【住宅ローン】消費者物価指数の上昇で選ぶべき金利タイプが変わる?

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東京23区における2023年1月の消費者物価指数は、前年同月に比べて4.3%の上昇となりました。これは、第二次オイルショックの影響下にあった1981年5月以来、実に41年8カ月ぶりの高水準です。 東京23区の指数は全国に先立って公表される先行指標であるため、全国の指数も上昇していることが予想できます。結果、2月に発表となった2023年1月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)も前年同月比で4.2%の上昇。こちらも1981年9月以来、41年4カ月ぶりの高水準となっています。 消費者物価指数の上昇は家計に大きな打撃を与えますが、住宅ローンの金利タイプ選びにも大きな影響を与えるのです。 この記事では、これから住宅ローンの借り入れを検討するにあたって変動金利にするか固定金利にするか迷っている人に向けて、消費者物価指数が大きく上昇する現在、どちらの金利タイプを選ぶべきか解説していきます。

01消費者物価指数の上昇による影響とは?

消費者物価指数とは、消費者が日常的に購入するモノやサービスの価格などが、基準時からどれくらい変動したかを示す指標のことです。基準時の全国の平均的な家計消費を100とし、それに対する月ごとの数値が毎月総務省から発表されます。

消費者物価指数には全国・東京都区部(東京23区)という2種類があり、冒頭で紹介したとおり、東京23区の指数は速報ベースで全国に先駆けて発表されるため、先行指標として注目されています。

たとえば、基準時において購入するのに10万円かかった商品が、消費者物価指数の対象月には11万円に値上がりしていたとすれば、基準時よりも10%物価が上昇していることになります。この場合、対象月の消費者物価指数は110といった具合に算出されます。

基本的に消費者の資金力が増すと、モノやサービスを購入する人が多くなるため、消費者物価指数は上昇傾向になります。それによって賃金が上昇し、さらにモノやサービスが買われて消費者物価指数が上がるというサイクルが生まれている状態が、いわゆるインフレ状態です。

しかしインフレには、良いインフレと悪いインフレがあります。消費者物価指数の上昇は景気の良さだけに基づくものではありません。具体的には、資源・穀物価格の上昇、円安の進行によるエネルギー価格や生鮮食品を除く食料品価格の大幅上昇などによっても、消費者物価指数は上昇しやすいのが実情です。

消費者物価指数が上昇すると家庭の消費支出額が増えますが、こういった状況においては、賃金が増えないので家計が苦しくなってしまいます。貯蓄もしづらい状況となり、経済が冷え込んでしまう事態になりかねません。これが悪いインフレの状態です。

02消費者物価指数が上昇すると、住宅ローンの金利タイプの選び方が変わる!

2022年12月に日銀が実施した「事実上の利上げ」の影響を受け、住宅ローンの固定金利は上昇傾向にあります。一方、今のところ変動金利は上がっていません。

長年の超低金利状態の影響を受け、現在住宅ローンを借り入れる人の7割以上が変動金利を選んでいます。物価上昇を受けて変動金利が上がるかもしれないと懸念している人は多いものの、今から住宅ローンを借り入れようとする人も、依然として変動金利を選択する人が多いと考えられます。

しかし、先ほど紹介したとおり、賃金上昇を伴わずに消費者物価指数が上昇している現在の状況では、家庭で資金を増やすことが難しくなることが予想されます。このような状況で住宅ローンの金利タイプを選ぶにあたり、考えるべきことは次の2点です。

  1. 毎月の家計が赤字にならず、常に黒字であるか
  2. 月ごとで黒字でなくとも、貯蓄が十分にあるか

1であれば、安定的に黒字の状態にあるため、万が一変動金利が急激に上昇しても毎月の家計の範囲内で対応可能です。

2の場合、毎月の家計は黒字でないものの貯蓄を切り崩して家計に回せるため、万が一変動金利が急激に上昇しても、切り崩した分を住宅ローンの繰り上げ返済に充てられます。

この2点に当てはまらない人は、たとえ変動金利のほうが当初金利は低かったとしても、固定金利を選んだほうが安全といえるでしょう。

貯蓄がなく生活に余裕がない人こそ固定金利を選ぶ

固定金利は上昇傾向にある中、変動金利は今もなお超低金利で推移しています。こうした状況を踏まえ、今後住宅ローンを借り入れる場合も変動金利を選択する人が多いことでしょう。

しかし、金利タイプを選択するにあたっては、変動金利の持つリスクを正しく理解しておく必要があります。変動金利を選ぶと金利が低いときには毎月の返済額を抑えられるものの、将来急激に金利上昇した場合には、未払い利息が増えるなど大きなリスクを負うことになります。

多くの人は、金利が変動しても毎月の支払額が変わらない「元利均等返済」を選択しているため、金利が上昇すればするほど、返せども元本が減らない状態に陥る危険性が高まるのです。

賃金上昇を伴わずに消費者物価指数が上昇している現在、変動金利を選んでも金銭的なリスクが少ないと言えるのは、先ほど紹介した「1.毎月の家計が黒字の人」、「2.貯蓄が十分にある人」のどちらかです。

毎月の家計に余裕がなく貯蓄も十分にない人こそ、多少金利設定が高めであっても固定金利を選んだほうが、いざというときに家計を圧迫しないと考えられます。また、今は家計にある程度余裕がある人であっても、今後子どもの教育費など支出が増える見込みがあるなら、将来に備えて固定金利を選んでおくと安心でしょう。なお、急激な金利上昇に備えるには「繰り上げ返済」を行うのも有効です。

03貯蓄がない人は固定金利で毎月の返済額をシミュレーションしてみよう!

2023年2月現在、住宅ローンの固定金利が上昇傾向にある一方、変動金利は上昇していません。ただ、今後も変動金利が低く推移し続けるとは言い切れないのが実情です。万が一変動金利が急激に上昇した場合、貯蓄がなかったり毎月の収支に余裕がなかったりする人は、ローン返済が家計を圧迫する恐れがあります。

そのため、貯蓄額が少ない人や家計に余裕がない人は、まず全期間固定型もしくは固定期間選択型の住宅ローンを検討してみるといいでしょう。毎月返済できる額からどのくらい借り入れられるのか確認し、資金計画を立てていくのがおすすめです。 当サイトでは、金利タイプによってどのくらい毎月の返済額が変わるのか、固定金利でどのくらい借り入れできるのか、簡単にシミュレーションできます。シミュレーション結果を参考にして、住宅購入に向けた具体的な検討をスタートしてみてはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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