利運用の効果が得られる | 自分で投資先を考えたい人にとっては物足りない |
積立投資は少額から時間をかけて少しずつ増やしたい人にはメリットのある方法です。しかし、短期間に大きな値上がり益を目指したい人や、投資先を自分で選びたい人には物足りないかもしれません。
また、貯蓄と異なり売却時期によっては元本割れする可能性もあり、NISAやつみたてNISAといった非課税口座以外は運用益が出れば課税されます。さらに、投資信託を保有している間は商品ごとに割合は違うものの、すべての商品に信託報酬という手数料がかかります。商品によっては購入時や売却時に手数料がかかる場合もあります。
02積立投資に失敗しないポイント
こうしたメリットやデメリットを踏まえ、ここからは積立投資で失敗しないための3つのポイントについてお伝えします。
長期投資
ドルコスト平均法や複利運用の効果を最大限に活かすには、10年、20年といった長期投資が基本です。複利運用とは分配金をその都度受け取らず再投資する方法です。再投資することで元金に分配金をプラスした額が新たな元金となり、長期間になればなるほど元金の増え方が大きくなり、結果として元金に対する利益も大きくなります。
また、短期間では購入後に値動きが下落基調のままで売却して損失が出てしまう場合や、上昇を続けたままで購入単価を下げられない可能性もあります。
積立投資は長期間上がったり下がったりする値動きの中で、一定額を購入し続けることで効果が大きくなる投資方法です。
手数料などのコストを考慮
投資信託は保有している間、すべての商品について信託報酬という手数料がかかります。商品ごとに一定割合を、投資信託を販売する会社、運用する会社、資産を管理する信託銀行等に支払います。
信託報酬の割合は、商品によって税込み年率で0.1%台から高いものでは3%台まであります。毎日取引終了後に発表される基準価額は信託報酬を差し引いた後の値段となっています。
また、信託報酬以外にも購入時や売却時に手数料がかかる商品もあります。各商品の運用方針や運用実績を比べ、同じような実績を期待できる商品であれば、手数料が安い商品を選ぶことでメリットが大きくなります。
分散投資をする
分散投資とは、値動きの異なる複数の資産を組み合わせて運用することです。
分散投資には、投資対象となる資産の分散、地域や国の分散、時間の分散などがあります。このうち、時間の分散は一度にまとまったお金を投資しないことですので、積立投資ですでにできています。
投資対象となる資産の分散は、例えば、株式は景気や会社の業績などにより大きく変動しますが、債券は金利に影響を受けるものの株式ほど大きな値動きをしません。またオフィスビルなどに投資するREIT(不動産投資信託)は不動産市況や金利などに影響を受けやすく株式や債券とは違う値動きをします。
また、外国の資産に投資することで、国や地域を分散することができます。日本の景気が悪くても投資先の地域や国での資産の値上がりを期待できる場合や、資産が値下がりしても為替が円安になって運用実績が支えられることもあります。
03積立投資に向いている人、向いていない人
以上の特徴から、積立投資に向いている、向いていない人をまとめてみました。
積立投資に向いている人 | 積立投資に向いていない人 |
・投資するまとまったお金を持っていない人 ・これから長期間積立を続ける時間がある人 ・機械的に積み立てないと、値動きに一喜一憂して、値下がりしたときに売却してしまうかもしれない人 ・購入や売却のタイミングに煩わしさを感じる人 ・値動きを気にする時間がない人 ・大もうけをしなくても、着実に少しずつ資産が増えればいいと思っている人 ・個別株を選ぶのはむずかしいと思っている人 |
・自分で大きな値上がり益を狙った運用をしたい人 ・短期間の運用成果を目指したい人 ・長期間の運用ができない人(年齢が高い、近々大きくお金を使う予定があるなど) ・自分で時間をかけて勉強しながら投資をしたい人 ・まとまった大きな運用資金を持っている人 |
積立投資に向いている人
以上の特徴から、積立投資に向いているのは下記のような人だといえるでしょう。
- 投資するまとまったお金を持っていない人
- これから長期間積立を続ける時間がある人
- 機械的に積み立てないと、値動きに一喜一憂して、値下がりしたときに売却してしまうかもしれない人
- 購入や売却のタイミングに煩わしさを感じる人
- 値動きを気にする時間がない人
- 大もうけをしなくても、着実に少しずつ資産が増えればいいと思っている人
- 個別株を選ぶのはむずかしいと思っている人など
今大きな資金はないけれど、これから働ける期間が長く長期間投資ができる若い世代には積立投資が向いています。特に将来住宅ローンと教育費が二重にかかるお子さんが小さい世代は、教育費がピークを迎えるまでの期間が積立投資のチャンスです。子育てや仕事が忙しく投資に時間がさけなくても、値動きに一喜一憂せず淡々と積み立てるのなら、続けていけそうです。
積立投資に向いていない人
逆に、下記のような人は積立投資に向いていないかもしれません。
- 自分で大きな値上がり益を狙った運用をしたい人
- 短期間の運用成果を目指したい人
- 長期間の運用ができない人(年齢が高い、近々大きくお金を使う予定があるなど)
- 自分で時間をかけて勉強しながら投資をしたい人
- まとまった大きな運用資金を持っている人
向いている人の逆ですが、投資が好きで自分で投資先を選んでその会社の成長を楽しみに待つ、といった人にとっては、積立投資は少し物足りないかもしれません。
04積立投資の売却タイミングの考え方
最後に積立投資の売却のタイミングを考えてみます。簡単に言ってしまえば、手数料や途中で受け取った分配金などを含めて、投資した金額よりも売却して受け取った金額の方が多くなるときならいつでもいいといえます。
気をつけたいのは教育費や住宅購入の頭金など、短期間のうちに使う目的が決まっているお金を投資して、値下がりしているのにどうしても売却せざるを得なくなったときです。
こうした失敗を避けるためにも、長期投資で売却のタイミングが複数回やってくるようにすることが大切です。最低限必要なお金は積立貯蓄等で準備し、上乗せ分として積立投資を行いましょう。
また、売却のタイミングは、購入する時と同じように複数回に分ける方法も考えられます。時間を分散して売却することで、安いときに一気に売却してしまう、という失敗を防ぎます。
積立投資は投資期間が長いほど複利運用の効果が高くなり、売却のタイミングも増えます。投資はむずかしいと思っている人も、まずは口座を開き少額からの積立投資を始めてみてはいかがでしょう。
監修:有田美津子
CFP®、住まいのお金相談室代表
プロフィール
銀行での融資業務、住宅販売、損保会社を経て独立。現在は企業に属さないFPとして、ライフプラン相談やお客様の希望を実現するまでのサポートを行っている。年間相談件数150件以上、相談経験を活かした執筆やセミナーで中立な情報提供も続けている。
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