巣ごもり需要が拡大!コロナ禍で生活スタイルが変化。住まい選びはどう変わる?

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コロナ禍による外出自粛やリモートワークの導入で在宅時間が増えたことを機に、「巣ごもり需要」が拡大したと言われています。具体的にどのようなものが売れ、選ばれたのでしょうか。また、この生活スタイルの変化は住まい選びにどのような影響を与えているのかについても考えてみましょう。

01巣ごもり需要とは?

巣ごもり需要とは、コロナ禍により増えた在宅時間を快適に楽しむことを目的とした需要のことです。「外食ができない分、自宅で美味しいものを食べたい」、「旅行やレジャーに出かける代わりに、家で動画やゲームなどのエンタメを楽しみたい」、「通勤がなくなり体を動かす時間が少なくなったので、家で運動したい」、「自宅でも快適に働ける環境を作りたい」といったステイホーム生活で顕在化した欲求が、各分野で大きな需要を生み出しました。

そうした中で大きく売れ行きを伸ばしたものの一つが、白物家電です。一般社団法人日本電機工業会の発表によると2021年上半期(1月~6月)の白物家電の国内出荷額は1兆3281億円(前年同期比9.7%増)に上り、上半期としては1991年の1兆3677億円に次いで約30年ぶりの高水準となりました(※1)。品目別に見ると、出荷額がもっとも大きく伸びたのは、コロナ感染対策として住居をはじめ、オフィスや店舗などでも設置が増えた「空気清浄機」で、前年同期比+189.7%を記録しました。また、外食を避け、自宅で食事をする人が増えたためか、トースター(+121.9%)やホットプレート(+113.6%)、電子レンジ(+111.9%)、食器洗い乾燥機(+113.5%)など調理関連の家電も出荷額を伸ばしました。

また、薄型テレビの売れ行きも好調で、一般社団法人電子情報技術産業協会の統計によると、2020年の1年間に国内で出荷された薄型テレビは542万6000台と前年比+111.5%増となりました。背景としては、在宅時間が長くなったことで、テレビやDVD、ストリーミング動画を楽しむ時間が増えたこと、また、オリンピックを前に買い替えを決めた人が多かったことなどが考えられます。

※1 出典:一般社団法人日本電機工業会「民生用電気機器・国内出荷実績」

※2 出典:一般社団法人電子情報技術産業協会「2020年民生用電子機器国内出荷統計」

02リモートワークの環境整備

リモートワーク関連の商品の需要も伸びました。自宅で仕事ができる場所を確保するために専用の椅子やデスク、収納家具などを購入する人が増えたこともあり、帝国データバンクの調査(※3)では、通期予想を含めた2020年度の家具・インテリア販売市場(事業者売上高ベース)は前年度比+6.1%の1兆5000億円に上り、過去最高を更新する見通しとなっています。

また、リモートワークに欠かせないパソコンや周辺機器も売れ行きを伸ばしました。一般社団法人電子情報技術産業協会の調査によると、2020年度のパソコンの出荷台数は1208万3000台(前年度比+127.5%)、うちデスクトップは130万8000(同+50.8%)、ノート型:1077万5000台(同+156.1%)でした。パソコンの出荷台数が1200万台を上回ったのは2013年度以来7年ぶりのことです。特にノート型の伸びが堅調で、出荷台数が1000万台を超えたのは2007年度以降初めてで、リモートワークの普及が要因の一つと考えられます。また、パソコンそのものだけでなく、その周辺機器、例えば、自宅からのビデオ会議への参加をスムーズにするためのアイテム(外付けカメラ、イヤホン、マイク、照明器具など)や、家庭用のインクジェットプリンターなども売れ行きが伸びたと伝えられています。

※3 出典:帝国データバンク・プレスリリース

※4 出典:一般社団法人電子情報技術産業協会「2021年3月パーソナルコンピュータ国内出荷実績」

03気分転換できるアイテムも人気

外食や旅行を気ままに楽しめない分、家の中で気分転換してストレス解消したいというニーズを満たすアイテムやサービスへの人気も高まりました。

家電や家具のレンタルサービスもその1つ。買い揃えるとかなりの出費となってしまう家電や家具も、レンタルなら低コストで使うことができ、気軽に交換することも可能です。リモートワーク期間中だけ使い勝手の良いデスクや座り心地の良い椅子を借りる、休憩時間中に使うマッサージチェアを借りる、最新の美容家電を借りてフェイスケアやボディケアなどをする「おこもり美容」を楽しむという人も現れました。

観葉植物やアートが好調

観葉植物も売り上げを伸ばしました。2020年6月~2021年5月の東京中央卸売市場の観葉植物の取扱数量(販売実績)は約719万鉢(※5)で、前年同時期に比べ18%増加しました。過ごす時間の増えた自宅で手軽で手入れのしやすい観葉植物へのニーズの高まりが見て取れます。

※5 出典:東京中央卸売市場「品目別取扱実績」

自宅に飾るアートを購入する人も増えました。この傾向は特に若い人に顕著に表れており、アート関連のメディア事業を手掛ける株式会社MAGUSが行った調査で年代別で直近3年間でのアート購入有無を聞いたところ、40代以上の年代では購入率が半数以下だったのに対し、20代では7割以上、30代では6割以上が「購入済み」との回答、若い世代のアート購入への意識が高いことがわかりました(※6)。

※6 出典:株式会社MAGUS・プレスリリース

04スーパーの売上、5年ぶりに増加

コロナ禍は私たちの食生活にも少なからず影響を与えました。外食や飲み会の頻度が大きく減り、自宅で食事をする機会が増えた人も多いのではないでしょうか。日本チェーンストア協会によると、2020年のスーパーの売上高は前年度比+0.7%増えて12兆8969億円となり、5年ぶりに増加しました。中でも好調だったのが売上高の68.8%を占める食品で、前年比4%増を記録しました(※8)。背景には外出自粛により「内食」(自宅で料理して食べる食事)や「中食」(惣菜や弁当など調理済みの食品を買ってきて自宅で食べる食事)の需要が伸びていることがあると考えられます。

※8 出典:日本チェーンストア協会「チェーンストア販売統計2020年度」

また、コロナ禍を機に大きく成長したのが、飲食店のテイクアウト・デリバリー市場です。コロナ禍による外食自粛で大きな打撃を受けている飲食店が売上拡大のために始めたテイクアウトやデリバリーサービスが、「外食できないけど、プロの味を楽しみたい」というニーズをとらえ、急成長。飲食店、消費者向けにシステムやサービスを提供する株式会社テーブルチェックの調査によると、1店舗あたりのテイクアウト・デリバリーの売上は2020年2月時点では約15万円だったのに対し、2021年5月には2倍超の約33万円にまで伸びました(※9)。コロナ禍が長引く中、最近では高級レストランや有名店なども相次いで参入しており、テイクアウト・デリバリーの人気は今後しばらく続くものとみられます。

※9 出典:株式会社テーブルチェックプレスリリース

05巣ごもりによる生活スタイルの変化が、住まい探しにも影響か

コロナ禍によって生まれた「巣ごもり需要」は、住まい探しにも影響を与えつつあります。リクルートが行った「住宅購入・建築検討者調査(2020年)」(※12)で、新型コロナウイルス感染拡大により住宅に求める条件がどう変わったかを聞いたところ、「部屋数が欲しくなった」(21%)、「遮音性に優れた住宅に住みたくなった」(18%)、「仕事専用スペースがほしくなった」(14%)、「通信環境の良い家に住みたくなった」(9%)など、リモートワークや在宅学習に適した住まいに住みたいというニーズが高まっていることがわかる結果となりました。

また、コロナ対策へのニーズも高まっており、「換気機能に優れた住宅に住みたくなった」(17%)、「宅配ボックス・置配ボックスを設置したくなった」(17%)、「通風に優れた住宅に住みたくなった」(11%)、「玄関近くに洗面所が欲しくなった」(7%)などの回答が目立ちました。

また、長時間過ごす自宅を快適な空間にしたいというニーズの表れか、「日当たりの良い住宅がほしくなった」(21%)、

「庭が欲しくなった」(13%)、「屋上や広いバルコニーが欲しくなった」(12%)、「インテリアにこだわりたくなった」(12%)、「緑が感じられる住宅がほしくなった」(12%)といった回答も多くみられました。

新型コロナウイルスに収束の兆しが見えないこと、リモートワークが定着しつつあること、そしてコロナ禍を機に自分の生活や働き方を見直す人が増えていることなどを考えると、巣ごもり時間が増えたことによる生活スタイルの変化は、一過性のものではなく、今後新たな生活様式として「当たり前」のものになっていく可能性は大いにあります。これからのマイホーム探しでは、立地や価格だけでなく、リモートワークのしやすさ、長時間こもってもストレスのたまりにくい快適さ、そしてウイルス対策のしやすさといった新たな観点が必要になってくると言えそうです。

※12 出典:リクルート「住宅購入・建築検討者調査(2020)

生活スタイルの変化も考慮に入れた、希望する条件を備えた物件を手に入れるためには、まずは購入予算をシミュレーションして余裕を持った資金計画を立てるようにしましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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